シナモンが月経困難症の鎮痛に?
最近多いイランでの臨床試験です。月経困難症は原発性(機能性)または続発性(器質性)いずれかとして分類されます。原発性月経困難症は、子宮内のプロスタグランジン過剰産生によって引き起こされます。
この研究では偽薬よりもシナモンが痛みを和らげる効果がありますが、イブプロフェン(プロスタグランジンの合成酵素「シクロオキシゲナーゼ」を阻害しプロスタグランジンの生合成を抑制)と比べると効果は小さい結果となっています。投与後すぐに効果を発揮するイブプロフェンと異なり、シナモンは時間をかけて効き目があらわれてくるようです。これまで実施されているクミン、フェンネル、タイムなどのハーブ薬でも同じような傾向があるようです。
(コメント:桂川直樹)
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原発性月経困難症の治療のためのシナモンとイブプロフェンの比較効果:無作為化二重盲検臨床試験
“Comparative effect of cinnamon and Ibuprofen for treatment of primary dysmenorrhea: a randomized double-blind clinical trial.” Jaafarpour M et al. J Clin Diagn Res. 2015 Apr;9(4):QC04-7.
<研究の目的と背景>
原発性月経困難症は、女性のQOL(生活の質)に悪影響を及ぼす。本研究の目的は、原発性月経困難症の治療薬としてシナモンとイブプロフェンの効果を比較すること。イラム医科大学(イラン西部)のイラン人女子学生を対象として、試験を実施した。
<方法>
無作為化二重盲検試験で、114のうち、対照群にはプラセボ(デンプンを含むカプセル、N =38)、試験群はイブプロフェン(400mgのイブプロフェンを含むカプセル、N=38)、またはシナモン(420mgのシナモンを含むカプセル、N=38)を受けとった。痛みの重症度を決定するために、VAS(視覚的アナログ尺度)※1を使用した。痛みの強さと痛みの持続時間を72時間モニターした。
<結果>
平均的な痛みの強さと痛みの持続時間はイブプロフェン群とシナモン群の双方ともにプラセボ群より優位に少なかった(P<0.001)。介入後4時間ではシナモン群とプラセボ群の間には統計的に有意な差は認められなかった(P>0.05)。介入後の8時間ではシナモン群の平均的な痛みの強さは、プラセボ群よりも有意に低かった(P<0.001)。様々な時間間隔においてイブプロフェン群の平均的な痛みの強さは、シナモン群とプラセボ群よりも有意に少なかった(P<0.001)。
<結論>
プラセボと比較してシナモンは月経時の痛みの重症度と持続時間を減少させたが、この効果はイブプロフェンと比べて低かった。シナモンは原発性月経困難症のための安全で効果的な治療法とみなすことができる。月経出血量の減少のため、シナモンの有効性を検討する研究が多くなることを期待する。
(翻訳:桂川直樹)
※1 VAS(視覚的アナログ尺度)
痛みの強さなど定量化が難しい項目を評価する方法。例えば10cmの直線を引き、その直線上で、左端を0点(痛みなし)から10点(経験した最大の痛み)として、測定時点の痛みをcmで測定する。