美肌に導くハーブを学ぶ:ローズヒップ
ROSEHIP ローズヒップ
【 学 名 】 | Rosa canina L. |
【 科 名 】 | バラ科 |
【使用部位】 | 偽果 |
【主要成分】 | ビタミンC、ペクチン、植物酸、カロテノイド、フラボノイド |
【 作 用 】 | ビタミンCの補給、緩下 |
【 適 応 】 | ビタミンCの消耗時の補給、 インフルエンザなどの予防、便秘 |
“ビタミンCの爆弾”の異名をもつ美肌効果の高いローズの果実
ヒップ(hip)とはローズの果実のことを指しますが、一般にはローズヒップと呼ばれます。ローズはバラ科ロサ属(Rosa)植物の総称で、ロサ属には400以上の種や亜種、変種などがあります。これらの果実は全てローズヒップと称しますが、ローズヒップの代表はロサ・カニナ(Rosa canina L.)の果実です。その昔、狂犬病の犬に噛まれた際に用いられていたため、別名「ドッグローズ」とも呼ばれています。ロサ・カニナは、一重咲きの中輪花。淡いピンク色の花が咲いた後に、緑色だった果実が橙色から濃い赤い色に熟し、収穫されます。
またローズヒップは、美容をサポートするハーブとしても有名。ビタミンCの含有量は、レモンの20〜40倍であり「ビタミンCの爆弾」という異名をもつほど。そのため、ハイビスカスとブレンドしてハーブティーとして飲まれることも多いでしょう。また、ビタミンA、E、B群、鉄分、亜鉛などの栄養素の他、ペクチン、フラボノイド、カロテノイド(リコピン、β-カロテン)などの抗酸化成分も豊富に含まれています。
ワイルドクラフトハーブローズヒップの産地と収穫
南米の地で野生化したローズヒップ
ローズヒップは、主に南米、ヨーロッパなど温帯から冷帯にかけて広く分布していますが、実はローズヒップの原生地はヨーロッパ。16〜17世紀の大航海時代にスペインから新大陸へもたらされ、アンデス山脈の地で野生化したといわれています。今では、世界で流通するローズヒップの60%以上がチリ産です。
チリに自生するローズヒップの種類
チリに自生するローズヒップは、ロサ・カニナとロサ・ルビギノーサ(Rosa rubiginosa L.)ロサ・モスカータ(R. moschata Herrm.)の3種で、主体はロサ・ルビギノーサ(スイートブライアー)。ロサ・ルビギノーサは一重咲きの中輪花で、果実は濃い赤色が特徴。非常に強健で寒冷地にも適しています。
チリの収穫期は秋ではなく春?
一般にローズヒップの収穫は秋ですが、チリでは3〜5月に収穫の時期を迎えます。これは、日本の春にあたる頃が南米では秋であり、ローズヒップが真っ赤に色づくため。収穫は全て人の手で鋤のような道具を使って行われます。
ローズヒップが分布する理由は?
野生のローズヒップが広く分布した背景には、野鳥の生態が大きくかかわっています。ローズヒップの実を餌として丸呑みした野鳥は、果肉部分だけ消化。硬い種はフンとして様々な場所に散布され、新しい地で芽を出します。
Chile チリ
ローズヒップは、チリの首都サンチアゴ以南の地域に自生しています。澄んだ空気、水質のよさなどアンデス山麓の自然豊かな土地は、ローズヒップの生育に適しています。他にペルーやアルゼンチンでも自生しています。
ローズヒップがイギリス国民の危機を救った?
ローズヒップが世界中に注目されるようになったきっかけは、第二次世界大戦までさかのぼります。ドイツ軍の潜水艦封鎖により物資の補給が断たれてしまったイギリスでは、柑橘類が不足していました。そこでイギリス政府は、当時、死の病として恐れられていた壊血病(ビタミンCが欠乏して起こる病気)の流行を防ぐため、国全体にローズヒップを摘むように呼びかけました。そして採取したローズヒップでビタミンCが含まれたシロップをつくり、栄養補給を行ったといわれています。このキャンペーンの成功が報じられたことで、ローズヒップの高い健康効果が世界中に知れ渡るようになったのです。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第45号 2018年9月