飲んでも塗っても、創傷治癒にカレンデュラ 〜 コラーゲンを構成するヒドロキシプロリン増加、外傷部位の上⽪化が促進〜
鮮やかな⻩橙⾊で美しく咲くカレンデュラ(キク科キンセンカ属 ポットマリーゴールド Calendula officinalis)の花は,古くから傷ついた⽪膚を癒してくれるハーブとして好まれてきた。カレンデュラの活⽤にはバームのように⽪膚に塗布する外⽤と内服が考えられる。今回紹介する論⽂は,この2つの活⽤法での違いについて検討したものである。
Preethi KC, Kuttan R. Wound healing activity of flower extract of Calendula officinalis. J Basic Clin Physiol Pharmacol. 2009; 20(1): 73-79. DOI: 10.1515/jbcpp.2009.20.1.73
カレンデュラといえばお肌のケアのための万能薬,カレンデュラ軟膏・・。今回紹介した研究報告は,多くの⼈が実感している,このカレンデュラの創傷治癒効果が飲んでも塗っても得られることを検証した⼀報である。
研究の⽬的
カレンデュラ花エキスによるラットの外傷の治癒への効果として,内服と外⽤の各々のアプローチによる状態変化を明らかにする。
研究の⽅法
外傷を受けた後,カレンデュラエキスで処理したグループと処理しない対照グループに分かれて,8 ⽇後の状態を⽐較した。処理したグループはカレンデュラエキスの内服,またはカレンデュラエキスの外⽤を施した。効果の度合いは以下の 3 つについて検討することとした。
- 外傷部位の上⽪化に要する⽇数と外傷部位がどのくらい修復しているか組織を観察することによって検討した。
- 創傷治癒時に増殖する⾁芽組織中のコラーゲンを構成するアミノ酸であるヒドロキシプロリンの変化を調べた。
- 粘液中に含まれ,傷の修復に関連しているとされるヘキソサミンの量について調べた。
研究の結果
- カレンデュラグループでは,内服でも外⽤でも,外傷部の 90.0%が修復した。
- 対照グループでは修復率は 51.1%にとどまった。
- 対照グループでは,外傷部位の上⽪化に 17 ⽇を要した。
- カレンデュラを 20mg/kg,または 100 mg/kg ⽤いたグループでは,外傷部位の上⽪化に各々14 ⽇,13 ⽇に短縮された。
- ヒドロキシプロリンはカレンデュラグループで顕著に増加した。
- ヘキソサミンもカレンデュラグループで顕著に増加した。
結論
カレンデュラエキスの内服,外⽤により,創傷部位の上⽪化,治癒に関係するヒドロキシトリプタミン,へキソサミンの増加することが明らかになり,カレンデュラには内服でも外⽤でも,創傷治癒の効果があることが⽰唆された。
参考
上⽪化 epithelialization とは
外傷により⽋損した⽪膚や粘膜が,治癒過程において,上⽪(表⽪や粘膜上⽪)が形成され,再度被覆されること。 創傷の治癒過程では,⾁芽組織が形成され,表⽪細胞が遊離・増殖して再⽣上⽪が形成される。
ヒドロキシプロリン
創傷の治癒過程で肉芽組織ができるときに,組織の構造となるコラーゲン線維ができる。ヒドロキシプロリンは,コラーゲンやゼラチンに特徴的にみられるアミノ酸であり,コラーゲンの構造の安定性をつくる役割を持っている。ヒドロキシプロリンの量は,コラーゲンの量を反映しているものとして,コラーゲンの定量は,ヒドロキシプロリンアッセイによるヒドロキシプロリン量を基にして算出される。
ヘキソサミンの量
へキソサミンヘキソース(六炭糖)の⽔酸基をアミノ基に置換したアミノ糖の総称。創傷治癒の過程で,粘液中での濃度上昇が確認されていることから,創傷治癒に関連していると考えられ,治癒の状態を⽰す指標の⼀つとなっている。