ガーデニングデザイン #6 樹木を見に行こう
通勤、通学、買い物や散歩の場所には必ず樹木が存在します。春は公園や河川敷などでサクラの花を楽しみ、山へハイキングに行けば森林浴で癒やされます。今回は、私たちの身近な存在である樹木をご紹介していきます。
街中の気になる木
街中には意外と面白く気になる木が植えられています。ご紹介するのは香りの樹木。春、夏、秋にどこからともなく芳しい香りが漂ってきます。
春を告げる香りといえばジンチョウゲ。普段は目立たない木ですが、この香りを嗅ぐと春が来たと感じます。花に見える部分はがくが花弁状になったもの。雌雄異株なので目にする物はほとんどが雄花のようです。初夏になると甘い香りが漂うガーデニアとも呼ばれる白くてきれいなクチナシの花は、八重咲きの物と一重咲きの物があります。きんとんの色づけに欠かせないハーブ・クチナシの実は、一重咲きの花にだけつきます。秋の定番ではキンモクセイ。この香りは誰もが懐かしいと感じる香りです。中国から伝わった樹木で、ジンチョウゲと同じくこちらも雌雄異株。私たちが楽しんでいるのは雄花になります。挿し木で増やすため、もしかしたら日本のキンモクセイの遺伝子は全て同じかもしれません。これらジンチョウゲ、クチナシ、キンモクセイを三大香木ともいいます。
Column 樹木の香りを嗅いでみよう
香りを嗅ぐことで昔のことを懐かしんだり、子どもの頃を思い出したり、季節だけでなく樹木は私たちの心の風景をつくってくれます。
街路樹や並木
街中の道路や河川敷などに列状に植栽された樹木を「並木」もしくは「街路樹」といいます。花は目を楽しませてくれ、夏の信号待ちでは木陰を提供、紅葉する木は景色として眺めることができます。しかし、これらの樹木は植えられている場所が制約されており、剪定や病虫害駆除など維持管理も重要。本来の樹形をいかしながら手入れされた並木や街路樹は、それだけで観賞価値があります。
Column 街路樹の形にも注目
街路樹は、アスファルトの道路際に窮屈な中植えられています。その環境は苛酷で、時には台風などの強風で倒 れることもあります。また落ち葉の掃除が大変だからと電信柱のように剪定されているものもあり、樹木本来の姿からかけ離れているものを見ると残念です。皆さんにもぜひ関心をもって見ていただければと思います。
新宿御苑 information
● 開園時間
7/1~8/20 9:00~18:30 10/1~3/14 9:00~16:00 その他の期間 9:00~17:30
● 休園日
毎週月曜日(月曜日が祝祭日 の場合は翌日)、 年末年始(12/29~1/3)
● 入園料
一般 500円/65歳以上・ 学生(高校生以上)250円/ 小人(中学生以下)無料
庭園樹
和風庭園、洋風庭園、どちらも樹木は大切ですが、特に日本庭園では、自然の風景をつくりだす大事な要素となります。その中でもマツは日本の風景の中に欠かせない存在であり、1年中緑の葉をつけ、寒さに強く、樹齢も長いことなどから、節操の象徴であり、神の依より代しろともいわれてきました。神仙思想、不 老不死、長寿の願いを表している日本庭園で、極楽浄土や海岸の風景を表現し、茶庭(露地)では奥山の雰囲気を出すために植えられました。
Column 「自然らしさ」を追求
マツの手入れは「もみ上げ」といって、古い葉を落とし、透かして見えるようにすることが特徴です。刈込みとは違い自然らしさを追求し、自然の厳しさに耐え抜いた老大木の姿をつくる技法でもあるのです。
巨樹や老樹
昔から地域や集落のシンボルとして親しまれ、または神木として崇められてきた巨樹や老樹があります。これらは地域の遺産として人々に大切に扱われてきました。樹木の樹齢はその性質、環境など条件がよければ、500年、また1000年を超えるものもあります。日々の生活の中でいわれや語り継がれてきたこともあり、存在自体が遺産といえるでしょう。
まとめ
樹木だけをたずねて歩く。こんな旅もあってもいいかもしれません。でも大切なのはその周りの環境や景色、そして人々の暮らしなども一緒に見て楽しむこと。大切にされている樹木を見ることで気持ちが安らぎ、勇気ももらえることでしょう。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第49号 2019年9月