糖尿病と植物療法 マルベリーを中心として
専門部会セミナー 日程:2018年2月4日
場所:新大阪丸ビル別館
第1部
「糖尿病について」入谷 栄一氏 (医師・日本メディカルハーブ協会理事)
糖尿病は血液中のブドウ糖濃度が高い状態が続くことで眼、腎臓、神経、心臓、脳、皮膚などに様々な合併症が起こる病気である。3〜4人に1人が発症する可能性のある罹患率の高い疾病(本セミナーは2型糖尿病を前提に進められた)であるが、一方で早く治療を始めるほど、合併症を予防でき血糖値もコントロールできる。治療の基本は食事療法・運動療法で改善しなければ薬物療法が行われる。
入谷先生は日本初のハーブ専門外来を開設し、在宅診療を行っている。患者が長期的・継続的に薬をのむ必要のない時に生活に無理なくハーブを取り入れるなど、ハーブと現代医療をうまくコーディネートし、患者に一番よい方法を提供されている。セミナー では私たちに医師国家試験の糖尿病のケースを示し、ケースごとに適切な療法基準を指導された。
第2部
マルベリー実践編 野田 信三氏 (工学博士・日本メディカルハーブ協会学術委員)
植物療法では古くから桑葉が用いられてきた。日本では鎌倉時代の僧、栄西が『喫茶養生記』下巻に糖尿病に相当する病名「飲水病」に桑の利用法を記している。
マルベリーのもつDNJは小腸の二糖分解酵素(α-グルコシターゼ)の働きを阻害し、食後の血糖値上昇を抑制する。食直前に摂ることで効果が得られ、半年で内臓脂肪が減る。マルベリーは毎日2gで十分で、5g以上摂ると酵素を阻害し過ぎて下痢になる。他に期待できる効果として、アンチエイジングやメラトニン調節作用などの研究が行われている。さらにマルベリーの摂取方法として、お茶だけでなく料理の中に入れておいしく丸ごと食べることが有効であり、無理なく摂取できる。
他にも糖尿病によいとされるハーブはいくつかある。中でもサラシアはマルベリーとよく似た作用機序を示す。しかし、桑はサラシアと比べ生育が旺盛 で、採っても環境破壊の心配はない。
第3部
会場の質疑応答とパネルディスカッション
ここから林真一郎副理事長が加わり、線虫に桑の葉エキスを投与することで、線虫の寿命が延長されたばかりでなく、最期まで元気でコロリと死んだ実験結果から、植物の新たな可能性について話された。
会場から薬との関係で質問があったが、「薬に代わるものをハーブで探すのではなく、薬で欠けていることにハーブを使う視点が重要であること」や、「ハーブの事典は適応ばかりに目を奪われることなく、むしろ安全性や禁忌などからハーブを学ぶことも重要である」
といったことを再確認した。
今回の専門部会セミナーは医療と植物療法をつなぎ、統合医療の発展の一方向を示した。入谷先生のような医師の存在は植物療法を志す者にとって、心強いと思ったのは私だけではなかったと思う 。