オオバコの植物学と栽培
今回は、オオバコの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。
分類・名称
分類
オオバコ(大葉子、車前草)はオオバコ科(学名:Plantaginaceae、英名:plantain family)オオバコ属(Plantago)の植物で、狭義には Plantago asiatica L.を指し、広義にはオオバコ属植物の総称です。
ここでは、「オオバコ」を狭義に用い、広義には「オオバコ属植物」とします。
また、インドオオバコ(Plantago ovata Forssk.)とエダウチオオバコ(Plantago indica L.(旧名:Plantago psyllium L.)、Plantago afra L.の種子、あるいは植物名を一般にサイリウムといいます。
オオバコ科・オオバコ属のなかま
The Plant List にはオオバコ科に120属1,614種がアクセプトされています。一方でその2倍以上の3,450の学名が未解決状態(種として認めるのかほかの種のシノニムなのか等の判断が未解決)となっています。
かつての形態分類のクロンキスト分類体系では、オオバコ科はオオバコ属158種とリットレッラ属(Littorella)3種、ボウグエリア属(Bougueria)1種の計3属162種という小さな科でした。その後、DNA解析による系統分類のAPG分類体系になると、クロンキスト分類体系でのアワゴケ科やスギナモ科のほか、ゴマノハグサ科に分類されていたオオイヌノフグリ(Veronica persica Poir.)などを有するクワガタソウ属(Veronica)やキンギョソウ属(Antirrhinum)、ジギタリス属(Digitalis)、クガイソウ属(Verconicastrum)など、実に117属1,452種がオオバコ科に組み入れられ、大きく再編成されました。
オオバコ科は、南極大陸を除く世界中の大陸に分布します。草本を中心に低木も見られるほか、ヒシモドキ属(Trapella)やスギナモ属(Hippuris)、アワゴケ属(Callitriche)、シソクサ属(Limnophila)、リットレッラ属(Littorella)などの水生植物や湿性植物も多く存在します。
The Plant List にはオオバコ属に158種がアクセプトされている一方で、その4倍近い603の学名が未解決状態となっています。
オオバコ属植物は世界中の温帯を中心に分布し、世界各地に広く帰化して分布するコスモポリタン雑草(cosmopolitan weeds)の多い特徴があります。
オオバコ属植物の主要な種を下記(主要なオオバコ属)に示しました。日本にはオオバコとエゾオオバコ、ハクサンオオバコ、トウオオバコの4種が在来種として自生するほか、エダウチオオバコやヘラオオバコ、セイヨウオオバコなど10種程度が帰化しています。
名称
学名のうち、属名のPlantagoは、ラテン語で「幼植物」や「足底」を意味するplantaと接尾辞の-āgō からなっており、葉が足底のように大きく平らなことに由来するとされています。種小名については、オオバコのasiaticaは「アジアの」を、インドオオバコのovataは「卵円形の」を、エダウチオオバコの indica は「インドの」を意味します。ちなみにエダウチオオバコの旧学名である psyllium は「ノミ」を意味するψύλλα( psúlla )に由来する古代ギリシャ語のψύλλιον( psúllion )を語源とし、種子がノミに似ていることによります。
オオバコの英名は、Asiatic plantain、arnoglossa、Chinese plantain、obako で、plantain は学名の属名と同じ由来です。また、欧州原産のセイヨウオオバコは、白人の歩いた跡に生えてくることから、アメリカンインディアンによってwhite man’s footとも呼ばれました。
和名の「大葉子」は葉の大きいことに由来します。漢名では「車前草」、種子を「車前子」といい、車のわだちに生えることに由来するという解釈を多く見ます。しかし、経尊の『名語記』(1268)には、古代インドの名医で釈迦の弟子の耆婆が、良薬であるオオバコを車の前板に植え、出行の際に食べたことによると記されています。また、方言として、ガエルッパやガエロッパ、ゲーロッパ、カエルバ、ビッキグサなどのカエルにちなむ名称が東日本を中心に数多く見られます。これは、弱っているもしくは死んでいるカエルにオオバコの葉を被せると生き返るなどの言い伝えによります。
「サイリウム」はエダウチオオバコの旧学名 Plantago psyllium L.の種小名からきています。ただし、ラテン語の発音はプシッリウムあるいはプシルリウムであり、英語の発音はスィリアム、ドイツ語の発音はスィリウムです。日本のカタカナ表記は独特で、ヲタ芸に必携のケミカルライトの商品名(Omuniglow 社)であるサイリウム(cyalume)と同じになっています。
人とのかかわりの歴史
オオバコ属植物と人との関わりは古く、古代ローマ時代、大プリニウス(23−79)は多くの病気にオオバコの利用を勧めています。このオオバコはヘラオオバコとする説があります。一方、大プリニウスとディオスコリデス(40頃 − 90頃) がヘビやサソリの咬傷などに勧めた2種のオオバコはセイヨウオオバコと Plantago lagopus L.であるという説があります。
ペルシャ伝統医学では、「冷」と「乾」の 性質をもち、炎症や出血を抑える効果があるとしています。カルペパー(1616 − 54)もまた、「冷」と「乾」の性質があり、金星が
支配し、火星のもたらす病気に治療効果があり、特に傷用ハーブとして皮膚炎や火傷、咬傷のほか、歯痛、頭痛などに根や葉を外用、また、腸疾患治療や止血、鎮咳に葉や根、種子を内服するとし、内服には葉より根や種子の効果が大きいとしています。カルペパーのオオバコはセイヨウオオバコやヘラオオバコ、セリバオオバコと考えられています。
アーユルヴェーダでは、isabgolと呼ばれるインドオオバコの乾燥種子または種皮の煎剤を下痢止めや鎮痛に用いるほか、種子を便秘や胃炎に内服あるいは皮膚軟化湿布として外用します。
現代においても、世界中に分布するさまざまなオオバコ属植物が、民間療法として、傷や皮膚疾患、呼吸器疾患、消化器疾患、循環器疾患、感染症など、治療や鎮痛などに用いられるほか、イタリア野菜のエルバステラ(Plantago coronopus L.)に代表されるように、野菜としても食されています。
近年では、セイヨウオオバコの葉を中心に、創傷治癒や腫瘍成長抑制、抗潰瘍、抗炎症、抗菌、抗ウイルス、抗侵害受容、抗酸化、抗がん、抗糖尿病、免疫賦活、肝保護などの作用に関する研究が進んでいます。
日本でも古くから鎮咳や解熱、貧血改善などに薬用とされてきました。藤原宮(694 − 710)跡から出土した薬物名の記された木簡には「車前子」の名が見られます。人見必大(1642頃−1701)の『本朝食鑑』(1697)にも「車前子」の名が見られます。
柏崎永似の『古今沿革考』(1730)では、春の七草の「ほとけのざ」を、挿し絵と共に「車前草(おおばこ)」と記載しています。春の七草の「ほとけのざ」については、貝原益軒の『大和本草』(1709)や牧野富太郎の『植物記春の七草』(1943)ではコオニタビラコとしていますが、脇坂義堂の『やしなひぐさ』(1784)ではゲンゲ(レンゲ)とするほか、室町時代から江戸時代中期にかけての複数の文献では、七草に「たびらこ」と「ほとけのざ」が併記されていて、これらが別植物である可能性が高く、地域や時代によって異なる可能性を示しています。
オオバコの花茎を交差させて引っ張り合う「オオバコ相撲」や、オオバコの葉を左右に引っ張って維管束を露出させるなどの子どもの草花遊びにも用いられます。
サイリウムの利用
インドオオバコとエダウチオオバコ、Plantago afra L.の種子をサイリウム、種皮をサイリウムハスク(psyllium husk)もしくは単にサイリウムと呼び、全粒もしくは粉末で、薬用のほか、健康食品やグルテンフリーのパン製造用の親水コロイドなどに利用されています。インドオオバコはほかの2種に比べて、種子を粉砕しやすく、ムシレージ(「形態・成分」で解説)が多く、低温でより速く膨潤するなどの特性があります。
最も多く流通しているのはインドオオバコのサイリウムハスクで、インド西部のグジャラート州を中心に乾季の10月から3月に栽培されます。収穫した種子を挽いた後、風で飛ばして種皮を分離してサイリウムハスクを得、残りの種子は牛の餌などになります。サイリウムハスクは、挽いた種子全体の26〜27%の収量(体積)を占めます。
近年、サイリウムによる下剤効果や、過敏性腸症候群の軽減、糖尿病の血糖調節、コレストロール吸収減少などが注目されています。
中薬利用
中薬では、中国で車前と呼ぶオオバコ (Plantago asiatica L.)および平車前と呼ぶムジナオオバコ(Plantago depressa Willd.)の全株を「車前」と呼び、根ごと乾燥して利用します。また、これらの種子を「車前子」と呼び、特にオオバコの種子を大粒車前子、ムジナオオバコの種子を小粒車前子といいます。車前子はサイリウムハスクとは違い、種子と種皮を分離せず、炒って乾燥させて保存します。これらはいずれも、水を利す、清熱する、去痰、目を明らかにする効能があるとされ、小便不通や血尿、帯下、淋濁、黄疸、水腫、熱痢、下痢、鼻血、急性結膜炎の腫痛、咳嗽、急性扁桃炎、皮膚潰瘍などの治療に用います。
中国最古の本草書の『神農本草経』には無毒で長期服用を可能とする上品(上薬)に「車前子」が収載されており、古くから利用されていたことがうかがえます。
形態・成分
オオバコ属植物は、オオバコのようなロゼットを呈する草本を主体としますが、カナリア諸島の Plantago arborescens Poir. のような低木も見られます。根は主根のあるものと、単子葉類のようにひげ根だけのものとがあり、ヘラオオバコは主根タイプ、オオバコはひげ根タイプです。
ロゼットを呈するオオバコ属植物の葉は根出葉です。葉脈は単子葉類を思わせるような並行脈で、細葉のもので3本、丸葉のもので7〜9本見られます。葉は軟らかく、平らで、維管束繊維が発達し、踏まれても損傷の少ない、踏圧に耐えられる構造をしています。
オオバコ属植物には、オオバコのように開花時に葉を伴わない花茎を数本直立させるものが多く、中にはエダウチオオバコやホソバオオバコのように、葉を伴った茎の立ち上がるものがあります。
オオバコ属植物は主として風媒花で、花は苞葉と萼に囲まれて、虫にアピールするための花弁が発達せず、目立ちません。ただし、Plantago media L.では薄桃色で長い雄蕊がよく目立ち、ミツバチによる受粉も見られます。これらの花が密に着生して穂状花序を形成しています。花は雄蕊も雌蕊も有する両性花ですが、自家受粉を避けるために雌性先熟で、雌蕊が先に熟します。この先熟した雌花はほかの個体の花粉で受粉し、その後、雄蕊が熟すと花粉を飛ばしてほかの花に受粉する仕組みになっています。そのため、オオバコの花穂をよく観察すると、先端付近は開花前の蕾が集まっており、その直下は先行して熟す雌蕊のブロック、さらにその直下は後熟した雄蕊のブロックであり、一番下は開花後の果実形成段階ブロックとなっています。
果実は熟すと乾燥し、果皮が横に割れて上半分が蓋のように開く蓋果です。果実内部に種子を2〜数個含有し、オオバコでは黒褐色の種子を4〜6個、エダウチオオバコでは黒褐色の種子を2個、インドオオバコでは乳白色の種子を2個含有します。種子は楕円体〜ボート型で片側にムギのようなくびれがあります。種子の長径は一般には1〜3mmでインドオオバコでは8mmに達します。
オオバコ属植物の種子は水に濡れると、チアシードやバジルシードのようにゼリー物質を出します。このような粘着性のゼリー物質は一般にムシレージ(mucilage)と呼ばれ、種皮の表皮細胞に蓄積される多糖類であり、水に濡れると膨脹して細胞壁を破壊し、ゼリー物質となって細胞外に放出されます。インドオオバコのムシレージはアラビノキシランという多糖が主成分で、ラムノガラクツロナンやセルロースなども含まれています。これらは、発芽に必要な水の保持を図ると同時に、ゼリー物質の粘性によって靴底などに付着するのに役立っており、踏まれて拡散する生存戦略物質ともいえます。ムシレージを含有する種皮がサイリウムハスクの名で流通しています。
性状と栽培
オオバコは日本全土に自生しており、全国で屋外での栽培が可能です。リクガメやウサギ、モルモットなどの小動物の餌としても栽培されているほか、エルバステラのように野菜として食される種もあり、これらの種子も売られています。
繁殖は種子のみで、自発休眠はなく、採種してすぐに播種する「とりまき」が可能です。発芽適温は25°Cで、発芽まで7〜15日を要します。好光性種子で、直射日光の下で発芽率が向上し、日陰では発芽が遅れたり低下したりしますので、播種の際には覆土をしません。種子が乾かないよう、こまめに灌水するか、梅雨時に播種するとよいでしょう。
種子の寿命に関しては、採種後2年目で発芽率96%という報告があり、冷凍庫(なければ冷蔵庫)保管で数年は発芽するものと思われます。
自然条件下においては、温度や光など、それぞれの生育地の環境で発芽特性や結実特性などの生活史に違いが見られ、環境に適応して進化していることがうかがえます。例えば、田の畔では競合する雑草が多く日陰が長く続くため、なかなか発芽できませんが、その代わり発芽適温域は広く、冬枯れや草刈りによって直射日光が当たった時にいつでも発芽できるようになっています。
一方、神社境内など、競合する雑草のない場所では光環境に問題のないことから、最適温度期間に断続的に発芽します。また、踏圧が高く(人による踏みつけが多い)除草回数の多い所では、葉が小さくなり、抽台・結実も速く、短い周期で子孫を残すことが明らかになっています。このような、踏圧が高く不意な除草のある場所で見られる発芽・結実特性の進化は、ムシレージによる種子伝播や高い踏圧耐性構造とあわせて、絶滅を回避するためのオオバコの生存戦略であり、極めて高い環境適応力を持つため、コスモポリタン雑草として世界中に分布していると考えられます。
カルペパーはオオバコについて、「庭で育てるハーブの中で最も健康によい」と記しています。特に手間もかかりませんし、雑草扱いするのではなく、ハーブとして育てて利用してみませんか。
主要なオオバコ属(Plantago)植物学名はThe Plant Listに従った
学名(シノニム):Plantago asiatica L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・アシアティカ [アジアの]
一般名:オオバコ(大葉子、車前草)、Asiatic plantain、arnoglossa、Chinese plantain、obako、車前(シャゼン)
分布:東アジア、マレーシアに自生。日本全土に自生
その他の特徴・利用:多年草。狭義のオオバコ。日本各地でごく普通に見られる。主根が発達せずひげ根となる。葉は最大葉長15cm、最大葉幅8cmの卵形で、5〜7本の葉脈が明瞭。長い葉柄がある。花茎は3〜7本立ち上がり、長さ30-50cmに達する。中国では全草を「車前」、種子を「車前子」として中薬利用。
学名(シノニム):Plantago ovata Forssk.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・オウァタ [卵円形の]
一般名:インドオオバコ(印度大葉子)、サイリウム、ブロンドサイリウム(blond psyllium)、blond plantain、desert Indianwheat、isabgol
分布:南欧、西アジア、インドに自生
その他の特徴・利用:一・二年草。主根が発達。草丈30-50cm。葉は根出葉。最大葉長25㎝、最大葉幅1cmで直線状、糸状に細いく、平行脈は3本。種子をサイリウム、種皮をサイリウムハスクまたはサイリウムと呼び、それぞれ粉末やホールで、健康食品などで利用される。インドの伝統医療では乾燥種子の煎剤を下痢止めや鎮痛に用いるほか、種子を便秘や胃炎に内服したり、皮膚軟化湿布として外用。主としてインド西部のグジャラート州で乾季(10 -3月)に栽培される。
学名(シノニム):Plantago indica L.( synonym : Plantago psyllium L. )
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・インディカ(プランタゴ・プシッリウム)[インドの(シノニム:ノミの)]
一般名:エダウチオオバコ(枝打大葉子)、サイリウム、ブラックサイリウム(black psyllium)、branched plantain、French psyllium、sand plantain
分布:中央アジア、ロシア、欧州、アフリカに自生。豪州、北米に帰化
その他の特徴・利用:一・二年草。学名は未だにシノニムのほうが一般的。砂浜や乾燥した内陸部の沙漠に自生。茎が立ち上がり、葉は対生でまれに3輪生。最大葉長5cm。最大葉幅3mm。種子は1果実に2個で 2.5-3mmの黒褐色。葉をサラダなどで食用に。種子または種皮をインドオオバコ同様、サイリウムと呼び、健康食品などで利用されるほか、便秘や過敏性腸症候群などの治療に用いられる。
学名(シノニム):Plantago afra L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・アフラ [アフリカからの]
一般名:African plantain, black psyllium, flea-seed plant, fleawort, glandular plantain
分布:地中海沿岸、北アフリカ、西アジア原産
その他の特徴・利用:一・二年草。エダウチオオバコとは別植物だが、同一視しているものもあり、混乱が見られる。茎が立ち上がり、葉は対生でエダウチオオバコに似る。最大葉長6cm、最大葉幅5mmの線形もしくは披針形で、極めて粗に小さな鋸歯がある。花茎長は30cmに達する。種子は赤褐色の楕円体で2-4mm。種子または種皮をサイリウムと呼び、健康食品や薬用とされる。
学名(シノニム):Plantago aristata Michx.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・アリスタータ [芒(のげ)の]
一般名:アメリカオオバコ(亜米利加大葉子)、ノゲオオバコ(芒大葉子)、bracted plantain、largebracted plantain
分布:中米原産。日本では関東以西に帰化
その他の特徴・利用:一・二年草。葉長15cm。花茎長は30cmに達する。全草が白い毛で覆われている。
花穂の各花の間に苞葉が発達し、和名のノゲオオバコや英名の bracted plantain(「苞葉を持つオオバコ」の意)の由来になっている。苞葉長は3cmに達する。
学名(シノニム):Plantago camtschatica Link
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・カムトゥスカティカ[カムチャッカの]
一般名:エゾオオバコ(蝦夷大葉子)
分布:千島、樺太、日本、朝鮮に自生。日本では北海道〜九州に自生
その他の特徴・利用:多年草。日本では九州以北の日本海沿岸、オホーツク海沿岸の砂地に自生。葉の両面に白い軟毛を有する。最大葉長11cm、最大葉幅4cmの卵形。花茎長は30cmに達する。種子は1果実に4個で長さ1.5-2mmの長楕円形。
学名(シノニム):Plantago coronopus L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・コロノプス [カラスの足の]
一般名:セリバオオバコ、エルバステラ(erba stella)、buck’s-horn plantain、minutina
分布:欧州、アジア、北アフリカ原産。北米、オセアニアに帰化
その他の特徴・利用:一・二年草もしくは多年草。葉は、最大葉長20cm、最大葉幅2cmと細長く、大小の鋸歯が特徴的で英名の buck’s horn(「鹿の角」の意)由来になっている。イタリアではエルバステラ(erba stella;「星のハーブ」の意)の名で流通している葉物野菜で、日本でも種子が売られていて野菜として栽培される。生もしくはさっと茹でてサラダなどに用いられる。
学名(シノニム):Plantago debilis R.Br.(未解決学名)
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・デビリス [軟弱な]
一般名:shade plantain、weak plantain
分布:豪州原産
その他の特徴・利用:一・二年草もしくは多年草。日陰に自生。最大葉長15cm、最大葉幅4cm。平行脈は5本。ほぼ全縁で極めて粗く大きな鋸歯がある。花茎長は70cmに達する。豪州南西部のヌンガー族は葉を潰して捻挫や潰瘍、腫れ物の湿布に加える。
学名(シノニム):Plantago depressa Willd.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・デプレッサ [扁圧した、凹んだ]
一般名:ムジナオオバコ(狢大葉子)、depressed plantain、平車前(ヘイシャゼン)
分布:東〜中央アジア、インドに自生。日本では日本海側に帰化
その他の特徴・利用:一・二年草または多年草。主根を有する。最大葉柄長7cm、最大葉長15cm、最大葉幅6cmの長楕円〜槍形。5か7本の平行脈をもつ。花茎長は15cmに達する。和名は花穂が狢の尾に似ていることによる。種子は1果に4個で黒褐色の楕円形。中国ではオオバコと共に「車前」や「車前子」として中薬利用。
学名(シノニム):Plantago hakusanensis Koidz.(未解決学名)
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・ハクサネンシス [白山の]
一般名:ハクサンオオバコ(白山大葉子)
分布:日本原産。本州中部白山以北に自生
その他の特徴・利用:多年草。日本海側の高山の湿地に自生。主根が無くひげ根。最大葉長8cm。最大葉幅4cmの楕円形で3脈見られる。花茎長は12cmに達する。葉縁に不明瞭な鋸歯がある。種子は1果実に1〜2個で長さ2mmの長楕円形。
学名(シノニム):Plantago japonica Franch. & Sav.(未解決学名)
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・ヤポニカ [日本の]
一般名:トウオオバコ(唐大葉子)
分布:日本原産。北海道〜九州に自生
その他の特徴・利用:多年草。海岸近くに自生。大型。最大葉長25cm、最大葉幅18cmの卵形。花茎長は80cmに達する。葉は厚く光沢があり、種子は1確実に8〜12個と多い。和名は中国からの渡来と思われていたことによる。
学名(シノニム):Plantago lagopus L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・ラゴプス [ウサギの足の]
一般名:hare’s foot plantain、Mediterranean plantain
分布:地中海沿岸原産
その他の特徴・利用:一・二年草。ヘラオオバコに似るがヘラオオバコよりも小型。根はひげ根。最大葉長15cm、最大葉幅3cmの披針形で全縁もしくはやや鋸歯があり、3〜5本の平行脈をもつ。花茎長は28cmに達する。花穂は3cmと短く毛深い。セイヨウオオバコとともにプリニウスとディオスコリデスが紹介したオオバコとされる。
学名(シノニム):Plantago lanceolata L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・ランケオラータ [披針形の]
一般名:ヘラオオバコ(箆大葉子)、リブワート(ribwort)、buckhorn plantain、English plantain、lamb’s tongue、lanceleaf plantain、narrowleaf plantain、ribleaf、ribwort plantain、strapleaf plantain
分布:欧州原産。世界中に帰化。日本各地に帰化
その他の特徴・利用:多年草。日本には江戸時代後期に渡来。葉は槍状で細長く、中心部は直立している。平行脈は3〜5本。葉長10-20cm。花茎長は50-70cmに達する。種子は1果に2個で黒褐色。放牧地などで良く繁殖することから、農業痕跡の指標とされ、ノルウェーの新石器時代の地層から発見されており、当時放牧が行われていた可能性を示している。欧州では古くから民間薬として、葉を利尿と切り傷に、根を去痰に用いてきた。また、葉のティーは咳止めに用いたり、オーストリアでは葉を気管支炎、皮膚トラブル、虫刺され、感染症などの治療にティーやシロップなどで内服、または外用される。
学名(シノニム):Plantago major L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・マヨル [巨大な]
一般名:セイヨウオオバコ(西洋大葉子)、オニオオバコ(鬼大葉子)、broad-
leaved plantain、broadleaf plantain、 common plantain、Englishman’s footprint、greater plantain、white man’s foot
分布:欧州原産。世界中に帰化。日本各地に帰化
その他の特徴・利用:多年草。大型で、直径30cmに広がる。最大葉長20cm、最大葉幅10cm。花茎長は30-60cmに達する。果実は4列で湾曲しない。種子は1果実に4-16個と多い。若い葉はサラダに、古い葉はシチューなどで食用に。炎症や歯肉炎、胃炎、消化性潰瘍、リーシュマニア潰瘍、下痢、風邪、ウイルス性肝炎、皮膚疾患、虫刺され、傷などの治療や去痰剤として利用される。紫葉や斑入り葉などの観賞用品種もある。プリニウスとディオスコリデスの紹介した2種のオオバコのうちの1種と考えられている。
学名(シノニム):Plantago maritima L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・マリティマ [海浜性の]
一般名:sea plantain、seaside plantain、goose tongue
分布:欧州、北西アフリカ、北〜中央アジア、北米、南米の温帯〜寒帯に自生
その他の特徴・利用:多年草。葉柄はなく、線状の葉は最大葉長22cm、最大葉幅1cmでやや厚みがある。粗く小さな鋸歯がある。平行脈は3〜5本。葉数、花茎数ともに多い。葉と種子をサラダや調理して食用に。種子はすり潰して粉でも利用。
学名(シノニム):Plantago media L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・メディア [中間の]
一般名:hoary plantain
分布:欧州原産
その他の特徴・利用:多年草。標高2,000m以下の湿気のある草地に自生。根はひげ根。最大葉長30cmの卵形で全縁、有毛、5〜9本の平行脈をもつ。葉柄が短い。花茎長は50cmに達する。雄蕊が薄桃色で長く目立ち、観賞性が高い。風媒のほかミツバチによっても受粉される。種子は1果2室に4個。古代ローマ時代の英国で利用されていたと考えられている。
学名(シノニム):Plantago virginica L.
学名のラテン語読み [種名の意味]:プランタゴ・ウィルギニカ [米国バージニアの]
一般名:ツボミオオバコ(蕾大葉子)、タチオオバコ(立大葉子)、dwarf plantain、 hoary plantain、paleseed plantain、paleseed Indian-wheat、southern plantain、Virginia plantain
分布:北米原産。日本では本州〜九州に帰化
その他の特徴・利用:一・二年草。主根を有する。砂浜や草原、岩場、荒地などに自生。全草が白く長い毛に被われる。葉は最大葉長15cm、最大葉幅5cmの長楕円〜槍形で平行脈は3-5本。花茎長は20cmに達する。種子は1果に2個で、薄茶色。若い葉をサラダやスープに。種子も食用に。かつて、収斂剤や止血、腫れ物などの皮膚疾患治療などに。リンパ増殖性疾患などの血液疾患治療に有効との報告もある。アメリカンインディアンのカイオワ族では健康の象徴として老人が踊りの際に身に付ける花輪を作る。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第55号 2021年3月