2022.7.4

夏のアウトドアライフを安心・安全に:起こりやすいトラブルを知って備える

いりたに内科クリニック院長

入谷 栄一

この夏は、海へ山へとアウトドア活動の計画を立てている方も 多いのではないでしょうか。とはいえ、アウトドアでは日常はあまり経験しないけがや病気など様々なトラブルが起こり得ます。 アウトドアを安心・安全に楽しむために、起こりやすいトラブルを知り、 必要な知識をしっかり身につけておきましょう。

Check 夏のアウトドアで特に注意したいけがや病気

アウトドアのトラブルから体を守ろう~対策編~

特に起こりやすいトラブルについて、症状や応急処置、予防法を知っておきましょう。

熱中症 こまめな水分補給を心がけて

症状と原因

暑さによって体熱の放散がうまくできなくなるために起こります。熱中症は誰もが注意する必要がありますが、その中でも特に熱中症を起こしやすい年代があります。男性では0~4歳、15~19歳、55~59歳、80歳前後に、女性では0~4歳、80~84歳は特に注意が必要です。

主な症状は、めまい、頻脈、筋肉のけいれん、頭痛、吐き気、体のだるさなどで、重症になると意識障害や高熱などが現れます。重症の場合は命の危険もあるため、一刻も早く医療機関に運んでください。

応急処置

熱中症が疑われたら、風通しのよい日陰など涼しい場所に運び、衣服をゆるめ休ませます。同時に、うちわであおいだり、保冷剤や冷たいタオルを脇の下、首筋、足のつけ根などに当てたりして体を冷やし、体温を下げます。また、少しずつスポーツ飲料や食塩水を与え、水分と電解質を補給します。回復しても容態が急変することがあるので、体調の変化に注意してください。

予防法

高温多湿で風が弱い日、日射しが強い日には活動をできるだけ控えましょう。炎天下では帽子を使用し、適宜日陰に入って休憩をとりましょう。塩分と水分をこまめに補給することも重要です。

日焼け 早めのクールダウンと保湿が大事

症状と原因

日焼けは強い紫外線を浴びて皮膚の細胞が傷つき、炎症を起こして赤くなった状態です。ひどくなると、水ぶくれができて痛みを伴い、重度の場合は発熱や悪寒、脱力などが現れることもあります。また、長期的に見ると、皮膚の老化(シミ、シワ)や発がん、白内障などのリスクを高める原因にもなります。

応急処置

早めのケアが肝心です。まずは冷たいタオルや保冷剤などで患部を冷やします。設備があれば、シャワーや水道の流水で30分くらい冷やし続けるか、水風呂に浸かっても。ほてりが治まったら乾燥を防ぐために保湿剤を塗ります。赤く腫れたり水ぶくれなどができたりした場合は、炎症を抑える非ステロイド消炎外用剤や副腎皮質ステロイド外用剤を使用し、改善しない時は皮膚科へ。発熱や悪寒、脱力など症状の悪化が見られる場合には、すぐに医療機関を受診してください。

予防法

紫外線が最も強い午前10時~午後2時頃は、活動をなるべく避けましょう。つばの広い帽子、サングラス、日よけシェードなどを利用し、日陰を選んで活動しましょう。できるだけ肌を露出しないようにし、露出を避けられない部分には日焼け止めを使用しましょう。

虫刺され 痛みや腫れが強い場合は皮膚科へ

症状と原因

虫に刺されると皮膚に痛み、かゆみ、腫れなどの症状が出て、強い場合は炎症や化膿を起こしたり、茶色のあとが残ったりするケースもあります。かゆくてかきむしってしまうと、傷口から細菌に二次感染することもあるので注意が必要です。ハチに刺された場合、アレルギー反応により「アナフィラキシーショック」を起こすこともあります。吐き気、息苦しさなどの症状が現れたら、一刻も早く病院を受診してください。

応急処置

水道水や水筒の水など、きれいな水で患部をよく洗い、消毒薬があれば消毒した後、抗ヒスタミン剤を含むかゆみ止めを塗ります。さらに濡れタオルなどで患部を冷やすと、かゆみや痛みが抑えられます。強い痛みや腫れがある場合は、応急処置をした後、早めに皮膚科を受診しましょう。

予防法

山など虫の多い場所に出かける時は、肌を露出する服装は避けること。虫は黒など濃い色に集まる習性があるため、白など薄い色の服を。香水やヘアスプレーなどのにおいはハチを刺激する恐れがあるため、使用を避けたほうが安全です。虫よけスプレーは、蚊やブヨなどによる虫刺されを予防できます。皮膚のトラブルが気になる人は、服の上からスプレーしても有効です。

食中毒 食材や調理器具の管理をしっかりと

症状と原因

食中毒は、細菌やウイルスなどが付着した飲食物を口にすることで起こる腹痛、下痢、嘔吐、吐き気などの急性胃腸症状です。症状は、感染してから一定の潜伏期間(数時間後〜3日程度)を経て現れます。多くは2~3日で自然に治りますが、重篤化すると命にかかわることもあります。
夏場のアウトドアで起こる食中毒のほとんどは、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ属菌などの細菌が原因です。加熱の不十分な肉による感染や、生肉を触った調理器具からの感染が多く見られます。

応急処置

下痢や嘔吐により脱水症状を起こしやすいため、水分補給が大切です。スポーツドリンクや常温に冷ましたお茶などを少しずつ摂るようにします。冷たい水や清涼飲料水は、胃や腸を刺激するので避けましょう。激しい下痢や嘔吐、発熱、血便、意識障害などが見られる場合は、すぐに病院を受診してください。

予防法

調理や食事の際は石けんでよく手を洗い、食材は調理の直前までクーラーボックスに入れておき、新鮮なうちに調理し、なるべく早めに食べ切るようにしましょう。生肉や生魚は野菜などにくっつかないようにし、まな板やトング、布巾、食器などの管理や殺菌にも気を配りましょう。バーベキューでは、生肉と焼けた肉のトングや箸を分けると安全です。

イラスト = みやしたゆみ

いりたに内科クリニック院長
入谷 栄一 いりたにえいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレ ルギー専門医。日本メディカルハーブ協会理事。東京女子医 科大学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入 れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国 各地で積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第56号 2021年6月