Herbs for Outdoors
アウトドアに役立つハーブを学ぶ
レモングラス Lemongrass
【学名】 Cyumbopogon citratus(西インドレモングラス) Cyumbopogon flexuosus(東インドレモングラス)
【科名】 イネ科
【使用部位】 葉
【主要成分】 シトラール、ミルセン、フラボノイド
【作用】 健胃、駆風、抗菌、矯味、矯臭、心身のリフレッシュ、忌避
【適応】 食欲不振、消化不良、気力や活力の低下、虫よけ
さわやかな香りの成分に抗菌、防虫などの効果が
レモングラスは、熱帯アジア原産の多年草。イネ科の植物で、外観はススキによく似ています。葉や茎にはシトラールという香り成分が含まれ、葉の切り口からは、さわやかなレモンの香りがします。この香りを生かしてタイ料理などで食材として利用されるほか、胃腸の不調の改善や感染症の予防、発熱や炎症の緩和、心身のリフレッシュなどを目的に、メディカルハーブとして用いられています。
シトラールは天然の抗菌剤といわれるほど強い抗菌力をもち、その効果は細菌のほか、白癬菌など一部の真菌に対しても発揮されます。また、胃腸の働きを助けて消化を促進し、脂肪の分解を促す作用もあり、食欲不振、胃もたれ、消化不良などの改善に役立ちます。お腹にたまったガスの排出を促す「駆風」にも有効です。
さらにレモングラスは、このシトラールの作用によって、虫が嫌がる「忌避効果」をもつハーブとしても知られ、精油は虫よけスプレーや防虫剤などの原料として使用されることもあります。ハーブティーにしても飲みやすく、とても汎用性の高いハーブの1つです。
HOW TO USE レモングラスの利用法
レモングラスはフレッシュ(生葉)、ドライ(乾燥葉)、エッセンシャルオイル(精油)の形があり、生活の様々なシーンで幅広く利用できます。特有の香りはエッセンシャルオイル>フレッシュ>ドライの順で強く出るので、目的に合わせて使い分けるとよいでしょう。
1 料理
ローリエの要領で使え、料理に香りと軽い酸味をつける。特にシーフードとの相性がよく、タイ料理の「トムヤム」スープには欠かせない。生葉は刻んだり、たたいたりして使用すると、より強い香りが引き出せる。
2 ハーブティー
消化を促進し、胃もたれ・胸やけの改善に役立つため、食事と一緒に摂るティーにも向く。夏は生葉を水出しして、ハーブウォーターにするのもおすすめ。
3 芳香浴
香り成分のシトラールには脳を刺激する作用があり、疲れた時や元気がない時に心身をリフレッシュしてくれる。運転やスポーツ時のメンタルコントロールにも。
4 防虫・虫よけ
エッセンシャルオイルを希釈して虫よけスプレーにしたり、ドライをポプリにして衣装ケースやクローゼットの虫よけにしたり、小皿に盛ってキッチンのゴキブリよけなどに。
5 殺菌・消臭
エッセンシャルオイルを数滴たらした水を、おしぼりや拭き掃除に使うとよい。シトラールには白癬菌の抑制効果があり、水虫予防にも有効。エッセンシャルオイルをティッシュなどに染み込ませて靴の中に入れておけば、消臭にも役立つ。
TOPICS 東インドレモングラスと西インドレモングラスの違い
レモングラスと同属の植物は世界中に数十種あるといわれますが、代表的なものはインドやネパールで栽培され、主として香料原料として利用される東インドレモングラス(イーストインディアンレモングラス)と、西インド諸島や熱帯アジアなど世界各地で栽培され主として料理に利用される西インドレモングラス(ウエストインディアンレモングラス)の2種です。日本で育てられているレモングラスの多くは西インドレモングラスで近年、東インドレモングラスも増えています。
2種類のレモングラスは成分にも若干違いがあり、エッセンシャルオイルの特徴成分のシトラールの含有量が多いのは東インドレモングラス。よりレモン風の香りが好きな人に向きます。一方、西インドレモングラスは軽やかな香りといわれます。日本ではどちらもエッセンシャルオイルが入手可能なので、学名を確認して自分の好みのものを選んでください。
ATTENTION!
レモングラスには子宮収縮作用があるため、妊娠中の人は使用を避けてください。授乳中の人や、イネ科の植物にアレルギーのある人も注意しましょう。また、皮膚への刺激が強いため、オイルを使用する場合は濃度に十分に気をつけましょう。
ボタニカルアート = 田中 沙織
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第56号 2021年6月