レモングラスの植物学と栽培
今回は、レモングラスの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。
分類・名称
分類
レモングラス(lemongrass)はイネ科(Poaceae(Gramineae))キンボポゴン属(Cymbopogon)に属する多年草です。
キンボポゴン属植物の多くがかつてアンドゥロポゴン属(Andropogon)に分類されていたことから、それらにはAndropogonを属名とするシノニムがあります。
レモングラスは狭義には西インドレモングラスを、広義にはレモングラスと名のつくキンボポゴン属植物を指します。
イネ科のなかま
イネ科は759属11,554種(The Plant Listによる)からなる大きな科で、イネやムギ、トウモロコシ、ソルガム、キビなどの穀類や、チモシーやオーチャードグラス、イタリアンライグラスといった牧草類など、人間のみならず草食動物にとっても重要な食糧となる植物の多い特徴があります。ただし、イネ科の葉にはケイ素が多くてガラス質で硬いため、人間にとっては子実が食用となっています。子実以外を直接食べるイネ科植物は、タケノコ(タケ・ササの新芽(茎))やマコモタケ(黒穂病菌の菌糸で肥大した茎)、ベビーコーン(子実以外も含む未熟果)、トウモロコシの髭(花糸(雌蕊の先端))くらいであり、葉を食べるのは、葉鞘基部をみじん切りにして使うレモングラスくらいではないでしょうか。
イネ科で香りを有するハーブは、キンボポゴン属植物に集中しており、そのほかでは、ベチバーやスイートグラス(バイソングラス)、スイートバーナルグラス(ハルガヤ)など数種にとどまります(表1)。
キンボポゴン属のなかま
World Flora Online(※1)によると、キンボポゴン属には52種が存在します。いずれも熱帯・亜熱帯を中心に分布し、香りを有する種の多い特徴があります(表2)。
熱帯アジアには、西インドレモングラスや東インドレモングラス、北インドレモングラス、パルマローザ、シトロネラグラス(セイロンシトロネラ)、ジャワシトロネラ、iwarancusa grassなどが、アフリカにはキャメルグラスやkachi grassなどが、豪州にはオーストラリアンレモングラスやsilly oilgrass、barbed wire grassなどがあり、日本にはオガルカヤが自生します。
以下にレモングラスと名のつく3種を紹介します。一つ目は、単にレモングラスとも呼ばれる西インドレモングラス(West Indian lemongrass)です。マレーシア~スリランカを中心とした熱帯アジア島嶼部原産とされ、現在では西インド諸島をはじめ、中南米や熱帯アジア、東アフリカなど、世界各地で生産されています。日本でも1980年代のハーブブーム以降、栽培が急速に拡大しました。肥大する葉鞘基部を「トムヤム」スープなど、料理の香りづけに用います。不稔のため品種分化が見られません。
二つ目は、東インドレモングラス(East Indian lemongrass)です。インド、スリランカからタイ原産で、インド南西部や北部、ガテマラ、中国などで栽培されています。日本でも沖縄では古くから栽培されているほか、近年になって沖縄以外の日本でも苗が出回るようになりました。主として精油生産されます。開花・結実するため品種改良も盛んで、‘Sugandhi (OD19)’、‘Pragati’、‘Jama rosa’、‘RRL16’、‘Cauvery’などの品種があります。
三つ目は、北インドレモングラス(North Indian lemongrass)です。インド東北部から中国南部原産で、インド東北部を中心に野生のものが収穫されるほか栽培も行われ、主として精油生産されます。 ‘Paraman’などの高収油量品種も作出されているほか、キンボポゴン・カーシアヌスとの交配品種‘CKP25’もあります。
(※1)World Flora Online:The Plant Listを引き継ぐかたちで 、ミズーリ植物園、ニューヨーク植物園、王立植物園エジンバラ、王立植物園キューの4植物園によって2012年に立ち上げられ、2020年から公開されている植物リストのオープンアクセスデータベース。
名称
レモングラスの属名のキンボポコン(Cymbopogon)は、「舟」を意味するラテン語のcymbe(ギリシャ語のkymbe(κύμβη)に由来)と、「髭」を意味するラテン語のpogonから成り立っており、頴果が舟形であり、髭のような芒(のぎ、のげ)のあることに由来します。ちなみに芒の特徴的な属には「~pogon」とつくものが多く、レモングラスの旧属名Andropogonは「男の髭(芒)」を、ベチバーの属名Chrysopogonは「黄金の髭(芒)」を意味します。
キンボポゴン属の和名はオガルカヤ(雄刈萱)属です。秋の七草のカルカヤ(刈萱)は、このオガルカヤ属のオガルカヤ(雄刈萱)とメガルカヤ属のメガルカヤ(雌刈萱Themeda triandra Forssk.)の総称とされ、カルカヤは刈り取って茅葺き屋根などに利用したことによります。
香りを有するイネ科植物を総称して、コウスイガヤ(香水茅)や中国名を訓読みしたコウボウ(香茅)と呼ぶことがあります。ただし、コウスイガヤはシトロネラグラスやジャワシトロネラの和名、香茅はレモングラスの中国名でもあります。
レモングラスはレモンガヤ(檸檬茅)、レモンソウ(檸檬草)とも呼ばれます。タイ語ではタクライイ(ตะไคร้)と呼びます。「レモングラス」という名称は18世紀後半から見られ、「西インド」、「東インド」は、その当時、西インドレモングラスの主産地の西インド諸島と、東インドレモングラスの主産地の東インド諸島などの東インド(東南アジア~南アジア)に由来し、インド西部、東部の意味ではありません。
東インドレモングラスの別名であるコーチングラス(Cochin grass)やマラバールグラス(Malabar grass)は、生産地の一つであるインド西南海岸部のコーチン地区とマラバール海岸に由来します。
北インドレモングラスは一般にはJammu lemon grassと呼ばれ、「Jammu(ジャンムー)」はインド北部の地名であり、「北インド」も「Jammu」も産地に由来します。
人とのかかわりの歴史
レモングラスなどのキンボポゴン属植物は数千年前から感染症や熱病に効く薬草として、アーユルベーダやユナニ医学、シッダ医学で用いられてきました。
17世紀には、オランダの医師Jacobu de Bondtがジャワの人たちは魚の煮物に、マレーの女性は浴用や温湿布で女性疾患に用いることを記し、英国の外科医Samuel Browneが、レモンバームとライム、レモンピールを合わせたようなfragrant grass(香る茅)と称して、インドの現地人は利用していないが、ポルトガルの女性が子供達を燻蒸したり、煎剤を与えたりして熱や弱った胃を強くするために用いると記しています。
アイルランドの植物学者W.Hamiltonがレモングラスの名称を用いて1799年にジャマイカに導入されたことを指摘して以降、レモングラスの一般名が普及し、西インド諸島の英国領の島々に導入が拡大したとされています。
現在では、東インドレモングラスを中心に、精油が香料原料として石鹸や香水、化粧品、消毒剤などに商業的に加工されたり、アロマテラピーで利用されたりします。また、西インドレモングラスの葉鞘基部がタイ料理のトムヤムなど、スープや煮込み料理に用いられ、肉や魚の生臭みをとったり香りづけしたりされます。細かくみじん切りしたレモングラス入りの肉団子や炒飯もおすすめです。
近年、精油に抗菌性や抗カビ性、防虫効果のあることが認められ、虫よけ製品などが販売されています。ミントやニオイゼラニウム、ジョチュウギクなどの虫よけ効果の高いハーブと共に自家製チンキを作るとよいでしょう。
中薬利用
中薬では、香茅(西インドレモングラス)の全草を「香茅」と呼んで感冒頭痛や胃痛、下痢、打撲傷などに、根を「香茅根」と呼んで心気痛に用います。また、同属近縁種では、橘草(オガルカヤ)の全草を「野香茅」と呼んで気管支炎や気管支喘息、リウマチ性関節炎、頭痛、打撲傷、下痢、腹痛などの治療に、芸香草(キンボポコン・ディスタンス)の全草を「芸香草」と呼んで感冒や淋病、リウマチ痛、気管支炎などの治療に、扭鞘香茅(Cymbopogon tortilis (J.Presl) A.Camus)の全草を「韭葉芸香草」と呼んでマラリアや嘔吐水瀉などの治療に用います。また、同じイネ科ハーブの茅香(スイートグラス)の花序を「茅香花」と呼んで薬湯浴によって邪気を祓うとしています。
形 態・成 分
レモングラスの形態的特徴のうち、単子葉類に共通の特徴としては、根がひげ根で、子葉が1枚、葉脈が平行脈であることが挙げられます。
イネ科に共通の特徴としては、草本で、葉が薄く細長くて基部の葉鞘が茎のように直立します。葉にケイ素を多く含み、ガラス質で硬く倒伏しにくくなっています。よく分げつし、1本からひと夏で20~100本にまで殖えるものもあります。また、裸子植物から被子植物に進化した際、虫と共に進化して風媒花から虫媒花になって花弁が発達したにもかかわらず、その後に進化したイネ科は風媒花へ戻り、花弁が退化しています。これは、虫もいないような沙漠周辺で進化したと考えられ、砂漠気候周辺のステップ気候ではイネ科が草原を形成しています。なお、花弁のないイネ科の花は小穂と呼ばれ、集合した花序を穂といいます。また、イネ科の果実は痩果の一種で頴果と呼ばれ、乾燥した果皮が種子と一体化し、籾殻で覆われています。
西インドレモングラスと東インドレモングラスの形態的な違いとしては、西インドレモングラスは草丈1.5mほどで、出穂せず種子繁殖しませんが、東インドレモングラスは出穂して最大草丈3mにも達し、種子繁殖します。また、西インドレモングラスでは葉鞘基部が緑白色で肥大し、分げつ株は直立しますが、東インドレモングラスでは葉鞘基部は肥大せず、アントシアニンで赤く色づき、分げつ株はやや広がる傾向が見られます。
レモングラスの精油は、葉の向軸(表)側にある精油細胞中に含有されています。精油は葉鞘よりも葉身に多く含有され、葉身には0.42%、葉鞘には0.13%という報告もあります。
精油含有量には品種間差があり、東インドレモングラスの品種‘Cauvery’で収油率が最も高かったとする報告もあります。収油率は、植えつけ後から次第に増加し、3~5年目にピークに達し、以降次第に減少していきます。
レモングラスの葉から得られる精油の主成分はシトラール(ゲラニアールとネラールの混合物)で70~90%含有します。しかし、主成分としてゲラニオールを50%程度含有するケモタイプも確認されています。一般に、レモングラス精油の質は、シトラール含有率で決まるといわれており、東インドレモングラスは西インドレモングラスよりもシトラール含有率が高く、品質がよいとされています。シトラール、ゲラニオール以外に、ミルセンや酢酸ゲラニル、リナロール、シトロネラール、シトロネロールなどを含有しています。このうちミルセンは、西インドレモングラスでは10~20%近くまで含有しているのに対し、東インドレモングラスにはほとんど含まれません。
性状と栽培
西インドレモングラス、東インドレモングラス共に熱帯原産ですので、氷点下になる地域では屋外で越冬できません。ただし、旺盛に茂った葉が防寒となって、多少の降霜には耐えます。都内ではかつては戸外で越冬できませんでしたが、ヒートアイランド現象によって今では越冬可能な地域が増えています。一般には関東以北では、露地では越冬できないため、室内に取り込むなどの防寒対策が必要です。
繁殖は、西インドレモングラスでは株分けで、そのほかは株分けと播種の両方で行われます。株分けといっても分げつ株は地面より上の茎の節についているため発根の十分ではない場合が多く、ほとんど発根していない場合もありますので、ほぼ挿し木に近い要領で行います。株分け適期は、生育の旺盛な時期であり、発根を促進するためにも15℃以上が望ましいです。株分けの際には発根を第一に考え、挿し木の要領で排水のよい無肥料の赤玉土を用い、地上部は20cm程度残して葉を切り取り、根のついている場合は根を傷めないように植えつけます。植えつけ後は直射日光や風など、蒸散を促進する要因を避け、活着するまで十分に灌水しましょう。1カ月以上たって十分に活着したら、根を切らないように注意して栄養のある土に移植します。
強靱ですが、葉鞘基部にアワノメイガの幼虫が穴をあけて中心部に侵入して新芽を食べられてしまう可能性があります。被害の確認と危険分散、冬越しを兼ねて9月に株分けするとよいかもしれません。また、梅雨時には枯葉をつけ根からこまめに取り除くようにして、株元が蒸れて腐らないようにしましょう。
レモングラスはC4植物(※2)であることから、高温で光の強いほど光合成が盛んになり、香りも強くなります。従って収穫適期は夏期であり、他の季節では香りは劣ります。また、植えつけ3~5年目を過ぎると精油含有率も低下することから、1~2年おきに株分けをして株を更新し、常に3~5年目の株を維持するのがよいでしょう。
収穫部位と方法は、用途によって異なります。蒸留して精油や芳香蒸留水を得たり、ハーブティーやクラフト作製、防虫チンキを作製したりする場合には、西インドレモングラス、東インドレモングラス共に、葉鞘よりも葉身を収穫します。一方、料理に用いる場合には、一般には西インドレモングラスの分げつ株を茎のつけ根から切り取って収穫し、肥大した葉鞘基部を利用しますが、東インドレモングラスの葉鞘も利用可能です。
(※2)C4植物 : 光合成の際にCO2を炭素数4のリンゴ酸として一次貯蔵できる植物で、高温、強光下で高い光合成能力を発揮できる植物。
葉鞘基部が肥大する西インドレモングラス(左)と肥大せず赤くなる東インドレモングラス(右)
西インドレモングラスの収穫した分げつ株(左)と挿し木の要領で赤玉土に株分けした状態(右)
表1. キンボポゴン属以外の主要なイネ科(Poaceae)ハーブ。 学名はWorld Flora Onlineに従った
クリソポゴン属
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Chrysopogon zizanioides (L.)Roberty クリソポゴン・ジザニオイデス[ジザニア属植物(マコモなど)に似た]〔Vetiveria zizanioides (L.) Nash〕
一般名
ベチバー(vetiver)、
[印]khus(カス、クス)
特徴・利用
インド原産。多年草。草丈1.5m。C4植物。耐寒性はレモングラスよりも高く、氷点下10℃くらいまで耐え、日本では東北南部以南で屋外で越冬可能。出穂するが不稔のため株分けで栄養繁殖する。根に土臭い香りを有するため、根を乾燥させて水蒸気蒸留して精油生産される。シャネルNo.5のベースノートに使用される。精油にはkhusimol、vetiselinenol、α-vetivone、β-vetispirene、E-isovalencenolなどを含有する。熱帯で香料原料のほか、根が深く張るためエロ-ジョン防止(土留め)、害獣・害虫防除、家畜飼料、薬用、ファイトレメディエイション(重金属などの土壌汚染除去)などに広く栽培される。
ヒエロクロエ属
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Hierochloe odorata (L.) P.Beauv. ヒエロクロ・オドラータ [芳香のある]
〔Anthoxanthum nitens (G.H.Weber) Y.Schouten & Veldkamp〕
一般名
スイートグラス(sweet grass)、
バイソングラス(bison grass)、
セイヨウコウボウ(西洋香茅)、
バニラグラス(vanilla grass)、
manna grass、
Mary’s grass、
holy grass
特徴・利用
北欧、北米原産。多年草。草丈20cm。属名は「神聖な草」の意で、北欧で聖徒祭日に教会戸口に振りまく習慣のあったことに由来。耐寒性が高く、北極圏でも生育可能。種子及び株分けで繁殖。種子は休眠があり、播種後に一定期間低温に遭遇する必要がある。北米のアメリカンインディアンでは4つの神聖な薬の一つとされるほか「母なる大地の髪」とされ神聖な草とされる。ズブロッカやウィセントなどのポーランドのフレーバーウォッカの原料に用いられる。フランスでは食品、タバコ、飲料の香りづけや、香水に、ロシアではフレーバーティーの原料に用いられる。霜が降りると香らなくなるため、秋前に収穫し、天日干しする。
アントキサントゥム属
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Anthoxanthum odoratum L. アントキサントゥム・オドラトゥム [芳香のある]
一般名
スイートバーナルグラス(sweet vernal grass)、
ハルガヤ(春茅)
特徴・利用
欧州原産、日本に帰化。多年草。草丈30~70cm。属名は「antho(花の)+xanthos(黄色)」で、「黄色い花の」の意で黄金色の穂先に由来。英名のvernalは「春の」の意で、和名は英名の訳。世界中に帰化して分布する。明治維新で牧草として北海道に導入されたのち、全国に広がる。春~初夏に開花。種子及び株分けで繁殖。クマリンを含有して香る。
アントキサントゥム属
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Anthoxanthum aristatum Boiss. アントキサントゥム・アリスタトゥム [芒の]
一般名
ヒメハルガヤ(姫春茅)、
annual vernal grass
特徴・利用
欧州原産、日本に帰化。一・二年草。草丈20cmでスイートバーナルグラスよりも小型。戦後に牧草に混入して日本に帰化し、関東~四国に多く分布。春に開花。種子繁殖する。乾燥するとクマリンの香りがする。
アントキサントゥム属
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Anthoxanthum japonicum (Maxim.) Hack. ex Matsumura アントキサントゥム・ヤポニクム[日本の]
一般名
タカネコウボウ(高嶺香茅)、
シラネコウボウ(白根香茅)
特徴・利用
日本原産。多年草。草丈50~80cm。北海道~四国の高山に分布。関東や東北の一部地域では絶滅危惧種に指定。
表2-1. 主要なキンボポゴン属(Cymbopogon)ハーブ。 学名はWorld Flora Onlineに従った
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon citratus (DC.) Stapf キンボポゴン・キトゥラトゥス[レモンの様な]
〔Andropogon citratus DC.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
レモングラス(lemongrass)、
西インドレモングラス(West Indian lemongrass)、
American lemongrass、
香茅(コウボウ)
特徴・利用
マレーシア~スリランカ原産とされる。西インド諸島、ガテマラ、ブラジル、タイ、インド、バングラディシュ、中国、マダガスカル、コンゴ、タンザニアなどで広く栽培される。多年草。草丈1.5m。不稔のため株分けで繁殖。寒さに弱く5℃以下で枯死する。植えつけ後4~6ヶ月で収穫、その後3~4ヶ月ごとの収穫、5年で植え替える。精油の主成分はシトラール(ゲラニアールとネラールの混合物)で70~80%含有。精油はレモンの香りで、食品や香水、石鹸などの香りづけに用いられる。葉はハーブティーに利用される。中薬では全草を「香茅(コウボウ)」と呼んで感冒頭痛や胃痛、下痢、打撲傷などに、根を「香茅根(コウボウコン)」と呼んで心気痛に用いる。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon flexuosus(Nees ex Steud.) W. Watson キンボポゴン・フレクスオスス
[ジグザグの]〔Andropogon flexuosus Nees ex Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
東インドレモングラス(East Indian lemongrass)、
コーチングラス(Cochin grass)、
マラバールグラス(Malabar grass)
特徴・利用
インド~スリランカ~タイ原産。多年草。草丈3m。花序は60cm。一般名にある「コーチン」、「マラバール」はいずれもインド南西部の地名で、「東インド」はインド東部の意味ではない。産地の85%はインドで南西部や北部で生産されるほか、ガテマラや中国で生産される。種子及び株分けで繁殖。寒さに弱く5℃以下で枯死する。植えつけ後3~4ヶ月で収穫、その後2~3ヶ月ごとの収穫、6年で植え替える。精油含量が低下しないよう開花前に収穫する。精油生産のためにインドを中心に熱帯アジアで商業生産される。精油の主成分はシトラールで80%以上を占める。精油はレモンの香りで、食品や香水、石鹸などの香りづけに用いられる。葉はハーブティーに利用される。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon pendulus(Nees ex Steud.) W.Watson キンボポゴン・ペンドゥルス[下垂の]〔Andropogon pendulus Nees ex Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
北インドレモングラス(North Indian lemongrass)、
Jammu lemongrass
特徴・利用
インド北部~ネパール~中国南部原産。多年草。草丈3m。花序は30~60 cm。英名のJammu(ジャンムー)はインド北部の地名。耐霜性がある。種子及び株分けで繁殖。精油生産のためにインドを中心に熱帯アジアで野生のものが収穫されるほか、品種改良されたものが商業生産される。精油成分はシトラールとシトロネラールを主成分とし、ゲラニオール、酢酸ゲラニル、リナロールを含有。245kL/haの高収油量品種‘Praman’は耐塩性があり、最大84%のシトラールを含有する。ゲラニオール含有率の高い品種もある。精油は抗菌性、鎮静効果を有し、関節炎や菌類による皮膚疾患の治療、鎮静剤に用いられるほか、香水、コスメ、防虫剤などに利用される。葉は茅葺きにも利用される。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon khasianus (Hack.) Stapf ex Bor キンボポゴン・カーシアヌス[インドのカーシ山地の]〔Cymbopogon auritus B.S.Sun〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・カーシアヌス
特徴・利用
インド東北部~中国南部原産。多年草。草丈2.5m。花序は50cm。種小名はインド東北部の山地名から。種子及び株分けで繁殖。精油生産のためにインド北東部を中心に熱帯アジアで商業生産される。精油の主成分をゲラニオール(78%)、メチルオイゲノール(73%)、エレミシン(70%)などとするケモタイプがある。ゲラニオールタイプの精油の抗菌性やメチルオイゲノールタイプの精油の抗酸化、抗炎症、抗菌などの作用が研究されている。高収油率の品種‘CIMAP-Suwaruna’や北インドレモングラスとの種間交雑品種‘CKP25’などがある。
表2-2. 主要なキンボポゴン属(Cymbopogon)ハーブ。 学名はWorld Flora Onlineに従った
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon martini(Roxb.) W.Watsonキンボポゴン・マルティニ[植物学者B.A.Martin(仏)への献名]〔Andropogon martini Roxb.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
パルマローザ(palmarosa)、
パルマロサグラス、
Indian geranium、
gingergrass、
rosha、
rosha grass
特徴・利用
インド~東南アジア原産。多年草。草丈1.5~3m。種子繁殖。インド、ネパールの湿地で栽培され、キマメやキビ、ソルガムなどと間作される。精油原料として商業栽培される。精油成分はゲラニオールなど。品種も多く、’Motia’はゲラニオールを主成分として品質がよいとされ、’Sofia’の精油はgingergrass oilと呼ばれリモネン(20%)、カルベオール、ピペリトールなどを含有する。伝統医療で駆虫、食品の防虫、防カビに利用される。現在では、乾燥葉から水蒸気蒸留で精油が生産され、バラの香りの香水やコスメなどのほか、アロマテラピー、蚊よけ、タバコの香りづけ、抗カビ剤として利用される。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon nardus (L.) Rendle Cat. Afr. Pl.キンボポゴン・ナルドゥス[ナルドの]
〔Andropogon nardus L., Cymbopogon confertiflorus(Steud.) Stapf〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
シトロネラグラス(citronella grass)、
セイロンシトロネラ(Ceylon citronella)、
コウスイガヤ(香水茅)
特徴・利用
熱帯アジア原産。多年草。草丈2.5m。種子繁殖。スリランカをはじめ、熱帯アジアやアフリカで栽培される。植えつけ後8ヶ月で収穫、その後3~4ヶ月ごとの収穫、10~15年間収穫可能。葉を鎮痙、発汗、消化、風邪治療などに薬用とするほか、カレーやスープの香りづけやティーに用いるが食べることはなく、家畜も食べない。シトロネラオイルと呼ばれる精油の原料植物で、防虫剤や香水、コスメ、石鹸などの香りづけに用いられる。’Lanabatu’という品種の精油はlanabatu oilと呼ばれる。精油成分としてシトロネラール、ゲラニオール、シトラール、シトロネロール、酢酸ゲラニル、テルピネオールなどを含有する。バラ様香気の調合原料となるゲラニオールを得る香料原料。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon winterianus Jowitt ex Bor キンボポゴン・ウィンテリアヌス
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
ジャワシトロネラ(Java citronella)、
コウスイガヤ(香水茅)
特徴・利用
熱帯アジア原産。多年草。草丈2.5m。株分けを繰り返すと香りが劣っていくことがあるため種子繁殖が基本。ジャワや東南アジアで商業栽培される。植えつけ後6~9ヶ月で収穫、その後3~4ヶ月ごとの収穫、4~5年で植え替える。葉を湿布で切り傷や打撲に。精油やティーを駆虫、リラクゼイション、胃腸不快改善、防虫剤に。精油はセイロンシトロネラの2倍生産され、品質も高いとされる。精油成分としてシトロネラールを40%含むほか、ゲラニオール、エレモール、酢酸ゲラニル、リモネンなどを含む。バラ様香気の調合原料となるゲラニオールを得る香料原料。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon jwarancusa(Jones) Schult. キンボポゴン・イワランクサ[熱を抑える] 〔Andropogon jwarancusa Jones〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
iwarancusa grass,
oil grass
特徴・利用
中国南部~インド~西アジアに分布。多年草。草丈1m。種子もしくは株分けで繁殖。野生のものが集められるほか、栽培されて精油生産される。精油の主成分はピペリトンで、黄色ブドウ球菌やサリバリウス菌、フザリウム菌、アスペルギルス菌などへの抗菌作用が示されている。アーユルヴェーダやユナニ医学、シッダ医学などでは伝統的に根を熱病や歯周病治療に、花を止血に、葉を抗リウマチや鎮咳、解熱、血液浄化、強壮、消化促進などに薬用とされる。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon coloratus (Hook.f.) Stapf キンボポコン・コロラトゥス[色の着いた]
〔Andropogon coloratus Wight ex Wall.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・コロラトゥス
特徴・利用
インド南部原産。多年草。草丈1m。精油原料として野生のものが収穫されるほか、栽培される。インドのほか、ミャンマーやフィジーでも生産される。種子及び株分けで繁殖。乾燥耐性があり、乾燥地では山火事の原因になりうる。収油量は3~4kg/t。精油の主成分としてゲラニオール(70%)、ミルセン、リモネン、オシメン、リナロール、ネラールとするもの、ボルネオール、リモネン、カンフェンとするものなどのケモタイプが報告されている。精油は石鹸やコスメなどに用いられる。また、繊維が、様々な紙製品の原料となる。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon distans (Nees ex Steud.) W. Watson キンボポコン・ディスタンス[離れてある]〔Andropogon distans Nees ex Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・ディスタンス、
芸香草(ウンコウソウ)
特徴・利用
中国中南部~ネパール~インド北部~パキスタン原産。多年草。草丈80 cm。精油原料として野生のものが収穫される。種子及び株分けで繁殖。乾燥耐性がある。レモンの香りがする。精油は薬用や工業用原料となる。精油の主成分については、テルピネオール(20%)とするものや、ピペリトン(30~40%)、ゲラニオール(10%)とするもの、リモネン(30%)、メチルオイゲノール(13%)とするのもの、α-oxobisabolene-lとするもの、シトラール、ゲラニオール、酢酸ゲラニルとするもの、ピペリトン、リモネン、eudesmanediolとするものなど、様々なケモタイプが報告されている。中薬では全草を感冒や淋病、リウマチ痛、気管支炎などの治療に用いる。
熱帯アジア原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon microstachys(Hook.f.) Soenarko キンボポコン・ミクロスタキス[小さな花穂の]
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・ミクロスタキス
特徴・利用
中国南部~インド北東部~ミャンマー~タイ原産。多年草。草丈1.5~2m。精油の主成分については、(E)-メチルイソオイゲノール(56~60%)とするものや、メチルオイゲノール(20%)とメチルイソオイゲノール(4%)、エレミシン(25%)、イソエレミシン(11%)のフェニールプロパノイド類を60%とするもの、シトラールとゲラニオールとするものなどのケモタイプの報告が見られる。
日本自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon goeringii(Steud.) A.Camus キンボポゴン・ゴエリンギイ [植物収集家P.F.W. Goering(独)への献名] 〔Cymbopogon tortilis var. goeringii(Steud.) Hand.-Mazz.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
オガルカヤ(雄刈萱)、
スズメカルカヤ(雀刈萱)、
橘草(キツソウ)
特徴・利用
東アジア原産。北海道以外の日本各地に自生。多年草。草丈50~100cm。丘陵や河川敷などに自生。メガルカヤ(雌刈萱;Themeda triandra Forssk.)に対して名づけられる。メガルカヤよりも小さい。小穂が直角に近い方向に出る様子が雀のように見えることから、スズメカルカヤとも呼ばれる。芳香があり、精油成分は、エレミシンとtrans-イソエレミシンが70~80%を占め、そのほかd-リナロール、l-ボルネオール、l-酢酸ボルニルなど。中薬では全草を「野香茅(ヤコウボウ)」と呼び、気管支疾患やリウマチ性関節炎、打撲傷、下痢の治療や鎮痛に用いる。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon caesius (Hook. & Arn.) Stapf キンボポゴン・カエシウス [青味を帯びた灰色の]〔Andropogon caesius Hook. & Arn.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
kachi grass
特徴・利用
南アフリカ、熱帯アフリカ、アラビア~インドに分布。多年草。種子及び株分けで繁殖。葉から精油を得るため、野生のものが収穫されるほか、栽培も行われる。レソトではネズミから穀類を守るために用いる。南アフリカでは蚊よけに用いる。精油は「kachi grass oil」と呼ばれる。根からは「sirri oil」が得られる。根の煎剤はつわり止めに用いられる。精油の主成分として、リモネン、ゲラニオールとするもの、カルバクロール、ペリルアルデヒド、ネロリドールとするもの(抗大腸菌が報告)、カルボン(30%)とするものなどのケモタイプが報告されている。
表2-3. 主要なキンボポゴン属(Cymbopogon)ハーブ。 学名はWorld Flora Onlineに従った
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon commutatus(Steud.) Stapf キンボポゴン・コムムタトゥス[変化した]
〔Andropogon commutatus Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
incense grass、
aromatic rush、
camel’s hay
特徴・利用
アフリカ~アラビア半島~インドに分布。多年草。草丈最大1.5m。レモンの香りがする。北東アラビアで薬用とされる。精油の主成分はゲラニオール(64%)、酢酸ゲラニル(16%)とする報告やゲラニオールと酢酸ゲラニルを合わせて62%、シトラールを18%とする報告がある。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon densiflorus(Steud.) Stapf キンボポコン・デンシフロルス[密な花の]
〔Andropogon densiflorus Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・デンシフロルス
特徴・利用
カメルーン~モザンビークにかけての熱帯アフリカ原産。多年草。草丈1.5m。精油原料として野生のものが収穫されるほか、栽培もされる。種子及び株分けで繁殖。乾燥耐性がある。全草が止血や強壮に用いられるほか、葉をすり潰してリウマチ治療に、搾汁液を気管支喘息や鎮静に、花の煙をパイプで吸って気管支疾患に用いられる。また、スイートバジルと共にすり潰して、てんかんの治療に用いる。乾燥葉はインセンスとしても利用される。また、伝統儀式で、浄化や悪霊払い、タバコとして吸って予言などに用いる。穂が密でボリュームがあり、観賞にも供される。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon giganteus Chiov. キンボポコン・ギガンテウス[巨大な]
〔Andropogon giganteus Hochst.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・ギガンテウス
特徴・利用
アフリカのモーリタニア~ソマリア、ボツワナ~タンザニア、マダガスカルに分布。サバンナの優占種で耐乾性がある。多年草。草丈2m。種子及び株分けで繁殖。野生のものが利用される。葉を肉料理に、子実をソースに用いる。葉を黄熱病、黄疸、発熱、てんかん、胃痛、偏頭痛、喉の痛み、口内炎などの治療に、花序を発熱治療や鎮咳に、根を水腫、脳卒中、精神障害の治療や鎮咳に用いる。茅葺きや柵、ベッド、ペン、矢、精油原料などに利用される。葉の精油精油成分はtrans- and cis-p-mentha-2,8-dien-1-ols(18%と9%)、cis- and trans-p-mentha-1(7),8-dien-2-ols(16%と16%)、リモネン(13%)との報告がある。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon nervatus(Hochst.) Chiov. キンボポコン・ネルウァトゥス[有脈の]
〔Andropogon nervatus Hochst.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・ネルウァトゥス
特徴・利用
中央アフリカ~エチオピア、スーダンに分布し、インド、パキスタン、バングラディシュ、ミャンマー、中国にも見られる。一・二年草または短命の多年草。草丈1 m。花序は15~30cm。精油成分として、β-セリネン、β-エレメン、β-ベルガモテン、ゲルマクレン-Dなどが報告されている。乾燥した花序の精油で抗菌性が実験され、赤痢菌や肺炎桿菌で特に高い効果のあることが報告されている。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon pospischilii(K.Schum.) C.E.Hubb. キンボポコン・ポスピスキリイ[Pospischilへの献名]〔Cymbopogon stracheyi (Hook.f.) Raizada & S.K.Jain〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キンボポコン・ポスピスキリイ
特徴・利用
アフリカに分布し、パキスタン、ネパールにも見られる。多年草。草丈1m。花序は15~30cm。強い香りが特徴。精油成分としては、ゲラニオール、シトラール、酢酸ゲラニル、シトロネロール、ピペリトンが知られている。精油の主成分をピペリトン(48%)、カラ-2-エン(30%)とする報告がある。
アフリカ自生種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon schoenanthus (L.) Spreng. キンボポゴン・スコエナントゥス[ノグサの花の]〔Andropogon schoenanthus L.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
キャメルグラス(camel grass)、
camel’s hay、
fever grass、
geranium grass、
West Indian lemon grass
特徴・利用
アフリカ中北部~西アジア原産。多年草。草丈30~120cm。花序は5~39 cm。種子及びは株分けで繁殖。野生のものが集められて精油生産されるほか、香料原料として商業栽培も行われる。精油の主成分にピペリトンとするものやリモネンとするものなどのケモタイプがある。古代ギリシャ時代から用いられてきた。伝統的には、根を媚薬に、花序を解熱や中絶に、葉を虫やヘビの咬傷の治療など薬用とされるほか、茅葺きや粘土に混ぜて井戸や建物に用いられる。精油はキャメルグラスオイルとも呼ばれ、香水などに用いられるほか、ピペリトンによる殺虫効果が知られている。
豪州原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon ambiguus(Hack.) A.Camus キンボポゴン・アンビグウス
[疑わしい、不確実の]〔Andropogon ambiguus Steud.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
オーストラリアンレモングラス(Australian lemon-scented grass)、
native lemongrass
特徴・利用
豪州北部原産。多年草。草丈0.9~1.8m。耐乾性、耐霜性がある。自家受粉する。種子及び株分けで繁殖。アボリジナルは風邪、肺炎、皮膚疾患、頭痛などに薬用とする。葉を料理やスイーツ、ティーに利用するほか、精油をコスメなどのアロマクラフトに利用する。近年、頭痛や炎症治療に効果のあることが報告される。冷凍や乾燥で保存。精油成分は、オイゲノール、エレミシンなど。
豪州原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon bombycinus (R.Br.) Domin キンボポゴン・ボンビキヌス[絹の] 〔Andropogon lanatus R.Br.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
silky oil grass
特徴・利用
豪州原産。多年草。草丈0.7~1m。種子及び株分けで繁殖。葉から精油を採るため、野生のものが収穫される。精油は抗酸化作用があり、化粧品などに利用される。
豪州原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon obtectus S.T.Blake キンボポゴン・オブテクトゥス [被われた]
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
silky heads
特徴・利用
豪州西部原産。多年草。草丈1m。豪州に広く分布。乾燥地に自生し、山火事を含む様々な気候耐性が高く、環境回復に用いられる。種子及び株分けで繁殖。葉はレモンの香りがする。野生のものが収穫され、精油生産される。葉は煎剤で咳や風邪に内服されるほか、筋肉痛や頭痛、傷に外用する。根の搾汁液を耳痛に。
豪州原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon procerus (R.Br.) Domin キンボポゴン・プロケルス [丈の高い]〔Cymbopogon exaltatus (R.Br.) Domin〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
scented grass、
Australian citronella grass
特徴・利用
豪州北部~メラネシア原産。多年草。草丈1~2m。花序は長さ60~75cm。種子及び株分けで繁殖。耐寒性があり、最低気温が0℃前後になる地域でも越冬可能。レモンの香りがある。精油成分として、エレミシンを34%のほか、ピネンを含有するという報告がある。
豪州原産種
学名・学名のラテン語読み[種名の意味]〔主なシノニム〕
Cymbopogon refractus (R.Br.) A.Camus キンボポゴン・リフラクトゥス[屈折した]
〔Andropogon refractus R.Br.〕
一般名(ない場合は学名のラテン語読み)
barbed wire grass、
ginger grass
特徴・利用
豪州原産。多年草。草丈1.2m。花序は10~45cm。小穂は有柄のものと無柄のものが対になっており、小穂のつき方が有刺鉄線のように見えることから、学名の種小名が「屈折した」の意であり、英名をbarded wire grassという。葉にはレモンジンジャーの香りがある。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第56号 2021年6月