スパイスのある暮らしを楽しもう
香り豊かなコリアンダーのお話し
スパイスコーディネーター大平美弥さんのコラム。
今回は、香り豊かなコリアンダーのお話しです。
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原稿を書いている今は、梅雨明けしていないのに35度以上の暑さを記録する日々。汗だくの暑い中、秋を想像しながらスパイスに想いをはせています。
スパイスというと夏を連想される方も多く、皆さん「暑い夏だからカレーを食べる」、「辛いものを欲する」などとおっしゃいますが、実は私は秋のスパイスが大好きです。秋のスパイスといっても、収穫時期が秋なのではなく、秋にオススメしたくなるスパイスのことです。
読書の秋、食欲の秋、そして、恋の季節。想像するだけでワクワクしてきますよね。そんなわけで今回は恋とスパイスについて少しお話しができたらと思います。
中世には媚薬としても使われていたというコリアンダー。なんとこのハーブは意中の相手をものにするためにも使われたそう。現代でもその方法の記録があれば詳しく教えていただきたいところです。
現在では葉はパクチーともいわれ、大人気のスパイス。セリ科で夏には白い花が咲き、その姿はとても可愛らしいです。原産地は南ヨーロッパの地中海沿岸で、現在は多くの国と地域で生産されています。葉茎も種も根も全部使うことができるので、栽培するとかなり有効活用できます。
葉茎はきざんで飾りと香りを楽しみ、種は粉状にしてカレー粉に。お肉の下味をつけるのにも利用できます。根はお鍋の出汁を取る時に使用します。
私は種が大好きなので、粗びきにしてお肉を焼いたり、ウォッカやジンなどすっきりしたスピリッツとの相性もいいので、カクテルに一振りしたり……。その他、ホールのまま、ピクルスを作る時のスパイスとして使用してみることも。かなり用途が広いものです。
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あまり知られていないのですが、食品の香料としてだけでなく、化粧品の香料として使用されていて、爽やかな香りが香水のトップノートにも採用されています。
アジア圏に足を伸ばすと、いかにコリアンダーが生活に密着しているかを感じることができます。タイへ行った時も、インドネシアへ行った時も、前菜やらスープやらあちらこちらでコリアンダーを目にしました。空気もコリアンダーの香りがするような気すらします。現地の方とお話しをする機会があったので聞いてみると、「当たり前のように、常に感じている香り」とのことでした。私からするとちょっとうらやましい。日本で言うところの、「しょうが」や「わさび」に近いイメージでしょうか。お魚の腐敗を2~3日引き延ばす作用があるともいわれているそう。アジア圏は日本のように島国が多いので、そういった活用法もあったのかもしれません。
和漢薬としても胃を健やかに保つ効果や、ガスを出しやすくする効果をはじめ、歯が痛い時に服用したり、消化不良によかったりと様々な体の不調に効果を発揮するので、私もこのような不調を感じる時は、コリアンダーにお世話になっています。特に秋は「食欲の秋」と言われるだけに、過食気味の傾向が。コリアンダーはお料理のアクセントという意味だけでなく、胃腸の調子を整えてくれる役割も果たしてくれそうです。
冒頭でお話しした恋との関係性も考えると、意中のお相手との食事を選ぶ際には、コリアンダーの使用率が多いカレーか、がっつりお肉料理、エスニック料理を頭の片隅に置いておいていただけるといいかもしれませんね。
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ご自宅で使用される方は、ぜひコリアンダーシードをホールでお持ちになることをオススメします。パウダーもとても使いやすいのですが、簡単に香りが飛んでしまうのでもったいないです。使用する時にミルで挽くと、いい香りがその瞬間から弾けてきます。
焼いただけのお肉に一振りするだけで、ご家庭のお食事がワンランクアップしますよ。
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初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.14:2016年9月