2021.7.19

菜園レッスン
“科”を見れば、ハーブの特徴が分かる!
セリ科

当協会理事

木村正典

植物の“科”を学ぶ。今回は、セリ科について紹介します。実践の前に、しっかりと基礎知識を身につけておきましょう。

“科”を見れば、ハーブの特徴が分かる!

ハーブを科ごとに大きく分けると、その大半を占めるシソ科の他に、セリ科、アブラナ科、キク科、ユリ科、イネ科などがあります。栽培方法や利用方法はそれぞれの科ごとに共通している点が多いため、科の特性を把握しておくと大変役立ちます。

シソ科のハーブ

主要なハーブの多くがシソ科に属し、交雑して雑種が生まれやすいために、たくさんの品種が存在します。香りのもととなる精油は葉の表皮にある「腺毛せんもう」に含まれています。挿し木でやすことができることも特徴。

シソ科のハーブは葉を指でこすると腺毛が壊れることで、香る。

Note 秋はセリ科&アブラナ科のタネまきシーズン

秋から育てるなら、寒さに強いセリ科やアブラナ科のハーブが向いています。これらの科は春〜初夏、昆虫の活動開始時期に合わせて抽苔ちゅうだい(花をつけた茎が伸び出すこと)・開花し、受粉・結実を経て、種子を落とします。二年草が多いのも特徴です。

セリ科のハーブ

特徴1
セリ科のハーブは植物全体が香ります。香りの成分である精油は「油管」と呼ばる管状の組織の中にあり、「油管」は根、茎、葉、果実と全ての器官に分布しています。

茎、葉は料理用に、果実(種子)はスパイスとして利用される。

特徴2
シソ科のハーブは挿し木で殖やすことができますが、セリ科やアブラナ科は挿し木できません。タネから育てます。

寒さに強く、暑さが苦手なので、秋まきがおすすめ。

セリ科の代表的なハーブ

イタリアンパセリPetroselinum crispum(Mill.)Nyman ex A. W. Hill var. neapolitanum
消化促進や食欲増進作用の他、防腐効果、口臭予防などがある。ローマ時代には薬用・香料として用いられ、ディオスコリデスの『薬物誌』にも記述が残っている。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入

コリアンダーCoriandrum sativum L.
独特の強い香りは食欲増進作用をもち、消化器系の諸症状にも効果的。果実は香辛料になる。タイでは「パクチー」、中国では「香菜(シャンツァイ)」と呼ばれる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

ディルAnethum graveolens L.
鎮静作用や消化作用が期待できる。「なだめる」という意味の古代北欧語が語源とされ、欧州では赤ちゃんの夜泣き対策にディルの果実を使ったティーを用いる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

フェンネルFoeniculum vulgare Mill.
果実には消化を助ける働きや、むくみを緩和する効果がある。和名は「茴香(ウイキョウ)」。葉は魚料理の香りづけに、果実はスパイスやハーブティーに使われる。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

チャービルAnthriscus cerefolium (L.) Hoffm.
ティーには利尿、消化促進、血行促進作用などがある。甘い香りが特徴で、フランスでは「グルメのパセリ」としてオムレツやサラダ、スープなどにも使われる(仏名:セルフィーユ)。
ティー
料理
湿布
入浴剤
蒸気吸入
チンキ剤

Note ハーブの学名に秘められたラテン語の意味を知ろう

男性形、女性形、中性形 officinalis, -is, -e  意味  薬用の
男性形、女性形、中性形 fragrans, -s, -s / aromaticus, -a, -um  意味  香りのよい
男性形、女性形、中性形 odoratus, -a, -um  意味  芳香のある
男性形、女性形、中性形 graveolens, -a, -um  意味  強いにおいのする

ハーブの学名から種類を特定する以外に、特徴を知ることができます。

男性形、女性形、中性形 tinctorius, -a, -um 意味 染色用の
男性形、女性形、中性形 lactiflorus, -a, -um 意味 乳白色の花の
男性形、女性形、中性形 latifolius, -a, -um 意味 広い葉の
男性形、女性形、中性形 angustifolius, -a, -um 意味 狭い葉の

男性形、女性形、中性形 arborescens, -s, -s 意味 高木状の
男性形、女性形、中性形 frutescens, -s, -s 意味 低木状の
男性形、女性形、中性形 albus, -a, -um 意味 白い
男性形、女性形、中性形 niger, -gra, -gtum 意味 黒い

当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.2:2013年9月