スパイスのある暮らしを楽しもう 夏の葉生姜、初秋の秋生姜
スパイスの楽しさを紹介するため、雑誌やテレビなどでも活躍するスパイスコーディネーター大平美弥さんのコラム。今回は、体を温める効果のあるジンジャーのお話しです。
生姜について学ぶ程のことがあるの? と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、生姜1つとっても様々なエピソードがあります。
以前、インドネシアで生姜やターメリックを上手に使用したドリンクを頂いたことがありました。「ジャムウ」というインドネシアで民間療法的にもよいと言われている健康飲料です。ターメリックの目にも鮮やかな黄色にとても驚きましたが、さらにその後味のシャープさにびっくりしました。これは、生の生姜を利用していたものです。
どこでも栽培されているイメージをもつ生姜ですが、もともとは熱帯アジアとインドで作られていました。現在では多くの地域にて生産されていて、世界的に名の通ったスパイスです。生のまま出荷する場合は、収穫した根茎を洗い、1~2日乾燥させています。管理さえきちんとしていれば、そのまま数か月は貯蔵することができるのだそうです。
意外なことに、世界的に生姜は「乾燥しているもの」という認識が強いのです。私達日本人は生生姜(おろし生姜)のイメージが殆ど。生活習慣と文化の違いも大きく、これもまた面白さを感じます。
乾燥生姜には白生姜と黒生姜があることもあまり知られていないかもしれませんね。日本で乾燥生姜をおもちの方は少ないかもしれませんが、今ではスーパーで容易に購入できます。ただし、保存の際にはカビの発生に気をつけなければなりません。長期で保存すればするほど、酸化した臭いが感じられるようになるので、一度開封したら、早めに使い切っていただきたいスパイスです。
もし、賞味期限までに使い切れない場合、簡単な使用方法としては、紅茶に振りかけるだけのジンジャー紅茶。とにかく温まるので、冬場では特にオススメです。
現在、生姜は様々な研究が行われています。生姜の摂取により消化率が増加するなどのメリットも発表されています。
もともとは、新陳代謝機能の衰えた時に用いられていて、吐き気や咳、めまい、手足の冷え、腹痛、腰痛、下痢等の治療薬にも含まれています。胃を健やかに保つための漢方薬としても有名です。体を温める効果でも知られ、日本でも風邪をひいた時に生姜湯を飲むとよいとされています。英語には「ジンジャーアップ」という言葉もあり、「元気が出る」という意味も。
日本では収穫時期を調整していて、それぞれの時期にもつ香味を料理に生かしています。
夏に茎や葉をつけたままの生姜を早取りしたものを一般的には「葉生姜」、「新根生姜」と呼んでいて、とてもフレッシュな香味が印象的です。
初秋の頃の収穫したものは「秋生姜」。繊維質が少ないので全体的に肉質が軟らかいのも特徴です。生の状態で食べやすいということにもなります。
日本の家庭の定番メニュー「豚の生姜焼き」は生の生姜を使用していますが、生姜に含まれている酵素がお肉の組織を軟らかくする効果があるため、この生姜焼きのお肉のふっくら感は生姜によるものといえるでしょう。
ヨーロッパでは生姜をチョコレートやケーキの材料に使用することが多いです。ジンジャークッキー、ジンジャーチョコレート……。どれもこれも私の好物です。
どうやら私の今年の冬はジンジャークッキー&生姜紅茶が定番になりそうです。皆さんも私のこの冬のブームを参考にしていただき、ぜひお試しになってみてください。
ジャムウについての他の記事はこちらhttps://www.medicalherb.or.jp/archives/165450
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『HERB & LIFE』 VOL.15:2016年12月