南の島の植物原色の花々
亜熱帯に咲く花は鮮やかな原色のものが多く、内地とは異なった景観を醸し出します。今回は原色の花々を見て回りましょう。
赤色
沖縄で最もよく見られる赤色の花は「ハイビスカス」です。
アカバナーとも呼ばれ年間を通してどこにでも咲いています。挿し木で簡単に増え成長も早いため防風林としても用いられます。
葉や花は、昔はすり潰してシャンプーの代わりに髪を洗うために使われていました。最近はハイビスカスの種類も多くなり、様々な色や形を見ることができます。
「デイゴ」も10年ほど前までは入学シーズンの校庭を赤色で埋め尽くす代表的な花でした。10年ほど前にヒメコバチという害虫の侵蝕により絶滅の危機に瀕しましたが、最近保護活動により次第に再生されるようになってきました。
代わって世界三大花木として知られる「ホウオウボク」が街路樹として多用されるようになり、初夏の花時には涼しげな葉に包まれた樹全体が真っ赤な花で街路が覆われます。
黄色
黄色い花の代表は街路樹などに多用されている「アラマンダ」、アリアケカズラ。年間を通して見られるブーゲンビリアとの組み合わせは、黄色と桃色の対比で南国独特の景観です。アラマンダのラッパ状の大きな花が密に咲く様は壮観です。
梅雨明け頃には南国特有の「ゴールデンシャワー」、ナンバンサイカチが咲きます。樹上の高い所から芳香のある黄金の花が、藤の花のようにしだれ咲く様からこの名がつきました。街中でよく目につくのが、塀際などにここ数年で急速に増えてきた花「ターネラ」。舗装の隙間などで純黄色の鮮やかな一日花を咲かせます。
桃色
桃色の代表花は「ブーゲンビリア」。特に街中で見かけることが多く、今年は冬場に雨が少なかったせいか、花上がりが非常によく、石垣の市街地全体が濃桃色の花で覆われるようでした。
民家の2階まで這い上がったものや大型盆栽のように大きな鉢植えでびっしりと花がついたものまで、驚くような花つきのよさは驚嘆物でした。
また、ブーゲンビリアは独特の栽培法が確立されており、大きな鉢で競い合って年中花を咲かせるマニアがたくさんいます。
太平洋の島々でレイに使われる「プルメリア」も街中でよく見られます。花色も多く、この木の下では南国特有の甘く爽やかな香りが充満します。
年末頃にその名の通りトックリのような形状の樹にびっしりと大きなピンクの花を咲かせる「トックリキワタ」も公園や街路樹として見ることができます。ただ、果実が熟して弾けると中から白い綿が風に乗って一面に飛散し、掃除が大変になります。
橙色
橙色の代表は「クワンソウ」。キスゲの仲間で和名はアキノワスレグサ。花は鮮やかなオレンジ色でほんのりと甘くシャキシャキとした食感でサラダや酢漬けなどの食材としても利用されます。
沖縄では古くから「ニーブイ草(眠り草)」と呼ばれ、安眠効果のある薬草として利用されています。
「ストレリチア・レギネ」も陽当たりのよい歩道の植栽や公園などで見ることができます。花は青紫色ですが鶏冠のように立ち上がった苞が鮮やかなオレンジ色で、熱帯の鳥のように美しいことから極楽鳥花とも呼ばれています。
花持ちが大変よく切り花の材料として栽培されています。
紫色
初夏に目につくのが「オオバナサルスベリ」です。
花は普通のサルスベリのようですが、大きさが数倍もあり満開の時にはとても豪華です。遠くから見るとジャカランダのように紫の花が樹形のよい上部を覆います。
公園や街路など様々に使われています。ただ台風には弱く痛みが激しいですが、台風の影響が少ない時は街中の道路沿いを紫色に染めます。
内地で植栽に使われる「デュランタ」、タイワンレンギョウも小さな花ですが、白く縁取られた濃い紫色の花を下垂しながらびっしりとつけます。性質が強く刈り込みに効く樹形で、開花後の果実も黄色い実がたくさんつき、特に黄斑のライム種は観賞価値が高いので庭先などにも多く見られます。八重山では年間を通して花を見ることができます。
●青色
青色の代表はなんといっても「ヒスイカズラ」。フィリピン原産の蔓性のマメ科の植物で、春先に下垂した花房は、その名の通り翡翠色の青緑の花を咲かせます。
内地では植物園などで見ることができますが、石垣島では露地でたくさんの花を咲かせます。
1本の花房に150程の花がついており、1つの花は、咲き始めはエメラルドグリーンのような色で、徐々にブルーベリーのような色に変化して2~3日で落ちます。
花は蜜をたっぷりと含んでおり、原産地ではオオコウモリが受粉を媒介するそうですが、まだ石垣島のオオコウモリはこの蜜の味を知らないようで、主にメジロが吸蜜にやってきます。
早春の2~3月とゴールデンウィークの5月頃の2度咲きます。
青いハーブティーでおなじみの蝶豆「バタフライピー」も庭先などでの栽培が増えてきました。石垣島で主に栽培されているものは八重咲き種で、含まれるアントシアニンの量も多く濃い色が抽出できるようです。冬場の一時期花がなくなることもありますが、冬枯れもなくほぼ10ヵ月月近く収穫できます。
白色
4月には島の岬や野山を埋め尽くすように真っ白な「テッポウユリ」が咲き乱れます。
野生のテッポウユリは栽培種に比べ香りが強いようで、群生地に入るとむせかえるような甘い香りに包まれます。
ハマユウによく似た「ヒメロカリス」は、クモのような形状の白い花弁と甘い香りでスパイダーリリーと呼ばれています。常緑の葉が美しく公園などの植栽にもよく使われています。
「月桃」は花先がほんのりと桃色を帯びて、白く艶のある花弁に黄色い唇弁をもって数珠のように下垂します。花期に道路を走っていると島中いたるところにこの花を見ることができます。近年は精油や精製水などの加工も増え、また赤土流出防止の植栽などにも利用されています。
コバルトブルーの澄み切った青空にエメラルドグリーンの海をもつ石垣島には、原色の花々が似合います。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月