はじめてのプランター栽培 第2回
HERB & LIFE ハーブのある暮らしを楽しむ<秋>
Gardening design ガーデニングデザイン#14
夏の暑さも和らぎ、少しずつひんやりした空気が感じられるようになったら、秋のタネまきの季節。
秋まきハーブは冬の寒さに強く、春には色とりどりの花を咲かせます。
この秋から、来春に向けての「ガーデニングプラン」を立ててみませんか。
question
秋まきハーブには
どのようなものがありますか?
秋まきと春まきでは
基本的に何が違うのですか?
タネまきの方法を教えてください。
秋まき・春まきハーブの違いを知ろう
秋まきの可能なハーブ「ロゼット植物」
●アブラナ科
カラシナ(マスタード)、キャベツ、ケール、
ダイコン、ルッコラ、セルバチコ
●セリ科
ニンジン、パセリ、イタリアンパセリ、
コリアンダー、チャービル、ディル、フェンネル
●キク科
ゴボウ、レタス、シュンギク、カレンデュラ、
ジャーマンカモミール、ミルクシスル、
アーティチョーク、カルドン、コーンフラワー、
アルテミシア類(ヨモギ属)
●アカザ科
ホウレンソウ、スイスチャード、ビーツ
●その他
ネギ、タマネギ、チャイブ、ニゲラ、ボリジ、
ルバーブ
秋まきハーブの特徴
1.ロゼット植物
秋まきハーブの最大の特徴はロゼット植物であるということです。ロゼット植物のロゼットはローズからきており、ローズの花のように1カ所から葉が出ている草姿の植物をいいます。地際から葉を広げるタンポポやオオバコ、レタス、キャベツ、ダイコンなどがその例です。
ロゼット植物には『ロゼットを呈して寒い冬を乗り切る』『直根に養分を蓄え、その養分で抽台・開花・結実する』『葉根菜類が多い』『一・二年生草本の場合、春まきでは葉が数枚出ただけですぐに花芽分化して抽台・開花・結実後に枯死する』という特徴があります。
2.温帯原産で寒さに強い
3.夏に病害虫の被害が甚大
*一・二年生植物:開花すると枯死する植物
*多年生植物:開花しても枯死しない植物
春まきハーブの特徴
●秋までに花が咲いて枯死してしまう「一年草」…シソ、アイタデ、ゴマ、マリーゴールド(フレンチ、メキシカン)
●耐寒性がないために温帯では一年草扱いとなる「多年草」…バジル、ローゼル、ナスタチウム、バタフライピー、ワタ、パパイヤ、パッションフラワー
●冬には地上部を枯らして翌春芽吹く「宿根草」…ミント、レモンバーム、ステビア、マリーゴールド(レモン、ミント)
●冬には生育を停止する「木本植物」…ローズマリー、ラベンダー、タイム、セージ、ウィンターセイボリー、オレガノ、マジョラム
●本来、春まきではないが春まき品種がある「一・二年草」…ダイコン、キャベツ、ホウレンソウ
〈参考〉春まきではないハーブで、春まき品種もなく、春まきするとすぐに開花して葉が十分に収穫できない物に、コリアンダーやルッコラがあります。
秋まきハーブに学ぶ!冬越しのための生存戦略?
冬越しのための温帯原産植物の生存戦略は4種類あります。秋まきハーブは3)ロゼット植物が中心です。
1)木化して凍りにくくする=「木本植物」
該当ハーブは、春まきハーブの特徴の「木本植物」
2)地上部を枯らして地際や根で越冬する=宿根草
該当ハーブは、春まきハーブの特徴の「宿根草」
3)地際で背を低くして枯葉や雪の下で越冬する=
「ロゼット植物」
該当ハーブは、秋まきハーブの特徴の「ロゼット植物」
4)枯死して種子で越冬し春に発芽=「春まき草本」
該当ハーブは、春まきハーブの特徴の、秋までに花が咲いて枯死してしまう「一年草」+耐寒性がないために温帯では一年草扱いとなる「多年草」
無間引き栽培でのタネのまき方
無間引きタネまきって?
タネまきにもいろいろな流儀があるものですが、ここでは、一粒一粒を大切にして、ベビーリーフの状態から収穫して食べる無間引きタネまきをご紹介します。
ポイントは、丁寧に、几帳面にタネまきすること。間引きを避けるため、まく時は2.5㎝間隔に一粒ずつまきます。
発芽しなかったところには、後から追いかけるようにタネまきする、追いまきをします。
本葉が2~3枚出るまで間引きはしません。
本葉が3枚以上になったら、ベビーリーフとして最初の収穫を行います。その際、規則的に1つおきに収穫することで、均等にスペースが空き、自然に間引きした状態となります。
以降、1つおきに収穫を繰り返し、最後は1本にして翌春まで育て、花や未熟果、完熟果などを収穫して楽しみ、最終的には採種して秋まきしましょう。
失敗しないタネまきのPOINT
●鉢底土
プランターは乾きやすいので水はけをよくする必要がない。また、土壌体積が限られているので栄養のある土で満たしたい。したがって、土の流出さえ防げればよく、鉢底土は極力用いない。
●タネまき用土
培養土を用い、表面1㎝だけふるって細かくする。覆土の土も細かくふるってかける。土の粒子がタネよりも大きいと、土とタネとの接触する部分が少なくなって水分を効率的に吸収できない。一方、土を細かくふるうと、タネと土との接触部分が増え、安定して水分供給される。網目が3㎜程度のふるいがよい。
●土の表面をまっ平らに
播種前に、定規などを用いて土の表面をまっ平らにする。表面に凹凸があると乾きやすい所が出て発芽にムラを生じる。
無間引きタネまきの手順
❶プランターに堆肥を混ぜた培養土を8~9分目くらいまで入れ、表面をできるだけ平らにする。
❷ジョウロで下から出るまでたっぷりと灌水する。
❸堆肥を混ぜていない土を1㎝程度ふるう。
❹定規などを使って土の表面を真っ平らにする。
❺タネを一粒ずつ2.5㎝程度の間隔で碁盤の目のように等間隔に置いていく。
※その際、生物多様性の観点から、隣同士が違う種類に なるようにミックスしてまくのがおすすめ。コツとして、アブラナ科などは2〜3日で一番早く発芽し、すぐに大きくなって他のハーブが日陰になってしまうので、セリ科などの発芽までに1週間かかるものを先に播種し、それらが発芽してから追いかけるようにアブラナ科などをまくとよい。
❻タネを置いたら、堆肥を混ぜていない土をさらにふるって、タネが完全に見えなくなるまで覆土する。タネの大きなものや、筋まきや点まき、追いまきの場合には、タネを置いて指で押し込むなどして、周りの土を指で寄せて覆土する。
❼ふるった土が湿る程度にジョウロでさっと灌水する。
❽発芽まで土の表面が乾かないよう毎日軽く灌水する。
❾発芽までは日に当てる必要はないが、1粒でも発芽したら、最も日の当たるとこに置く。
❿発芽後は、土の表面が完全に乾いたら、底から水が出るまでたっぷり灌水する。
コリアンダーを2.5㎝間隔でバラまきした時の発芽後の様子。
本葉が2~3枚出るまで間引きはしない。本葉が3枚以上になったら、ベビーリーフとして最初の収穫を行う。その際、規則的に1つおきに収穫することで、均等にスペースが空き、自然に間引きした状態となる。以降、1つおきに収穫を繰り返す。
ネギを2.5㎝間隔で筋まきした時の発芽後の様子。
筋まきの場合も2.5㎝間隔で一粒ずつ播種することで、芽ネギとして最初の収穫を行うまで、無駄な間引きをせずに栽培できる。
以降、収穫を規則的に1本おきに行うことで、自然に間引きをした状態となる。
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初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月