犬・猫のハーバルケア: 安全なハーバルケアのために
Herbs for Dog and Cat
ハーブは重い副作用が出ることはまれですが、使用量や使用方法を誤れば、どんな植物でも有毒になり得ます。常にペットの状態をよく観察しながら安全に使用しましょう。
注意が必要な植物成分 ☞副作用は主に過剰摂取や長期使用によって起こり得るものです。
成分名:アントラキノン
副作用・注意点:腹痛、下痢、肝障害、腎臓障害、長期使用による依存症
多く含むハーブ:アロエ、センナ、カスカラサグラダ、ルバーブの根
成分名:クマリン
副作用・注意点:多量使用による光線過敏症、血液凝固障害のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:レッドクローバー、アルファルファ
成分名:シュウ酸、シュウ酸塩
副作用・注意点:泌尿器の炎症、結石、腎臓や泌尿器に疾患のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:タデ科およびアブラナ科の植物、
シープソレルやフレンチソレルの葉、イエロードックの根
成分名:アルカロイド
副作用・注意点:肝機能障害、嘔吐、特に猫には注意が必要、妊娠中や授乳中の動物への使用は禁忌
多く含むハーブ:コンフリー、オレゴングレープ、ゴールデンシール
成分名:サリチル酸塩
副作用・注意点:猫やアスピリンに敏感な動物に使用する時は、細心の注意が必要
多く含むハーブ:ウィロウバーク、メドウスウィート、ポプラ
成分名:サポニン
副作用・注意点:胃腸の炎症、嘔吐、脂溶性ビタミンの吸収阻害
多く含むハーブ:バレリアン、リコリス、サルサパリラ、ユッカの根
成分名:ステロール
副作用・注意点:むくみ、高血圧
多く含むハーブ:リコリス
成分名:タンニン
副作用・注意点:粘膜の炎症、妊娠中の動物には流産の原因になることもある
腎臓に疾患のある動物への使用は注意
多く含むハーブ:ウワウルシ、ジュニパー、クロクルミの果皮、ホワイトオークの樹皮
▼免疫強化 免疫機能の活性化と補助に役立つ代表的なハーブです。エキナセアは比較的軽度で一過性の症状の改善に向きます。
ハーブ名(学名):エキナセア(Echinacea spp.)
適応症状:細菌やウイルス感染症の初期症状
ハーブ名(学名):アストラガルス(Astragalus membranaceous)※
適応症状:特に腎臓の機能低下を伴う疾患(苦味はあるがエキナセアの代用として)
※アストラガルスは和名を「オウギ」といい、漢方では疲労回復や強壮、かぜの予防などに用いられています。
▼リンパ系 リンパ球の産生やリンパの流れを補助し、リンパ球が流れ込む病変部の治癒を促します。内因的な慢性皮膚炎の治療にも有効です。
ハーブ名(学名):クリ―バーズ(Galium aparine)※
適応症状:消化器、泌尿器の嚢疱、潰瘍
※クリーバーズには利尿作用もあり、泌尿器の働きを助けます。また、皮膚や被毛の健康を増進するといわれています。
ハーブ名(学名):レッドクローバー(Trifolium pratense)
適応症状:皮膚の嚢疱や潰瘍など、リンパ節の腫れ
▼神経安定・鎮静 脳の中枢神経に働きかけて活動を正常化し、緊張や不安、抑うつ、イライラなどの症状を改善します。
ハーブ名(学名):スカルキャップ(Scutellaria spp.)
適応症状:神経過敏症の不安感やてんかん性の発作・痛み
ハーブ名(学名):バレリアン(Valeriana officinalis)
適応症状:急性の不安感や落ちつかない時(緩和剤として)、てんかん性の発作・痛み
ハーブ名(学名):パッションフラワー(Passiflora incarnata)
適応症状:情緒不安定、不安、外傷後のうつ症状(バレリアンを嫌がる動物にも使用可能)
ハーブ名(学名):オート麦(Avena sativa)
適応症状:神経疾患(高齢の動物のための強壮剤)
▼栄養補給 各種の栄養素をバランスよく含み、日常的な栄養補助食として利用できます。特に貧血やミネラル不足による諸症状に効果的です。
ハーブ名(学名):ネトル(Urtica spp.)
適応症状:豊富なミネラル、ビタミン、タンパク質源
ハーブ名(学名):アルファルファ(Medicago sativa)
適応症状:豊富なミネラル、ビタミン、タンパク質源
ハーブ名(学名):フラックスシード(Linum spp.)
適応症状:豊富なオメガ-3脂肪酸の供給源
ハーブ名(学名):ダンディライオン(Taraxacum officinale)
適応症状:豊富なミネラル(特にカリウム)、ビタミン、タンパク質源
▼傷 細胞組織の修復を助ける働きや炎症を鎮める働きにより、外用(湿布、軟膏、オイルなど)、または経口投与で傷の治癒を促します。
ハーブ名(学名):アロエベラ(Aloe spp.)
適応症状:やけど、傷、皮膚炎(外用)、潰瘍(経口投与)
ハーブ名(学名):アルニカ(Arnica spp.)
適応症状:外用として傷口の閉じているけがにのみ使用
ハーブ名(学名):カレンデュラ(Calendula officinalis)
適応症状:皮膚炎、やけど、外傷
ハーブ名(学名):セントジョンズワート(Hypericum perforatum)
適応症状:軟部組織の損傷、神経の損傷を伴う外傷
HOW TO USE 効果的にハーブを使うために
犬や猫にハーブを用いる時は、私たち人間が使用する時とは違った注意が必要なこともあります。
それぞれのハーブについての基本的な知識を身につけた上で、次のポイントを押さえましょう。
人間と同じように、体質や嗜好には個体差があることも忘れずに。
嫌がる時は、無理に与えない
ハーブは独特の香りや強い香りをもつものが多いため、ペットによっては嫌がって食べないこともあります。その場合は、無理に食べさせないで、ハーブの種類や量を変えてみましょう。
チンキはアルコール濃度に注意
チンキは作用が強力で用途が広く、犬や猫の短い消化管でも完全に吸収されます。ただし、動物はアルコールの味を嫌うので、低アルコールの溶媒を用いるか、アルコールと水を混ぜて作りましょう。グリセリンチンキがあればおすすめです。
ブレンドで相乗効果を
最初はペットの健康状態に応じてベースとなるハーブを1~2種類決め、後は様子を見ながら種類を増やしていきましょう。ブレンドすることによって、いろいろなハーブの相乗効果が得られます。
味にうるさい猫にはハーブティーを
ペットの中でも特に猫は食餌が変わるのをあまり好みません。その点、ハーブティーは味にうるさい猫にも比較的受け入れられやすいもの。ハーブティーをいつもの食餌に混ぜて与えると、ハーブの成分を楽に吸収できます。
カプセル入りのハーブはNG
犬や猫の消化管は短いため、カプセル入りのハーブだと吸収されずに排出されてしまいます。吸収できたとしても、動物に必要な量を与えるのは大変。ハーブチンキかドライハーブ、またはハーブティーを与えましょう。
イラスト = SANDER STUDIO
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第57号 2021年9月