季節のご挨拶 医療の持続可能性の観点から
皆さん、こんにちは。最近では持続可能性という概念なくしては、いかなる活動も社会の賛同を得るのが難しくなっています。持続可能性については主に環境や経済の分野での取り組みが目立ちますが、ひとが生きていく上で避けて通ることができな い医療の分野ではあまり問われていないようです。
そこで医療の持続可能性について考えてみたいと思います。新薬による薬物療法を主とする現代医学は果たして持続可能な医療といえるでしょうか? 残念ながらそうとはいえないようです。一例を挙げれば感染症に対する抗生物質の乱用による 耐性菌の出現があります。耐性菌に対してさらに強力な抗生物質が開発されますが耐性菌はさらに 耐性を獲得する……、要するにイタチごっことなり仕舞いには手がつけられないような耐性菌が出現することとなり院内感染が社会問題化しています。チカラによって相手をおさえつけるといった攻撃型の医療は限界にきているようです。
もうひとつ例を挙げると医薬品による環境汚染の問題です。私たちが医薬品を服用するとその代謝産物がトイレから下水を経て海や川に流れ着きます。また服用されずに廃棄された医薬品は雨水を受けて地下に浸み込み地下水を経てやはり海や川を汚すのです。学術誌『Ecosphere』によると実際に川に流れ込んだ抗うつ薬のSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)によってザリガニが活動的になり、エサを探す時間が大幅に増えます。すると身を隠す時間が減り、捕食者から攻撃されやすくなる可能性が生じます。
生態系を乱さず自然のサイクルに沿ったメディカルハーブではこうしたリスクは少ないといえます。 医療の持続可能性の観点からもメディカルハーブの更なる普及が望まれているのです。
JAMHAのSDGsへの取り組み
健康
メディカルハーブによる安全・安心な健康・福祉の促進と健康的な暮らしの創出
- メディカルハーブによる治療や未病予防、健康増進、介護、看護、美容、ストレスケアなどの普及・啓発や、従事者への支援、安全性・有用性に関する正しい情報の発信
- 検定の実施、セラピストなどの資格認定、認定校・認定教室の認定
- シンポジウムや地区イベント、見学会、オンラインアカデミーなどの開催
- 機関誌やテキストなどの発行、HPの運営、SNSでの情報発信
- メディカルハーブやハーブ療法に関する調査・研究の支援・普及
- 学術研究への助成
- 学術フォーラムや機関誌、HPなどでの最新研究・情報の紹介
- メディカルハーブを活用した健康的な暮らしの普及・啓発・支援
- 機関誌やHP、SNSなどへの投稿、新しい資格の立案
環境
メディカルハーブを通した環境への負荷軽減・意識向上
- 生態系を大切にした自然とつながるハーブ栽培やハーバル
- ライフの普及・啓発と、環境に対する意識向上の推進
- シンポジウムやセミナー、オンラインアカデミー、講座などの開催
- 機関誌やHP、SNSなどへの投稿
- ハーブ&ライフ検定の実施、新しい資格の立案
- 環境に負荷をかけない持続可能なハーブの生産・加工・流通・消費の支援と推進
- サステイナブルアグリカルチャーや有機栽培、フェアトレード、国産ハーブ生産者などの支援、機関誌やHP、SNSでの紹介
- ペーパレスや脱プラスチック、リサイクルの推進と会員への啓発
- web化、エコ化の促進、会員証や送付物の見直しなど
社会
メディカルハーブによる豊かな暮らしと社会の創出
- メディカルハーブの指導者・専門家・愛好家を育成するための教育
- 認定校および認定教室の認定、カリキュラムやテキストの指定
- ハーブに関心のある、次世代を担う学生への教育・普及
- 学割の導入、高校生や専門学校生、大学生などへの普及・教育支援
- 美容・健康・介護・医療などに従事する方のキャリアアップやセルフケアの支援
- ハーブによる治療や介護、未病予防、健康増進、美容、ストレスケアなどに関する情報発信
- 女性の働く機会・活躍の機会の創出
- 資格の認定と認定校、認定教室へのサポート、ハーブに関連した仕事の創出、役員・委員のジェンダーバランスの改善
- メディカルハーブによる豊かな社会の構築
- 住みやすいまちづくりや地域振興、活性化のためのハーブの活用支援・普及、機関誌やHP、SNSでの事例紹介、全国ハーブサミットの支援
- 会員のコミュニティ形成やネットワークづくり、地域活動の推進
- ハーブを活用した商品開発や技術開発、研究、地域振興の支援
- 企業とのコラボレーション、産官学の連携
- 「健康」「環境」「社会」に貢献するハーブ関連企業の認証制度の構築
- ハーブ関連企業を協会独自の評価により認証し、産業振興を図る
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第58号 2021年12月