不眠だけでなく頭痛にもバレリアン
不眠に人気のバレリアンの根は、鎮静・鎮痙、抗不安、および抗うつ作用などを持つため、海外では不眠の他に、不安症やうつ、不安・痛み・不眠などを伴う月経困難症、生理前症候群、更年期などにも用いられる。
バレリアンの睡眠障害以外での利用については、この他に、過去に偏頭痛における効果も認められているが(Mirzaee et al., 2015)、今回、小規模ではあるが新しい臨床試験で頭痛の約7割を占めるとされる最も一般的な緊張型頭痛の効果が確認された。
この試験では、緊張型頭痛をもつ88人をバレリアンを1日2カプセル(1カプセルにバレリアンルート抽出エキス530 mg含有)一ヶ月間夕食後に服用したグループとプラセボグループに分け、頭痛が日常生活に与えるインパクト、頭痛の心身への支障度、及び頭痛の重症度を測った。両グループとも試験期間は痛み止めを使用せずに結果を評価した。
一ヶ月後の評価では、バレリアングループで全ての評価基準において効果が認められ、特に支障度と重症度での効果が高かった。今回の試験の結果では、その有効性に加え1日1回夜の服用で日中も効果が持続した点も興味を引くものとなった。
バレリアンは、揮発性オイル、モノテルペン、バレポトリエート、およびセスキテルペンなどが、さまざまな方法で脳に直接働きかけるが、それら成分の1つであるバレレン酸は酵素によって引き起こされる脳内のγ-アミノ酪酸(GABA)の分解を阻害するため、バレリアンを服用し続けることで鎮静作用をもたらすと考えられている。
偏頭痛や月経痛を和らげる鎮痛作用に加え、鎮静や抗不安など複数の作用が総合的に働き、痛みやストレスを和らげることで頭痛の症状を緩和するのではと考えられている。
〔文献〕
Azizi H, Shojaii A, Hashem-Dabaghian F, Noras M, Boroumand A, Ebadolahzadeh Haghani B, Ghods R. Effects of Valeriana officinalis (Valerian) on tension-type headache: A randomized, placebo-controlled, double-blind clinical trial. Avicenna J Phytomed. 2020 May-Jun;10(3):297-304.
Mirzaee MG, Kheiri S, Bahrami M. 2015. Effect of valerian capsules in patients with migraine attacks treated with sodium valproate: a randomized clinical trial. J Shahrekord Univ Med Sci. 2015; 16 (6) :119-126
(4/30/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)