急性呼吸器感染症における植物療法の初期治療の影響
メディカルハーブが一般開業医にも広く利用されているドイツならではの興味深い後ろ向きコホート研究が発表された。
急性下気道および上気道呼吸器感染症と診断された患者のうち処方初日にメディカルハーブを処方された117,182名と同数のメディカルハーブを処方されていない対照者の、罹患期間(病欠期間)やその後の抗生物質の処方をデータベースから調査したものだ。
急性呼吸器感染症の場合、一般開業医で一番多く処方されているメディカルハーブは、大人に対しては蒸留抽出された精油ブレンド(ユーカリ、スイートオレンジ、マートル、およびレモンのブレンド)やハーブエキスブレンド(ゲンチアナ(Gentiana lutea)根,カウスリップ(Primula veris)花、ソレル(Rumex acetosa)、エルダーフラワー(Sambucus nigra)、およびバーベナ(Verbena officinalis)のブレンド)、小児には、アイビーリーフ(Hedera helix)エキス、次いでタイムエキスとアイビーリーフエキスのブレンドなどであった。その他によく処方されるメディカルハーブには、南アフリカゼラニウム(Pelargonium sidoides)根エキス、タイムエキス、アイビーリーフエキス、タイムエキスとカウスリップ根エキスのブレンド、シネオールなどが含まれていた。
研究結果で、メディカルハーブ全般において、その初期治療の処方がその後の抗生物質の処方の減少と、病欠期間の短期化と関連していることがわかった。その中でも特に顕著なのが、大人では南アフリカゼラニウム根エキスおよびタイムエキスの処方、小児では南アフリカゼラニウム根エキス、タイムエキスとアイビーリーフエキスのブレンド、およびタイムエキスとカウスリップ根エキスのブレンドの処方で特に診断後の経過における抗生物質の処方が少なく、また、シネオールおよび南アフリカゼラニウム根エキスの処方で特に病欠の長期化リスクが減少していた。
植物療法による初期治療は呼吸器感染症による細菌性の後遺症の発生リスクを抑えられる可能性があり、このコホート研究では最後に「プライマリーケアにおける抗生物質の使用を減らすために、植物性医薬品を使用すべきである」と結論づけている。
〔文献〕Martin D et al. Reduced antibiotic use after initial treatment of acute respiratory infections with phytopharmaceuticals- a retrospective cohort study. Postgrad Med. 2020 Jun;132(5):412-418. doi: 10.1080/00325481.2020.1751497. Epub 2020 Apr 20. Erratum in: Postgrad Med. 2020 Nov 25;:1.
(7/10/2021 報告:河野加奈恵 学術委員)