2022.6.29

梅雨どきのコンディショニング- 季節に合った体調管理を -

いりたに内科クリニック院長

入谷栄一

梅雨どきは、体のだるさを感じたり、やる気が出なくなったりと気持ちも体調もすっきりしない方が多いのではないでしょうか?最近はこうした体調不良のことを「梅雨だる」、「梅雨ばて」あるいは「6月病」などと呼ぶこともあるようです。

イラスト = 糸井みさ

生活環境が整った現代でも、私たちは天候の影響を大きく受けます。季節の変化は、想像以上に体にとってストレスとなり得るのです。

今回は、梅雨どきに起こりやすい不調やその原因について学び季節に合った体調管理のポイントを身につけていきましょう。

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梅雨の季節の養生

梅雨どきは様々な気象ストレスがかかりやすく、体や心にとって過酷な環境です。この時期を上手に乗り切って、元気に夏を迎えるための養生法をお伝えします。

梅雨どきの様々な不定愁訴は最近注目の「気象病」の1つ

梅雨は春から夏に移行する時期で、雨の日や曇りの日が多くなる季節です。この時期には、何となく体がだるい、肩がこる、気分が落ち込むといった不定愁訴に悩む人が多くなります。

特に多い訴えは、めまい、頭痛、頭重感、だるさ、首や肩のこり、腰痛、関節痛、手足のしびれなどで、中には古傷が痛んだり、ぜん息などの持病が悪化したりするケースもあります。また、うつっぽくなる、やる気がわかない、イライラしやすいなど、メンタルにも不調が現れやすいものです。

最近注目されている「気象病」は、まだ医学的に確立したものではありませんが、気候や天気の変化が誘因となって起こる心身の不調の総称で、春先や秋口など気候変化の激しい季節の変わり目や、梅雨の時期、また台風が多い時期などに特に起こりやすいといわれています。梅雨どきの不調も、こうした気象病の1つといってよいでしょう。

気象の変化によるストレスが自律神経の乱れを引き起こす

本来、私たちの体には、暑さや寒さなど環境の変化に適応できるように内部環境を一定に保つ仕組みが備わっています。そのカギを握るのが、交感神経と副交感神経から成る自律神経です。梅雨どきの不調は、気圧、気温、湿度など気象の変化によって、この自律神経のバランスが崩れることが原因で引き起こされると考えられています。

梅雨の時期は日本列島では気圧が低く、湿度が高い状態が続きます。日によっては寒暖差も大きくなるため、1年で最も気象ストレスが多い時期です。加えて、日照時間の減少も影響します。太陽の光を浴びる時間がいつもより少なくなると、幸せホルモンと呼ばれている「セロトニン」や、睡眠を調節するホルモン「メラトニン」の分泌が減少し、気持ちが沈んだり、不眠が起こりやすくなったりします。雨で外に出る機会が減り、室内にこもりがちになるのも気分が下がる一因です。

東洋医学で考える不調の原因は過剰な湿気による “水分の滞り”

気象病は現代医学の中ではまだ新しい概念ですが、気候による体調の崩れを重要視してきたのが、東洋医学です。

東洋医学では気候の変化を「風邪ふうじゃ」、過剰な湿気を「湿邪しつじゃ」と呼び、梅雨どきの体調不良の大きな原因と考えています。風邪と湿邪が合わさると、全身の水の巡りが悪くなるとされ、これを「水滞すいたい」と呼んでいます。いわば、水分代謝の悪くなった状態です。

水滞になると、頭を締めつけられるような頭痛や頭重感、グルグル回るようなめまい、重だるい倦怠感、むくみ、気分の落ち込み、吐き気、胃もたれ、関節痛などの症状が出やすくなると考えられています。これらの症状は、まさに現代医学でいわれている気象病の症状とも合致します。

もともと水の巡りが悪い水滞体質の人は、梅雨どきは体質に気候が追い打ちをかけ、症状が強く現れます。また、なかなか治りにくく、症状を繰り返しやすいのが特徴です。

梅雨どきの不調の主な原因と考えられているのが、複合的な気象ストレスによる自律神経の乱れと、水分代謝の乱れ(湿邪)です。
この2つの乱れが梅雨入りから梅雨明けまで続くため、だるい、肩がこる、頭が重い、気分が落ち込む、眠れないなどの様々な不調が現れます。

いりたに内科クリニック院長
入谷栄一 いりたにえいいち
総合内科専門医、呼吸器専門医、アレルギー専門医。東京女子医科大学呼吸器内科非常勤講師。在宅診療や地域医療に力を入れる他、補完代替医療やハーブ、アロマに造詣が深く、全国各地で積極的に講演活動も行う。著書に『病気が消える習慣』、『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)など。当協会顧問。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第60号 2022年6月