2022.9.18

ガーデニングデザイン: はじめてのコンポストづくり

当協会理事

木村正典

収穫残渣や刈り取った草、落ち葉などの有機物は、土づくりにとって貴重な資源。ごみで出したりせずに、リサイクルして土づくり・植物栄養に利用しましょう。
今回は、はじめてのコンポストづくりを紹介します。

Question

  • ベランダでもコンポストは作れますか?
  • コンフリーがコンポストによいと聞いて育てていますが、なぜよいのでしょうか?
  • コンポストに生ごみを入れると臭くなりませんか?
  • コンポストはどうなると完成ですか? また、どうやって使ったらよいですか?

コンポストとは?

コンポスト(compost)とは堆肥の英名です。同じ意味ですが、原料によって、畜糞堆肥や腐葉土、バーク堆肥などの農林畜産廃棄物を積んだものを堆肥、剪定くずや刈り取った草、浄水場からの脱水ケーキ、生ごみ、家庭菜園での収穫残渣などの都市ごみを原料とする堆肥をコンポストと呼ぶ場合が多いです。いずれも、堆積しておくことで、有機物を微生物などによって分解(発酵)させて植物栄養を作り出します。

地球環境問題やSDGsがクローズアップされて、資源のリサイクルが求められる今日、有機物資源を再利用するコンポストはますます重要になっています。

生態系における位置づけ

植物は光合成をして有機物(炭素をもつ化合物)を作ります。動物は生きるためにこの植物を食べる、あるいは植物を食べた動物を食べます。微生物も植物や動物の糞や死骸(場合によっては生きている生物)などに寄生して栄養を摂取します。

生態学では植物を有機物の「生産者」、動物を「消費者」、土壌生物を「分解者」と呼びます。分解には、微生物のみならず、ダンゴムシやヤスデ、ミミズなどの土壌動物たちが大きく貢献しています。

このように自然界では落ち葉や動物の糞や死骸が土にかえって(分解者に分解されて)植物栄養になります。コンポストは、有機物資源をごみにすることなく、分解者によって植物栄養に変えることで、生態系の循環を維持する役割を担っています。

図1 生態系の概略図。生態系は、植物が光合成で有機物(Cをもつ化合物)を作り、動物が植物を食べて栄養・エネルギーとし、それらが最終的に微生物の栄養・エネルギー源となって分解されて植物に吸収されるという循環で成り立っている。コンポストは有機物が分解されて植物栄養になる生態系の循環の一部を担っている。

コンポストの原料

1.有機物

コンポストにする有機物には早く分解されるものと、時間のかかるものとがあります。これらが混在すると、時間のかかるものに引きずられて、なかなか堆肥にならない問題を生じます。従って、これらは分けてコンポスト化するのがおすすめです。

分解の早い有機物と遅い有機物、コンポストに入れないものを表にしました。分解の早い有機物とは、乾燥すると粉々になりやすい軟らかい葉やすでに粉状のもので、分解の遅い有機物とは、抗菌性の高い植物や、茎(枝)、太い根、常緑樹の葉などの硬いものです。入れたくないのは、殺菌力の強いものやpHを変えるものなど、微生物の繁殖を妨げるものです。

分解に時間のかかる有機物も、細かくすればするほど早く堆肥化できます。剪定枝も卵の殻もそのままコンポストにしてもいつまでも原形のままですので、できるだけ細かく、剪定枝なら10cm以下に細断、生ごみはみじん切り、卵の殻も細かく粉砕します。

図2 コンポストになるものとならないもの。コンポストになるものには、なりやすいものとなりにくいものがあるので、これらは分けてコンポスト化するか、なりにくいものを細かくして乾かしてからコンポスト化するのがおすすめ。ならないものに描かれている動物性のものも、乾燥させてできるだけ細かくすることでいずれは分解されて植物栄養になる。

加える有機物に水分が多すぎると嫌気性菌が発生して悪臭の元になります。生ごみなどはネットなどに入れて一晩乾かしてからコンポストに加えるようにしましょう。動物由来の生ごみは完全に乾燥させてから細かく砕くのが望ましいです。

コンフリーは葉が軟らかくて分解されやすいのでコンポストに向いており、液肥を作る人もいます。また、ステビアをコンポストにして与えると野菜や果物の品質がよくなるともいわれています。

2.有機物を分解する生物

EM菌やER菌、万田酵素などの市販の有用微生物資材を投入する場合もありますが、基本的には土壌中の微生物によって分解させます。従って、土を加えるのが一般的です。コンポストに用いる土は、微生物のいない赤玉土などでは意味がなく、微生物の豊富な畑の土や先に作ったコンポスト、広葉樹林の落ち葉の下の真っ黒い土などが望ましいです。独自に納豆やヨーグルト、キノコの石づき、菌床などを加える人もいます。おがくずは有用微生物の棲みついている有機物で、大変優秀なコンポスト資材です。

写真1 畑に作られた大きなコンポスト置き場。3連にすることで3つ目の枠に有機物を入れた時には、最初に入れた枠のコンポストが既に土として3つの枠に入れられる。

写真2 ふたつきの都市型のコンポスト置き場。雨の多い日本には向いている。

写真3 剪定枝で籠のように枠を作れば、より自然とつながる風景を演出できる。

コンポストを作ってみよう

場所を作る

畑の場合、一角に少し広い穴を掘って土を穴の周りに積み上げます。枠を作れる場合は杭を2本ずつ打って、そのすき間に板を何枚か入れて枠を作ります。スペースがある場合、枠は3つ作るのが理想です。剪定枝を利用して自然に溶け込むスタイルもよいでしょう。雨の多い日本ではふたつきがおすすめですが、雨の時だけシートをかけてもよいでしょう。

ベランダの場合、使っていない大きめのプランターや、米袋などの丈夫な紙袋、麻袋、フェルトのバッグ、市販されているベランダ向きのコンポストバッグなどを使います。「コンポスト ベランダ」でネット検索するといろいろなタイプの容器が出てきます。

コンポストを作る

土、有機物、土、有機物、土とサンドイッチ状に積み、有機物を加えた直後に常に土を被せておき、土壌中の微生物が四方から分解できるようにします。有用菌類がある場合は有機物にまんべんなく混ぜます。

コンポストを使う

コンポストは、加えた有機物の原形がほぼなくなり、切り替えしても(混ぜ直しても)熱が出なくなったら完成です。でき上がったコンポストは、直接畑に撒くことができます。
その他、さらに土と半々に混ぜることで、育苗用土やプランターなどの園芸培養土として使えます。

また、ボカシ肥の原料として最適ですので、土と半々に混ぜた上に、油かすや骨粉、草木灰などの粉状の有機物を加えて積んでおくことで有機質肥料として追肥などにも使えます。

コンポストが未熟な場合には、畑に投入すると畑で分解が進んで、熱やガスを出したり、酸素、窒素を奪ったりして植物の根を痛めてしまいます。完熟かどうか不安な時は、牛糞堆肥などを施与する時と同じ要領で、植えつけ1カ月前に投入するとか、深く埋める、遠巻きに施す、土と半々に混ぜてしばらく積んでおくなどします。

コンポストを作って有機物資源を循環させ、自然とつながるサステイナブルな暮らしを実践しましょう。

コンポストの状態チェックと対策

  • 白いカビが生える/分解が進んでいる証拠。不快であれば土をかける。
  • キノコが生える/キノコも菌類で分解者。不快であれば土をかける。
  • ハエがたかってウジが湧く/ハエは卵を産んでそれがウジ(幼虫)になり、ウジが有機物を分解する。不快であれば土をかけたり、ハエの侵入を防ぐためにふたをしたり、防虫ネットを張ったりする。
  • ゴキブリが出る/残念ながらゴキブリも分解者。不快であればゴキブリだけを退治するようにホウ酸団子などをしかけると同時に、ふたをするなどする。
  • くさい/くさい場合は、嫌気性菌による分解によってアンモニアガスなどの悪臭が出ている。水分の多いのが原因なので、よく撹拌した上で、水分の多い生ごみなどを入れないようにし、脱臭効果のあるコーヒーかすなどを加え、雨が入らない対策をとる。
  • 温度が上がらない/微生物による分解が不十分なので、微生物の豊富な土やおがくず、有用菌類などを加えて混ぜる。

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当協会理事
木村正典 きむらまさのり
(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK! プランター菜園のすべて』(NHK 出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第61号 2022年9月