2022.12.1
新型コロナウイルスに対するメディカルハーブやアロマセラピーの研究の状況
皆さん、こんにちは。今回は新型コロナウイルスに対するメディカルハーブやアロマセラピーの研究の状況についてお話したいと思います。
今年の1月に東京工科大学の佐藤拓己教授らの研究グループはローズマリー由来のカルノシン酸が新型コロナウイルスの感染を抑制する可能性を示す論文を発表しました。新型コロナウイルスは気管上皮細胞のACE2という膜タンパク質から細胞内に侵入しますが、カルノシン酸も同じようにACE2に結合するためウイルスの侵入を防ぎます。またカルノシン酸は重症化の際に起きるサイトカインストームの起点となる反応を抑制することも明らかになりました。とても期待がもてる研究ですが、ヒトを対象とした臨床応用にはまだまだ先の長い研究が必要です。
さてこの研究からわかることは複数の経路で多様な作用点に働きかけるという植物化学成分の機能性の特徴がみてとれます。またこうしたメカニズムであれば新型コロナウイルスの遺伝子の変異の影響を受けない利点があること、またカルノシン酸は強力な抗酸化成分であり脳への移行性をもつため新型コロナウイルスの後遺症の抑制にも期待がもてます。一方、いくつかの精油にも同様にACE2を阻害することや他のメカニズムで感染を抑制する可能性を示す報告が相次いでいます。
自然界ではハーブを取り巻く環境に細菌や真菌、ウイルスが混在します。植物化学成分の抗ウイルス作用はハーブ自身の生体防御システムのあらわれと考えてもよいかも知れません。コロナ禍が続く中で自然の仕組みに沿った研究の行くすえに期待したいと思います。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第62号 2022年12月