ラズベリーの植物学と栽培
今回は、ラズベリーの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。
分類・名称
分類
ラズベリーは、広義にはバラ科(Rosaceae)キイチゴ属(ルブス属;Rubus)植物の総称です。
また、中義にはラズベリー類とブラックラズベリー類、デューベリー類といった、16世紀に英国で栽培の始まった種を中心にした、果樹として商業的に流通している園芸種の総称であり、それらの分類については表1に示しました。
狭義にはそのうちのラズベリー類を指し、最狭義にはRubus idaeus L.を指します。
World Flora Onlineには、バラ科に191属(24の属間雑種属を含む)がアプセクトされています。かつてのThe Plant Listによると、バラ科にアクセプトされている4,828種のうち、キイチゴ属だけで1,494種あり、バラ科の3割がキイチゴ属という多さです。
そのうち、日本に自生するキイチゴ属は40種とも言われており、その主なものを表2に示しました。
ここでは以下、単にラズベリーというときは、最狭義のRubus idaeus L.を指します。
名称
ラズベリーリーフという名称は植物名ではなく、マルベリーリーフやエルダーフラワー、ローズヒップ、コリアンダーシードなどと同じように、植物名と部位との合成語です。
ラズベリーの学名Rubus idaeus L.はリンネ(1707-1778)が命名しました。
属名のRubusはキイチゴや野バラを意味するインド・ヨーロッパ祖語を語源とし、「引き裂く」を意味するreub-に由来する説が有力ですが、「赤」を意味するラテン語のruberから派生したという説もあります。
種小名のidaeusは「Mt. Ida(イダ山)の」を意味します。クレタ島とトローアス(現トルコのアナトリア半島)の2か所に同名のMt. Idaがあり、どちらもギリシャ神話で神聖な女神の山とされています。
ディオスコリデス(40頃-90頃)はイダ山の植物について記載しており、ラズベリーの記載は見当たらないものの、リンネはディオスコリデスの情報に基づいて命名したと言われています。
大プリニウス(23-79)はギリシャ人がラズベリーを「Idaeus rubus」と呼んでいることを記しています。なお、テオフラストス(B.C.371-287)はイダ山にラズベリー類の存在を記していません。
これらのイダ山はトローアスのイダ山と思われます。一方で、ギリシャ神話には、ゼウスが幼少期にクレタ島でニンフのイダに育てられた際、ゼウスのためにラズベリーを集めていたイダが刺で胸を刺してしまい、イダの血が白いベリーを永遠に赤く染めたという伝説があります。
英名はraspberryで、「甘いバラ色のワイン」を意味するraspiseと、多汁質な小果を指すberryとの合成語です。
このほか、特にブラックベリーを指してbrambleとも言います。brambleはゲルマン祖語でこの植物を意味するbrem-を語源とし、ブラックベリーのドイツ語であるBrombeereやオランダ語のbraamの語源にもなっています。
仏名はframboise(フランボワーズ)で、ドイツ語のBrombeereの最初のbがfに変わって誕生したとされています。和名はキイチゴで、木本性のイチゴを意味します。
人とのかかわりの歴史
広義のラズベリーは、古代遺跡からも出土し、氷河期直後から食料源であったことが推察されています。
ヒポクラテス(B.C.460頃-370頃)はブラックベリーの茎葉を白ワインに漬けて、傷口などの収斂に推奨しました。
ディオスコリデス(40頃-90頃)は茎の煎剤を髪染めや腹痛予防、女性の健康、口内炎、痔、蛇咬傷などに用いるとしています。
カルペパー(1616-54)はブラックベリーの果実を粘膜疾患に、葉を灰汁で煮て頭皮トラブルや髪を黒く染めるのに、葉の粉を潰瘍に外用し、葉と果実、乾燥枝の煎剤を月経過多改善に、花や未熟果を下痢や吐血に、根の煎剤を結石に内服するとしています。
カニンガム(1956-93)はラズベリーの魔法の使い方として、愛情を引き出すために食卓に出し、妊婦は陣痛や分娩の痛みを和らげるために葉を持ち歩くとしています。
アーユルヴェーダでは、キイチゴ属植物の葉と樹皮を収斂性利尿剤に、葉を胃炎や出産、更年期障害に用います。現在ではインド自生種よりも入手しやすい欧州系のキイチゴ類を使用しています。
中薬では数多くのキイチゴ属植物が利用されており、『中薬大辞典』(1988)に掲載されているものを表2に示しました。
豪州ではアボリジナルがキイチゴ属植物の葉の煎剤を下痢や生理痛、つわり、出産、風邪に用います。
ハワイでは在来種のハワイアンラズベリーの茎をふけや胃炎に用います。
北米西部のアメリカンインディアンはサーモンベリーやシンブルベリー、ホワイトバークラズベリーなどの葉や樹皮を傷や火傷、虫歯に外用し、樹皮を海水で煎じて陣痛に内服します。
そのほか、多くのキイチゴ属植物が各地の民間療法で、月経緩和や妊娠中の女性の諸問題に用いられています。近年では、果実の抗酸化作用などが明らかになっており、ガン細胞増殖阻害などの研究が進んでいます。
キイチゴ属植物は世界各地に自生して太古の昔から用いられてきましたが、栽培されるようになるのは16世紀以降のことであり、果樹として生産利用される種類も限られています。最も早く16世紀に英国で栽培が始まったのはラズベリーです。
その後米国に導入されますが、うまく生育せず、米国で独自に自生種が改良、栽培化され、1865年‘カスバート’が作出されて以降、急速に発展しました。ラズベリー類は現在ではレッドラズベリー、ブラックラズベリー、パープルラズベリーに大別されます。現在、ラズベリー類の生産は、ロシア、メキシコ、ポーランド、セルビア、米国で盛んです。
さらに、デューベリーやブラックベリーなどの交雑種が米国で大きく発展しました。そして、これらを親とする、ロンガンベリーやボイセンベリーなど、大型果実の優良交雑種が誕生し、現在主流になりつつあります。
日本では、『延喜式』(927)に「覆盆子」と記載され、儀式用に宮廷内で栽培されていたことが記されています。室町時代までは果物として利用されていた記録がありますが、江戸時代には果実としての記載がなく、多くの自生種がありながら、果樹として栽培化されることはありませんでした。
その後、明治維新で、多くの果樹ととともにラズベリー14品種とブラックベリー5品種が導入されますが、定着せず、戦後の高度経済成長期になって改めて導入試験が行われ、それ以降、果樹として栽培されるようになりました。しかし、流通量は少なく、家庭果樹などでの発展が期待されます。また、表2に示すように、日本各地に数多くのキイチゴ属植物が自生していますので、それぞれの地域で、ご当地ラズベリーとしての利用や地域振興も期待されます。
形態・成分
キイチゴ属植物の形態についてみると、そのほとんどが低木で、落葉と常緑があり、ラズベリーは落葉です。茎には刺のあるものが多く、直立するものとつる性のもの、ほふく性のものがあり、ラズベリーは直立します。
葉は互生し、単葉もしくは3出複葉、小葉数5、7、9枚の奇数羽状複葉であり、単葉のものには丸葉から、モミジの様に5深裂するものなど、さまざまな形が見られます。ラズベリーは小葉3もしくは5枚の複葉です。
花は単生もしくは集散、円錐状、総状などの花序を形成し、ラズベリーは総状花序に2~3個の花をつけます。花弁、萼片ともに5枚が基本で小さな白花のものが多く、ラズベリーも同様ですが、中には桃色花や八重咲など、ローズの様に観賞するものもあります。
花の中央部には雌蕊が多数集まり、その周囲を雄蕊が取り囲んでいます。果実は雌蕊しか持たない不完全果の集まった集合果です。個々の果実は子房のみの肥大した真果で、多汁な液果となり、内部に種子を含有します。
ブラックベリー類やデューベリー類では、集合果(真果の集まり)は中心部の果托(果床)に付着しており、食べる時も果托ごと食べますが、ラズベリー類では果托が発達せず、収穫時には花托から分離しますので、集合果の内部が空洞になります(写真)。
果実は熟すと赤色もしくは黒色になるものが多く、白や黄、橙、濃青、紫などのものもあります。ラズベリーは赤色ですが、ラズベリー類には熟すと黒色になるブラックラズベリーや紫色のパープルラズベリーなどもあり、レッドラズベリーには、白や黄色の品種もあります。
ラズベリーの葉には、エラグ酸やp-クマル酸、カフェ酸などのフェノール酸含量が特に高く、ほかにもケルセチン-3- O-グルコシル-6’-アセテートとケルセチン-3- O-グルクロニドのケルセチン誘導体などが多く含まれています。
ラズベリーの果実の色はアントシアニンによるもので、エラグ酸とともに抗酸化作用があります。果実の香り成分はラズベリーケトンで、脂肪燃焼効果が期待されるとともに、育毛剤にも用いられています。
性状と栽培
キイチゴ属は熱帯から寒帯まで分布していますので、それぞれの気候に合った種類を選んで育てるとよいでしょう。
キイチゴ属植物の果実安定生産寿命は10年程度と言われています。それまでに殖やして世代交代の準備をしておきましょう。
繁殖方法としては、ラズベリーやブラックベリーでは根元からひこばえが発生しますので、株分けします。ラズベリーやデューベリーでは取木も簡単で、夏に枝先10cmを垂直に地中に埋め、発根したら切断します。
ブラックベリーやデューベリーでは根挿しも可能で、直径1cm程度の太い根を10~20cmに切り、水平に地面に埋めると芽吹きだします。挿し木も可能で、その年に伸びた枝で、節(芽のあるところ)を3つ以上確保して切り、1芽分を土に入るように挿し、乾かないように管理します。
自家採種して種まきも可能ですが、親と違う形質になってしまう可能性が高いので、育種目的以外では行いません。
ちなみに、発芽には休眠があるため、種子を湿らせたまま、5℃前後の低温に3~4か月置いて休眠を打破する必要があります。
果実は基本的に、2年目の枝から出た新梢の先端に着きます。果実を着けるとその枝は枯死しますので、その枝は毎年、地際で剪定して更新します。
着果しなかった枝は、ラズベリーとブラックベリーでは4~5本、デューベリーで10~15本、太い枝を残し、そのほかは地際で剪定します。残す枝も、長さ1.5mくらいで切り戻し剪定します。側枝が伸びている場合は、側枝を20~30cmで切り戻し剪定します。剪定は毎年冬に行います。
ラズベリー(左)とブラックベリー(右)の果実の断面。ブラックベリーには果托が存在するが、ラズベリーに果托はなく空洞になっている。
表1.ラズベリー(Rubus)の園芸分類
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
狭義のラズベリー
ラズベリー類
最狭義のラズベリー
主な種 Rubus idaeus L.
特徴
茎:直立
果托:乾燥硬質
果実:熟すと果托から簡単に離脱
果実内:中空、帽子状。このため果実が崩れやすい。キャップ、覆盆などとも呼ばれる。
歴史:16世紀に英国で栽培。米国では独自に発展
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
狭義のラズベリー
ラズベリー類
その他のラズベリー類
レッドラズベリー系
主な種 R. idaeus ssp. strigosus (Michx.) Focke
特徴
茎:直立
果托:乾燥硬質
果実:熟すと果托から簡単に離脱
果実内:中空、帽子状。このため果実が崩れやすい。キャップ、覆盆などとも呼ばれる。
歴史:16世紀に英国で栽培。米国では独自に発展
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
狭義のラズベリー
ラズベリー類
その他のラズベリー類
ブラックラズベリー系
主な種 R. occidentalis L.
特徴
茎:直立
果托:乾燥硬質
果実:熟すと果托から簡単に離脱
果実内:中空、帽子状。このため果実が崩れやすい。キャップ、覆盆などとも呼ばれる。
歴史:16世紀に英国で栽培。米国では独自に発展
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
狭義のラズベリー
ラズベリー類
その他のラズベリー類
パープルラズベリー系
主な種 R. × neglectus Peck
特徴
茎:直立
果托:乾燥硬質
果実:熟すと果托から簡単に離脱
果実内:中空、帽子状。このため果実が崩れやすい。キャップ、覆盆などとも呼ばれる。
歴史:16世紀に英国で栽培。米国では独自に発展
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
その他のラズベリー
ブラックベリー類
ハイブッシュ系
主な種 R. allegheniensis Porter
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:直立またはつる性
花序:散房または総状
開花:基部から先端に向かう
歴史:19世紀に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
その他のラズベリー
ブラックベリー類
有葉花軸系
主な種 R. argutus Link
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:直立またはつる性
花序:散房または総状
開花:基部から先端に向かう
歴史:19世紀に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
その他のラズベリー
ブラックベリー類
切れ葉系
主な種 R. laciniatus Willd.
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:直立またはつる性
花序:散房または総状
開花:基部から先端に向かう
歴史:19世紀に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
北方系
主な種 R. flagellaris Willd.
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:ほふく性で下垂しやすい
花序:集散
開花:中心部から周囲に向かう
歴史:19世紀後半に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
南方系
主な種 R. trivialis Michx.
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:ほふく性で下垂しやすい
花序:集散
開花:中心部から周囲に向かう
歴史:19世紀後半に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
広義のラズベリー=キイチゴ属(Rubus) 植物
中義のラズベリー
西方系
主な種 R. vitifolius Cham. & Schltdl.
特徴
果托:柔軟な肉質で果 実に密着
果実:熟すと果托と一体になって果盤から離脱
果実内:果托で塞がれている。このため崩れない
茎:ほふく性で下垂しやすい
花序:集散
開花:中心部から周囲に向かう
歴史:19世紀後半に米国で改良
ラズベリーの園芸分類
その他のRubus属植物
主な種
野生のものは野イチゴと呼ばれ、日本にも各地に多くの野イチゴが自生。薬用種や観賞用種もある
表2.主なRubus属植物 学名はWorld Flora Onlineに従った
学名 ・ (よく用いられるシノニム) ・ 学名のラテン語読み ・ [種小名の意味] ・ 一般名 ・ 原産 ・ 特徴の順に記載。掲載はブロックごとのアルファベット順。
ラズベリー
学名 Rubus idaeus L.
学名のラテン語読み ルブス・イダエウス
[種小名の意味] [イダ山の]
一般名 ラズベリー(raspberry)、レッドラズベリー、フランボワーズ(framboise)、ヨーロッパキイチゴ(欧羅巴木苺), European raspberry, American raspberry, red raspberry, wild raspberry
原産・特徴
トルコ原産。落葉低木。樹高1~2m。茎には赤い剛毛が密生。葉は3出複葉もしくは小葉5枚の奇数羽状複葉。花は径1~3cmで白色~淡桃色。果実は赤熟するほか、黄色や白色品種もある。16世紀に初めてイギリスで栽培されて以降、欧州での主力種。北米では耐寒性が低いので西海岸の一部でのみ栽培される。繁殖は株分け。‘Cuthbert’や‘Antwerp’、‘Superlative’などの品種がある。
ラズベリー
学名 Rubus × neglectus Peck
学名のラテン語読み ルブス・ネグレクトゥス
[種小名の意味] [顕著でない、見逃しやすい]
一般名 パープルラズベリー, purple raspberry, purple-cane raspberry
原産・特徴
ラズベリー類のパープルラズベリー系統の原種。北米東部原産。Rubus occidentalis L.とRubus idaeus subsp. strigosus (Michx.) Fockeの自然交雑種と考えられている。落葉低木。茎と果実が紫色を呈する。葉は3出複葉もしくは奇数羽状複葉。北米系のパープルラズベリーの品種親として利用される。
ラズベリー
学名 Rubus occidentalis L.
学名のラテン語読み ルブス・オッキデンタリス
[種小名の意味] [西部の]
一般名 ブラックラズベリー、クロミキイチゴ(黒実木苺), black raspberry, black cap, bear’s eye blackberry, scotch cap, black cap raspberry
原産・特徴
ラズベリー類のブラックラズベリー系統の原種。北米北東部原産。落葉低木。樹高2~3m。葉は奇数羽状複葉で小葉は5枚。ただし花序内の葉の小葉は3枚。花は白色。果実は黒熟し、上向きに着き、食用になる。主産地は米国オレゴン州ウィラメットバレーで主力品種は‘Munger’。 ほかにも’Allen’, ‘Blackhawk’, ‘Jewel’, ‘John Robertson’, ‘Macblack’など多くの品種がある。本種はレッドラズベリーやパープルラズベリー類などの交配親としても重要。
ラズベリー
学名 Rubus odoratus L.
学名のラテン語読み ルブス・オドラトゥス
[種小名の意味] [芳香のある]
一般名 purple-flowered raspberry, flowering raspberry, Virginia raspberry, thimbleberry
原産・特徴
北米東部原産。落葉低木。樹高2~3m。棘はない。強勢で吸枝も多い。葉は単葉で3~5裂する。花は桃~濃桃色で白花品種もあり、径5~6cmと大きく、芳香があり、夏に開花。果実は赤熟し、加工して食用に。主として花木として観賞に供される。
ラズベリー
学名 Rubus spectabilis Pursh
学名のラテン語読み ルブス・スペクタビリス
[種小名の意味] [美しい、明瞭な]
一般名 サーモンベリー、salmonberry
原産・特徴
北米西部(アラスカ~カリフォルニア)原産。落葉低木。樹高1~4m。葉は3出複葉。花は径2~3cmで花弁はハマナスの様な鮮やかなピンク色で先端が尖る。観賞植物として利用される。果実は赤熟し、熟す途中は黄金色。果実は生食、加工、ワインなどで食用に。アメリカンインディアンは新芽を食用や薬用にするほか、果実や新芽を伝統的にサーモンなどの魚と一緒に食べたり、葉を魚と一緒に似て風味付けしたり、葉を噛んで唾を火傷治療に用いたり、樹皮を海水で煎じて火傷などの傷に用いたりする。
ブラックベリー
学名 Rubus allegheniensis Porter
学名のラテン語読み ルブス・アッレゲニエンシス
[種小名の意味] [北米アレゲニーの]
一般名 ブラックベリー, ハイブッシュラズベリー, high-bush blackberry, mountain blackberyy, sow-teat blackberry
原産・特徴
ブラックベリー類のうちのハイブッシュラズベリー系統。米国中部~北東部原産。落葉低木。ブラックベリー類の代表種で、さまざまなブラックベリー品種の親植物。花序が長く果実も長い長花軸性品種(‘Ancient Briton’や‘Taylor’、‘Iceberg’(アルビノ品種)など)と花序が短く果実の丸い短花軸性品種(‘Agawam’)とがある。
ブラックベリー
学名 Rubus argutus Link
学名のラテン語読み ルブス・アルグトゥス
[種小名の意味] [鋸歯の、尖った]
一般名 ブラックベリー, leafy-cluster blackberry
原産・特徴
ブラックベリー類のうちの有葉花軸種系統。北米中部~東部原産。落葉低木。花序に葉を混生する。花弁は白色。短花軸性で果実はやや円筒形。Rubus allegheniensis Porterよりも古くから利用されているものの園芸品種は少ない。‘Dorchester’や‘Early Harvest’などの品種がある。
ブラックベリー
学名 Rubus armeniacus Focke
学名のラテン語読み ルブス・アルメニアクス
[種小名の意味] [アルメニアの]
一般名 アルメニアンブラックベリー、ヒマラヤンブラックベリー、セイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺)、Himalayan blackberry, Armenian blackberry
原産・特徴
欧州系ブラックベリーの一つ。アルメニア~イラン北部原産。Rubus procerus P.J.Müll. ex Boulayなどとの混同が見られる。樹高4m。葉は掌状複葉で小葉は3枚か5枚。花は径2.5cmで白~淡桃色。果実は黒熟する。1835年に欧州に、1885年に北米と豪州に導入される。ドイツでは導入者のTheodor Reimersの名で普及。北米にはカリフォルニアのBurbankがHimarayaと呼んでインドから種子を導入。
ブラックベリー
学名 Rubus frondosus Bigelow
学名のラテン語読み ルブス・フロンドスス
[種小名の意味] [葉面の広い]
一般名 leafy flowed blackberry
原産・特徴
北米中部~東部原産。半つる性落葉低木。北米ブラックベリー品種の交配親。
ブラックベリー
学名 Rubus fruticosus L.
学名のラテン語読み ルブス・フルティコスス
[種小名の意味] [低木状の、灌木の]
一般名 ブラックベリー、セイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺), European blackberry, bramble
原産・特徴
World Flora Onlineでは未チェック学名。Rubus plicatus Weihe & Neesのシノニムとする見解もある。欧州系ブラックベリーの総称的に用いられ、近年多くの種が新たに認められており、この種がどの植物を指すのかはっきりしない。温帯欧州原産。落葉低木。果実は生食のほか、ジャムやワインなどに供されてきた。
ブラックベリー
学名 Rubus laciniatus Willd.
学名のラテン語読み ルブス・ラキニアトゥス
[種小名の意味] [細く分裂した]
一般名 キレハブラックベリー、セイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺), cut-leaved blackberry, evergreen blackberry, parsely-leaved blackberry, European blackberry, Oregon evergreen blackberry
原産・特徴
ブラックベリー類のうちの切れ葉種系統。欧州原産。太平洋諸国に帰化して自生し食用に。大西洋沿岸では観賞用。暖地で常緑、寒冷地で落葉の半常緑。葉はパセリに似て3個の小葉に数個の深い欠刻を有する。果実が小さくて品質が一定しないため商業生産に向かず、育種素材として利用される。重要品種に‘Oregon Evergreen’や‘Thornless Evergreen’、‘Himalaya’などがある。
ブラックベリー
学名 Rubus loganobaccus L.H.Bailey
学名のラテン語読み ルブス・ロガノバックス
[種小名の意味] [ローガン液果(ベリー)の]
一般名 ローガンベリー、Loganberry
原産・特徴
北米系ブラックベリー。Rubus ursinus Cham. & Schltdl.とRubus idaeus L.の交雑種と考えられている。1881年に米国カリフォルニア州サンタクルーズの判事でもあったLogan氏によって育成される。学名、英名は育成者名に由来。その後爆発的に生産され、英、豪にも広がる。ボイセンベリーやヤングベリーなどの改良種作出の契機となる。花は白色。果実は長円錐形で大きく、黒熟し、酸味があるがラズベリー風の風味があって食用に。ラズベリーとの交雑種だが、果実が果托から脱落しにくいためブラックベリーに分類される。棘なし品種もある。
ブラックベリー
学名 Rubus plicatus Weihe & Nees
学名のラテン語読み ルブス・プリカトゥス
[種小名の意味] [扇だたみの]
一般名 ブラックベリー、セイヨウヤブイチゴ(西洋藪苺), European blackberry, bramble
原産・特徴
欧州系ブラックベリーの総称的に用いられる。Rubus fruticosus L.(World Flora Onlineでは未チェック学名)は本学名のシノニムとの見解もある。温帯欧州原産。落葉低木。果実は生食のほか、ジャムやワインなどに供されてきた。
ブラックベリー
学名 Rubus procerus P.J.Müll. ex Boulay
学名のラテン語読み ルブス・プロケルス
[種小名の意味] [背の高い]
一般名 Himalayan giant blackberry,
原産・特徴
欧州原産。半つる性落葉低木。樹高3m。Rubus armeniacus Fockeとの混同がある。花は白色。果実は黒熟。
デューベリー
学名 Rubus caesius L.
学名のラテン語読み ルブス・カエシウス
[種小名の意味] [青みを帯びた灰色の]
一般名 ヨーロピアンデューベリー、オオナワシロイチゴ(大縄白苺)、European dewberry
原産・特徴
欧州原産。落葉低木。花は白色。果実は青紫色。葉は茶の代用とされた。ヤングベリー(‘Youngberry’)は、20世紀初頭に米国ルイジアナ州のB.M.Youngによって作出された品種で、ラズベリーとブラックベリーの交配品種に本種を花粉親として交配した三元雑種。
デューベリー
学名 Rubus canadensis L.
学名のラテン語読み ルブス・カナデンシス
[種小名の意味] [カナダの]
一般名 American dewberry, thornless blackberry
原産・特徴
北米中部~東部原産。半つる性低木。棘がほとんどない。棘無しブラックベリー品種ではない。花は白色。果実は黒熟し酸味が強い。
デューベリー
学名 Rubus flagellaris Willd.
学名のラテン語読み ルブス・フラゲッラリス
[種小名の意味] [匍匐枝の]
一般名 デューベリー, American dewberry, common dewberry, northern dewberry
原産・特徴
米国北東部原産。デューベリーの原種で最も重要な種。1811年に英国でも栽培される。茎に湾曲した弱い棘が散生。葉は3~5の小葉からなり、向軸面に粗毛、背軸面に軟毛を有する。花は白色で、単生もしくは集散花序に2~4花。果実は丸く黒熟する。乾燥地に適する。‘Lucretia’などの品種がある。
デューベリー
学名 Rubus trivialis Michx.
学名のラテン語読み ルブス・トゥリウィアリス
[種小名の意味] [普通の、どこにでも見られる]
一般名 southern dewberry
原産・特徴
デューベリーの南方種系の原種。米国南部原産。常緑低木。茎や葉柄、花柄に扁平で短い鉤状の棘を持つ。花は白色。花序には1~3花が着く。果実は黒熟し食用に。園芸品種に‘Manatee’などがある。
デューベリー
学名 Rubus ursinus Cham. & Schltdl.
学名のラテン語読み ルブス・ウルシヌス
[種小名の意味] [熊の]
一般名 California blackberry, California dewberry, Douglas berry, pacific blackberry, pacific dewberry, trailing blackberry カリフォルニアデューベリー、カリフォルニアブラックベリー、
原産・特徴
北米のデューベリー類。北米西部原産。落葉~半常緑低木。樹高1.5m。雌雄異株。葉は単葉~3または5出複葉。花は白色。果実は暗赤熟~黒熟し食用に。本種とラズベリーとの交配でローガンベリーが作られ、1930年以降、ローガンベリーとデューベリーとの交配でボイセンベリーやヤングベリー、マリオンベリーなどが作られる。‘Auphinbaugh’などの品種がある。アメリカンインディアンはドライフルーツや薬用に。
デューベリー
学名 Rubus vitifolius Cham. & Schltdl.
学名のラテン語読み ルブス・ウィティフォリウス
[種小名の意味] [Vitis(ブドウ属)の様な葉の]
一般名 pacific dewberry, California dewberry, western dewberry
原産・特徴
デューベリーの西方種系の原種。北米太平洋岸原産。湿地に自生。常緑低木。茎は有毛で棘がある。葉は単葉で浅く5裂のほか変異も大きい。雌雄異花。花弁は雄花の方が長い。果実は黒熟し生食用に栽培される。
交雑種
学名 Rubus × fraseri Rehder
学名のラテン語読み ルブス・フラセリ
[種小名の意味] [英国の育種家Fraserへの献名]
特徴
Rubus parviflorus Nutt.とRubus odoratus L.の交雑種。1918年に作出される。落葉低木。樹高2.5m。強勢で吸枝も多い。葉は掌状。花は大輪で芳香があり、薄桃色で萎む時に青紫色に変化。夏に開花。日陰のカバープランツとして植栽される。果実は食用になる。
交雑種
学名 Rubus idaeus L. × Rubus ursinus Cham. & Schltdl.
一般名 ボイセンベリー、ボイズンベリーBoysenberry
特徴
1920年代に、米国カリフォルニア州でRudolph Boysenによって作出された品種。Rubus idaeus L. と Rubus ursinus Cham. & Schltdl.‘Aughinbaugh’、ローガンベリー、ブラックベリー、ガーデンデューベリーなどが交配に関与しているとされている。営利栽培はWalter Knottによって行われ、1932年に‘Boysenberry’と名付けて販売を開始、爆発的ヒットでナッツベリーファームが誕生した。
北米原産種
学名 Rubus hawaiensis A.Gray
学名のラテン語読み ルブス・ハワイエンシス
[種小名の意味] [ハワイの]
一般名 アーカラ, ハワイアンラズベリー, ʻĀkal, Hawaiian raspberry
原産・特徴
ハワイ固有種。カウアイ島、モロカイ島、マウイ島、オアフ島、ハワイ島の標高 600 ~ 3,070 mに自生。落葉低木。樹高1.5~4m。葉は3出複葉。花は径3cmでピンク色でサーモンベリーに似る。果実は黄、赤、紫色が見られる。果実は生食のほかジャムなどに加工、カパ布の染料にも用いられる。伝統的に、乾燥した茎とScaevola spp.の灰をふけに、茎と熟したパパイヤの灰は胸やけや嘔吐に用いる。
北米原産種
学名 Rubus parviflorus Nutt.
学名のラテン語読み ルブス・パルウィフロルス
[種小名の意味] [小型の花の]
一般名 シンブルベリー, thimbleberry, redcaps
原産・特徴
北米西部原産。アラスカ南部~メキシコ、五大湖周辺にも自生。落葉低木。樹高1.2~2.4m。棘はない。葉は単葉で掌状。花は白色で、径6cmにもなり、キイチゴ属中最大であり、種小名の「小型の花の」は適切でない。果実は赤熟し、胎座が分離して指サックのようになり、英名の由来に。果実は生食のほか砂糖を使わないジャムなどに用いられる。生果は柔らかすぎるため流通しない。アメリカンインディアンは、伝統的に、葉や根の煎剤を傷、火傷、吹き出物、消化器疾患などの治療に、茎の煎剤を利尿剤として用いている。芳香のある花や桃色花などの観賞用品種もある。
アジア原産種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus eustephanus var. coronarius Koidz. (Rubus tokin-ibara (H.Hara) Naruh.)
[種小名の意味] [台湾の・花冠のような、副花冠のある]
一般名 トキンイバラ(頭襟茨、兜巾茨)、トキンバラ(頭襟薔薇、兜巾薔薇)、キクイバラ(菊茨)、エドイバラ(江戸茨)、ボタンイバラ(牡丹茨)、スズカケイバラ(鈴掛茨)
原産・特徴
学名は定まっていない。古くはRubus commersonii Poir.やRubus coronarius Sweetと考えられていたため、現学名のRubus rosifolius Sm.とするものがあるが別種とされる。中国原産。日本には宝永年間(1704~10)に渡来。落葉低木。地下茎から吸枝を出して容易に繁殖。葉は奇数羽状複葉で小葉は3~5枚。花は白色、径5~6cmの大輪八重でバラに似る。5月に開花。江戸時代からバラとして観賞される。八重のため不稔で果実はできない。和名は花が山伏のおでこの上につける頭襟(ときん)に似ることによる。
アジア原産種
学名 Rubus formosensis Kuntze
学名のラテン語読み ルブス・フォルモセンシス
[種小名の意味] [台湾の]
一般名 Formosan bramble, Formosan raspberry
原産・特徴
台湾原産。常緑低木。樹高1.2~1.8m。棘はない。葉は単葉で3~7に浅裂。花は白色。果実は橙~赤く熟す。
アジア原産種
学名 Rubus kawakamii Hayata
学名のラテン語読み ルブス・カワカミイ
[種小名の意味] [植物学者川上瀧彌への献名]
一般名 タカサゴクワノハイチゴ(高砂桑の葉苺)
原産・特徴
台湾原産。低木。樹高1.5m。葉は単葉。花は径1~1.5cmで白色。果実は赤熟。
アジア原産種
学名 Rubus moluccanus L.
学名のラテン語読み ルブス・モルッカヌス
[種小名の意味] [インドネシアモルッカ諸島の]
一般名 ナンヨウキイチゴ(南洋木苺), Molucca bramble, broad-leaf bramble
原産・特徴
インド~豪州東部マレーシア原産。本学名はWorld Flora Onlineでは未チェック状態。常緑つる性低木。花は赤~白色。果実は赤熟して伝統的に薬用や食用に。
日本自生種
学名 Rubus amamianus Hatus. & Ohwi
学名のラテン語読み ルブス・アマミアヌス
[種小名の意味] [奄美大島の]
一般名 アマミフユイチゴ(奄美冬苺)
原産・特徴
奄美大島、徳之島原産。匍匐性常緑低木。葉は単葉で丸く、向軸面の葉脈の各主脈の中央付近に棘がる。花は径2~2.5cmで白色。八重咲品種もある。
日本自生種
学名 Rubus arcticus L.
学名のラテン語読み ルブス・アルクティクス
[種小名の意味] [北極の]
一般名 チシマイチゴ(千島苺), arctic bramble, nectarberry
原産・特徴
欧州~北アジア原産。日本では千島列島と夕張山系の高山に自生し、絶滅危惧種。落葉小低木。樹高5~25cm。花弁はハマナス色。果実は丸く赤色。ラズベリー品種の交配親として利用。北欧ではラズベリーリーフティーで利用。
日本自生種
学名 Rubus boninensis Koidz.
学名のラテン語読み ルブス・ボニンエンシス
[種小名の意味] [小笠原の]
一般名 イオウトウキイチゴ(硫黄島木苺)、オガサワラカジイチゴ(小笠原梶苺)
原産・特徴
小笠原諸島原産。落葉低木。樹高2m。葉は単葉、無毛で浅裂。花は径2.5cmで白色、4~5月に開花。果実は赤熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus chamaemorus L.
学名のラテン語読み ルブス・カマエモルス
[種小名の意味] [土の上の桑の]
一般名 ホロムイチゴ(幌向苺), クラウドベリー、cloudberry, yellowberry
原産・特徴
欧州~アジア北部原産。日本では北海道、千島と本州北部の冷涼な山間部の湿地帯に自生。和名は北海道岩見沢市幌向で発見されたことに由来。草本に近い落葉低木。樹高10~25cm。雌雄異株。地下茎で匍匐する。葉は単葉、掌状で5~7裂。花は白色で1枝に1花。果実は黄~赤色で大きく、食用に。果実は生食のほか、ジャムや飲料に加工され、エスキモーはビタミンC源として保存食に。ラズベリー品種の交配親として利用。
日本自生種
学名 Rubus crataegifolius Bunge
学名のラテン語読み ルブス・クラタエギフォリウス
[種小名の意味] [サンザシ属に似た葉の]
一般名 クマイチゴ(熊苺)
原産・特徴
日本、朝鮮、中国原産。日本各地の原野や産地に自生。落葉低木。クマイチゴはクマが果実を食べる、あるいはクマの様に強靭な植物から。茎は黒っぽく、草丈が高い。花は白色。果実は赤熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus croceacanthus H.Lév.
学名のラテン語読み ルブス・クロケアカントゥス
[種小名の意味] [サフラン色の棘の]
一般名 オオバライチゴ(大薔薇苺) 、キシュウバライチゴ(紀州薔薇苺)
原産・特徴
日本、朝鮮原産。日本では房総、伊豆ー山陽ライン以南~沖縄に自生。近縁のリュウキュウバライチゴは別種。落葉低木。樹高1~1.5m。葉は奇数羽状複葉で小葉は3~7枚。花は径2.5cmで白色。果実は赤熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus grayanus Maxim.
学名のラテン語読み ルブス・
[種小名の意味] [米の分類学者A. Grayへの献名]
一般名 リュウキュウイチゴ(琉球苺)、シマアワイチゴ、トゲリュウキュウイチゴ、ツクシアワイチゴ
原産・特徴
日本原産。南西諸島に自生。落葉低木。樹高1~2m。無毛で刺はまれにつける。葉は単葉。花は径3cmで白色。3~4月に下向きに咲く。果実は橙黄色に熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus hakonensis Franch. & Sav.
学名のラテン語読み ルブス・ハコネンシス
[種小名の意味] [箱根の]
一般名 ミヤマフユイチゴ(深山冬苺)
原産・特徴
日本原産。本州の関東以西、四国、九州に自生。つる性常緑低木。樹高30cm。葉は単葉で3~5に浅裂。花は径1.5cmで白色、花弁は萼片より小さい。8~10月に開花。果実は赤熟し食用に。フユイチゴに似るが、ミヤマイチゴは葉の先が尖り、萼が無毛で、花弁が萼片より小さい点で見分けられる。
日本自生種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus idaeus subsp. melanolasius (Dieck) Focke (シノニム;Rubus komarovii Nakai)
学名のラテン語読み ルブス・イダエウス・メラノラシウス
[種小名の意味] [イダ山の・黒色軟毛のある]
一般名 エゾイチゴ(蝦夷苺)、ウラジロエゾイチゴ (裏白蝦夷苺)、カラフトイチゴ(樺太苺) 、オオミヤマウラジロイチゴ(大深山裏白苺)
原産・特徴
アジア北部~北米北西部原産。日本では北海道の日当たりのよい山地に自生。落葉低木。樹高0.8~1.5m。葉は3出複葉。背軸面は綿毛で白い。花は径1.5cmで白色。花弁は萼片よりも小さく直立していることが多く目立たない。6~7月に開花。果実は赤熟し食用に。本亜種の品種とされるカナヤマイチゴ(金山苺)は関東~近畿に自生し、葉の背軸面が緑色。
日本自生種
学名 Rubus idaeus subsp. nipponicus Focke
学名のラテン語読み ルブス・イダエウス・ニッポニクス
[種小名の意味] [イダ山の・日本の]
一般名 ミヤマウラジロイチゴ(深山裏白苺)
原産・特徴
日本原産。関東~近畿、大分に自生。落葉低木。樹高1m。葉は3出複葉もしくは小葉5枚の奇数羽状複葉。背軸面は軟毛に覆われて白い。花弁は白色で萼片よりも小さい。6~8月に開花。果実は赤熟して食用に。本亜種の品種とされるシナノキイチゴ(信濃木苺)は葉の背軸面が緑色、イシヅチイチゴ(石鎚苺)は石鎚山固有種。
日本自生種
学名 Rubus ikenoensis H.Lév. & Vaniot
学名のラテン語読み ルブス・イケノエンシス
[種小名の意味] [いけのの]
一般名 ゴヨウイチゴ(五葉苺)、トゲゴヨウイチゴ(棘五葉苺)
原産・特徴
日本原産。本州中部以北に自生。つる性宿根草~低木。地下茎で棘が密生する。葉は5出掌状複葉で鋸歯がある。花には花弁がなく下向きに咲く。6~7月に開花。果実は赤熟。
日本自生種
学名 Rubus illecebrosus Focke
学名のラテン語読み ルブス・イルレケブロスス
[種小名の意味] [ナデシコ科Illecebrum属のような]
一般名 バライチゴ(薔薇苺)、ミヤマイチゴ(深山苺), strawberry-raspberry
原産・特徴
関東以西の山地に自生。草本。花は白色。果実は赤熟し、酸味があり食用に。北米で栽培される。
日本自生種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus ischyracanthus Cardot (シノニム;Rubus exsul Focke)
学名のラテン語読み ルブス・イスキラカントゥス
[種小名の意味] [強い棘の]
一般名 イシカリキイチゴ(石狩木苺)
原産・特徴
原産地不明。北海道の低地に自生するが帰化植物と考えられている。多年草。草丈1.5m。花は白色で夏に開花。
日本自生種
学名 Rubus kisoensis Nakai
学名のラテン語読み ルブス・キソエンシス
[種小名の意味] [木曽の]
一般名 キソキイチゴ(木曽木苺)
原産・特徴
日本原産。長野県木曽地方の固有種。短い棘がまばらにある。葉は単葉、卵形で先が尖る。花は単生で径2cm、白色。果実は淡赤色に熟す。
日本自生種
学名 Rubus mesogaeus Focke ex Diels
学名のラテン語読み ルブス・メソガエウス
[種小名の意味][中央地の]
一般名 クロイチゴ(黒苺)
原産・特徴
東アジア原産。日本では北海道~九州の山地に自生。半つる性落葉低木。樹高1~1.5m。葉は3出複葉。花弁は鮮やかなピンク色で萼片よりも小さく、開かずに雄蕊、雌蕊を取り囲むように直立しているのが特徴。果実は黒熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus microphyllus L.f.
学名のラテン語読み ルブス・ミクロフィッルス
[種小名の意味] [小さい葉の]
一般名 ニガイチゴ(苦苺)、ゴガツイチゴ(五月苺)
原産・特徴
日本、中国原産。日本では本州、四国、九州に自生。落葉低木。樹高1~2m。棘が多い。葉は単葉で3裂、鋸歯がある。葉脈でくぼんでしわが顕著。花は白色。果実は赤熟して食用に。ただし種子付近に苦みがある。
日本自生種
学名 Rubus okinawensis Koidzumi.
学名のラテン語読み ルブス・オキナウェンシス
[種小名の意味] [沖縄の]
一般名 リュウキュウバライチゴ(琉球薔薇苺)、オキナワバライチゴ(沖縄薔薇苺) 、インギイチブ
原産・特徴
沖縄、九州南部、高知、静岡に分布。オオバライチゴと近縁。葉の向軸面に毛がなく、背軸面葉脈に棘がないことでオオバライチゴと区別される。オオバライチゴより小葉の間隔が狭く先端が尖る。
日本自生種
学名 Rubus palmatus Thunb.
学名のラテン語読み ルブス・パルマトゥス
[種小名の意味] [掌状の]
一般名 モミジイチゴ(紅葉苺、椛苺)、キイチゴ(黄苺), Mayberry
原産・特徴
日本、中国原産。日本では本州、四国、九州の山地に自生。落葉低木。樹高1~2m。棘がまばらにある。葉はモミジのように5裂し、鋸歯があるが、変異が大きい。花は単生し、径3cm、花弁は細無くて先が尖り白色で、4月に下向きに開花。果実は6~7月に橙色に熟し食用に。観賞に供される。米国のL.Burbankがラズベリー品種の交配親に用いた。
日本自生種
学名 Rubus parvifolius L.
学名のラテン語読み ルブス・パルウィフォリウス
[種小名の意味] [小型の葉の]
一般名 ナワシロイチゴ(苗代苺)、アシクダシ(足下)、サツキイチゴ(皐月苺、五月苺)、ワセイチゴ(早稲苺)、サオトメイチゴ(早乙女苺)、ウシイチゴ(牛苺), Japanese bramble, native raspberry
原産・特徴
東アジア原産。日本では全土の海岸~草原に自生。和名は5月の苗代を作る頃に開花することから。落葉小低木だが、草のように匍匐し、樹高20~30cm。茎は赤く、下向きの棘がまばらにある。葉は奇数羽状複葉で小葉は3~5枚。花弁は濃桃色で萼片よりも小さく、開かずに雄蕊、雌蕊を取り囲むように直立しているのが特徴。果実は赤熟し食用に。
日本自生種
学名 Rubus pedatus Sm.
学名のラテン語読み ルブス・ペダトゥス
[種小名の意味] [鳥足状の]
一般名 コガネイチゴ(黄金苺)
原産・特徴
太平洋北部沿岸地域原産。日本では北海道、本州中部以北の山地に自生。草本の様な匍匐性落葉低木。棘はない。葉は3出複葉が基本で側小葉の欠刻が深く5出に見えるもの、あるいは5出複葉のものも見られる。花は径2cmで白色、6~7月に上向きに開花し、花弁4枚のものが多い。果実は赤熟し、分果は1~5個と少ない。果実は食用に。
日本自生種
学名 Rubus phoenicolasius Maxim.
学名のラテン語読み ルブス・フォエニコラシウス
[種小名の意味] [赤紫の毛のある]
一般名 エビガライチゴ(海老殻苺)、ウラジロイチゴ(裏白苺), Japanese wineberry, wine raspberry, wineberry, hairy bramble
原産・特徴
東アジア原産。欧州~北米に導入され帰化。日本では北海道~九州の山地に自生。落葉つる性低木。樹高2m。茎や葉柄、花序全体に赤い毛が密生し、海老殻色に例えられたのが和名の由来に。まばらに棘がある。葉は3出複葉で白色の背軸面が別名の由来に。花弁は白色で萼片よりも小さく、開かずに雄蕊、雌蕊を取り囲むように直立しているのが特徴。開花は6~7月。開花後萼が一旦閉じてから果実が発達し赤熟する。果実は食用に。
日本自生種
学名 Rubus trifidus Thunb.
学名のラテン語読み ルブス・
[種小名の意味] [3中裂の]
一般名 カジイチゴ(梶苺)、fire raspberry
原産・特徴
日本原産。関東以西の太平洋側、伊豆諸島、九州の海沿いの山地に自生。落葉~半常緑低木。樹高2~3m。茎は直立して側枝を出す。茎の下部に棘のあることがある。地下茎で広がって殖え、駆除が大変になる。葉は掌状の単葉で3~7裂する。和名は葉がカジの葉に似ることに由来するが、カジよりはモミジに似る。葉の向軸面は無毛で光沢がある。花は径3~4cmの白色で4~5月に開花。果実は橙色に熟す。果実は食用になるが今いち。生け花の花材として庭木で利用される。
日本自生種
学名 Rubus vernus Focke
学名のラテン語読み ルブス・ウェルヌス
[種小名の意味] [春咲きの]
一般名 ベニバナイチゴ(紅花苺)
原産・特徴
日本原産。北海道西南部と本州中部以北の日本海側の高山に自生。落葉低木。樹高1~1.5m。棘がない。葉は3出複葉。花は径2~3cmで花弁は濃桃~濃紅色で先端がやや尖る。6~7月に開花。果実は赤熟し食用に。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus buergeri Miq.
学名のラテン語読み ルブス・ブエルゲリ
[種小名の意味] [シーボルトの助手として来日していたドイツ人ブュルゲルへの献名]
一般名 フユイチゴ(冬苺) 、カンイチゴ(寒苺)、寒莓(カンバイ)
原産・特徴
観日本、台湾、中国原産。日本には北陸・関東以西の山地に自生。常緑つる性低木。樹高20~30cm。棘がありサッカーも多い。葉は有毛で硬く、単葉で浅く3~5裂する。花は白色で秋に開花し、果実は丸く、冬に赤熟して食用になる。中薬では、根をカンバイコン(寒莓根)と呼び、黄疸、虫垂炎、腸炎、痢疾、肝炎などに、葉あるいは全草をカンバイヨウ(寒莓葉)と呼び、肺結核の咳血、黄水瘡に用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus chingii Hu
学名のラテン語読み ルブス・キンギイ
[種小名の意味] [中国の植物学者Ching(秦仁昌)への献名]
一般名 ゴショイチゴ(御所苺)、掌葉覆盆子(ショウヨウフクボンシ)
原産・特徴
日本、中国原産。日本では山口、愛媛、高地、大分に自生。落葉低木。茎には棘がまばらにある。葉は単葉、掌状でモミジやカジのように5裂。花は白色で下向きに単独で咲く。果実は薄赤色に熟す。中薬では未熟果を薬用とする。果実は強壮、強精、頻尿などに、根を止嘔に、葉をかすみ目や歯痛に用いる。中薬では、未熟果をフクボンシ(覆盆子)と呼び、白髪予防や男子の腎精の虚と陰萎をつかさどり、女子は子を授かり、五臓を安らげ、精気を養い、志を強くし、腎臓を益し、小便を縮めるなどの効能があり、根をフクボンシコン(覆盆子根)と呼び、激しいから嘔吐や角膜混濁に用い、茎葉をフクボンシヨウ(覆盆子葉)と呼び、歯痛、慢性眼病などに用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus corchorifolius L.f.
学名のラテン語読み ルブス・コルコリフォリウス
[種小名の意味] [ツナソ属(Corchorus)のような葉の]
一般名 ビロードイチゴ(天鵞絨苺)、懸鉤子(ケンコウシ)
原産・特徴
東アジア~インドシナ半島原産。日本では、静岡以西~四国、九州の山地の林縁に自生。落葉低木。樹高1~3m。茎葉にビロード状の細かい毛が密生。葉は単葉で卵状披針形、3浅裂することがある。花は径2~3cmで白色。果実は黄紅色に熟し、果汁が多く、ジャム、ジュース、ワインなどに加工される。中薬では、未熟果をケンコウシ(懸鉤子)と呼び、酔い醒まし、止渇、去痰、痛風、遺精に、根や根皮をケンコウコン(懸鉤根)と呼び、吐血、痔血、血崩、下血、下痢、腹痛、赤白帯下、月経不順、打撲傷、遺精、虫歯痛、感冒、マラリアなどに、茎をケンコウケイ(懸鉤茎)と呼び、喉中塞に用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus hirsutus Thunb.
学名のラテン語読み ルブス・ヒルストゥス
[種小名の意味] [多毛の]
一般名 クサイチゴ(草苺)、ワセイチゴ(早稲苺)、ナベイチゴ(鍋苺)、ヤブイチゴ(藪苺)、蓬蘽(ホウルイ)
原産・特徴
日本、朝鮮、中国原産。日本では本州、四国、九州の里や山野の半日陰に自生。草本に近い落葉小低木。樹高60~100cm。枝葉に軟毛が密生、棘もまばらにある。奇数羽状複葉で小葉は3~5枚で、鋸歯がある。花は径4cm、白色で春に開花。花弁にアストラガリンとトリフォリンを含有。果実は5月に赤熟し、食用になる。中薬では、根あるいは葉をシハ(刺菠)と呼び、喉痛、歯痛、頭痛、扁桃炎、黄疸、鼻血、小児の高熱によるひきつけ、小児のあせもから生じた腫物に用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus lambertianus Ser.
学名のラテン語読み ルブス・ランベルティアヌス
[種小名の意味] [マツ分類をしたLambertの]
一般名 シマバライチゴ(島原苺)、高梁泡(コウリョウホウ)
原産・特徴
東アジア~東南アジアに分布。日本では長崎県と熊本県に自生。和名は長崎県島原市で発見されたことから。つる性半落葉低木。樹高3m。葉は単葉でアサガオ状。花は白色。果実は赤熟し食用に。花序、果房は15~20cmの房状になる。根を風邪や風邪による高熱に、葉の汁を外傷出血に外用、健康茶や薬用酒も。中薬では、根をコウリョウホウコン(高梁泡根)と呼び高血圧による半身不随、吐血、血便、脊、鼻血、産後の腹痛などに、葉をコウリョウホウヨウ(高梁泡葉)と呼び外傷出血、喀血に用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus peltatus Maxim.
学名のラテン語読み ルブス・ペルタトゥス
[種小名の意味] [盾状の]
一般名 ハスノハイチゴ(蓮の葉苺)、盾葉莓(ジュンヨウバイ)
原産・特徴
日本、中国原産。日本では、長野・愛知・福井以西、四国、九州に自生。落葉低木。樹高1m。地下茎で増殖。葉は単葉で盾形。花は径5cmと大きく白色。果実は橙色に熟す。中薬では、果実をジュンヨウバイ(盾葉莓)と呼び、腰脊四肢の酸疼に用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus pungens var. oldhamii (Miq.) Maxim.
学名のラテン語読み ルブス・プンゲンス・オルダミイ
[種小名の意味] [刺針の・英の植物採集家R.Oldhamへの献名]
一般名 サナギイチゴ(猿投苺)、刺懸鉤子(シケンコウシ)
原産・特徴
東アジア原産。本州、四国、九州に自生。和名は愛知県猿投山(さるなげやま)から。つる性落葉低木。細かい棘がまばらにある。奇数羽状複葉で小葉は3~5枚。花は径2cm、白~淡紅色で5~6月に開花。果実は赤熟し食用に。中薬では、根をトウサツリュウ(倒扎竜)と呼び、腰痛、白帯、黄水瘡、盗汗などに用いる。
日本自生種で、中薬利用種
学名 Rubus sieboldii Blume
学名のラテン語読み ルブス・シエボルディイ
[種小名の意味] [シーボルトへの献名]
一般名 ホウロクイチゴ(焙烙苺)、炮烙莓(ホウラクバイ)
原産・特徴
東アジア南部原産。日本では本州の島根ー伊豆ライン以西の山地に自生。常緑低木。樹高1.5m。小さな棘が多い。葉は単葉で丸葉か3~5に浅裂し鋸歯がある。葉は肉厚で向軸面には光沢があり、背軸面は綿毛が密生して白い。葉長は最大17cmと大きい。花は径2.5~3cmの白色で4~6月に開花。果実は赤熟し食用に。和名は果実を花托から外すと焙烙鍋に似ていることから。厳島神社や鹿児島大隅地方では葉を神前のお供えを載せるのに利用。中薬では全株をリュウセンウホウ(竜船烏泡)と呼び、流行性感冒、痢疾、淋病、小児の口の爛れ、過労による吐血、打撲傷、刀傷、歯痛に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus alceifolius Poir.
学名のラテン語読み ルブス・アルケイフォリウス
[種小名の意味] [Alcea(タチアオイ属)の様な葉の]
一般名 ケオリイチゴ、粗葉懸鉤子(ソヨウケンコウシ), giant bramble
原産・特徴
東南アジア、中国原産。つる性低木。樹高5m。花は径1~1.6cmで白色。果実は赤熟し、食用に。根と葉は薬用に。中薬では、根と葉をソヨウケンコウシ(粗葉懸鉤子)と呼び、肝炎、肝脾腫大、乳腺炎、外傷出血、口腔炎などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus amphidasys Focke
学名のラテン語読み ルブス・アンフィダシス
[種小名の意味] [軟毛で囲まれている]
一般名 全毛懸鉤子(ゼンモウケンコウシ)
原産・特徴
中国原産。常緑つる性低木。樹高20~40cm。葉は単葉で3、5浅裂する。花は径1~1.5cmで白色。果実は暗紅色に熟す。中薬では、全草をゼンモウケンコウシ(全毛懸鉤子)と呼び、産後の月経不順や四肢の酸麻に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus cochinchinensis Tratt.
学名のラテン語読み ルブス・コキンキネンシス
[種小名の意味] [交趾支那(ベトナム辺り)の]
一般名 越南懸鉤子(エツナンケンコウシ)
原産・特徴
中国~インドシナ半島東部原産。低木。葉は掌状複葉。花は径1cm前後で白色。果実は黒熟。中薬では、根または葉をゴヨウホウ(五葉泡)と呼び、打撲腫痛に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus coreanus Miq.
学名のラテン語読み ルブス・コレアヌス
[種小名の意味] [朝鮮の]
一般名 トックリイチゴ(徳利苺)、 挿田泡(ソウデンホウ)、bokbunja, Korean blackberry, Korean bramble
原産・特徴
朝鮮、中国原産。樹高1~2m。棘がまばらにある。葉は奇数羽状複葉で小葉は5~7枚。花は白色。果実は赤熟し食用に。和名は果実の形が徳利に似ることから。韓国では果実をジャムやボックブンジャジュ(覆盆子酒)と呼ばれるワインに。未熟果は血液循環や性欲亢進、ED改善に。中薬では、未熟果をフクボンシ(覆盆子)、茎葉をフクボンシヨウ(覆盆子葉)と呼び、ゴショイチゴ(掌葉覆盆子)と同様に用いるほか、根をトウセイコン(倒生根)と呼び、過労による吐血や月経不順、打撲傷、骨折、不妊症、鼻血などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus delavayi Franch.
学名のラテン語読み ルブス・デラウァイ
[種小名の意味] [仏の宣教師で植物収集家のJ.M.Delavayへの献名]
一般名 三葉懸鉤子(サンヨウケンコウシ)
原産・特徴
中国雲南省固有種。樹高1~2mの低木。葉は3出複葉。花は白色で4~5月に開花。果実は黄橘色に熟す。中薬では、全株をトウコウシ(倒鉤刺)と呼び、扁桃腺炎や急性結膜炎、痢疾、疥瘡、リウマチ性関節炎、回虫駆除、耳下腺炎、乳腺炎などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus ellipticus Sm.
学名のラテン語読み ルブス・エッリプティクス
[種小名の意味] [楕円形の]
一般名 キミノヒマラヤイチゴ(黄実喜麻拉亜苺)、オニイチゴ(鬼苺)、切頭懸鉤子(セツトウケンコウシ)、ainselu[ネパール], golden evergreen raspberry, golden Himalayan raspberry, yellow Himalayan raspberry
原産・特徴
中国、東南アジア、南アジア原産。半匍匐性常緑低木。樹高2~4m。葉は三つ葉。花は白色。果実は黄色。帰化して在来種のイチゴを駆逐することから、国際自然保護連合の侵略的外来種ワースト100に剪定。日本では要注意外来生物。ネパールでは果実を果実酒に。シッキムでは根を胃痛、頭痛に、果実を消化不良に。チベットでは樹皮を腎強壮剤や抗利尿剤に、ジュースにして咳、発熱、疝痛、のどの痛みに用いる。青紫の染色にも用いられる。中薬では、葉をオウヒョウヨウ(黄藨葉)と呼び、皮膚瘡、黄水瘡、かゆみに、根をオウヒョウコン(黄藨根)と呼び、吐血、狂犬による咬傷に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus ellipticus var. obcordatus (Franch.) Focke
学名のラテン語読み ルブス・エッリプティクス・オブコルダトゥス
[種小名の意味] [楕円形の・倒心臓形(ハート形)の]
一般名 栽秧泡(サイオウホウ)
原産・特徴
中国~インドシナ半島、インド原産。常緑低木。樹高1.5~3m。葉は三つ葉で中央の小葉は大きく、各小葉の先端は浅くへこんでいる。花は白色。果実は黄橙色に熟す。中薬では、根をオウサバイコン(黄鎖梅根)と呼び、赤白痢、休息痢、慢性大腸下血、筋骨疼痛に、葉をオウサバイヨウ(黄鎖梅葉)と呼び、止血、黄水瘡、慢性湿疹に、果実をオウホウカ(黄泡果)と呼び、神経衰弱、多尿、遺精、早漏に用いる。
中薬利用種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus hastifolius H.Lév. & Vaniot(シノニム;Rubus rufolanatus H.T.Chang)
学名のラテン語読み ルブス・ルフォァナトゥス
[種小名の意味] [鉾形の葉の]
一般名 紅綿藤(コウメントウ)
原産・特徴
シノニムのR. rufolanatusは、World Flora Onlineでは未チェック学名。常緑のよじ登り性低木。樹高は12mに達する。葉は単葉で披針状楕円形。花は径1.5cm、白色。果実は赤~黒熟。中薬では、葉と枝をコウメントウ(紅綿藤)と呼び止血に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus ichangensis Hemsl. & Kuntze
学名のラテン語読み ルブス・イチャンゲンシス
[種小名の意味] [中国宜昌市の]
一般名 黄鉤子(オウホウシ)
原産・特徴
中国原産。常緑つる性匍匐性低木。樹高1~1.5m。葉は単葉で卵状披針形~長円状卵形。花は径6~8mmで白色で総状花序を形成。果実は赤熟し、食用に。中薬では、葉と根をギュウビホウ(牛尾泡)と呼び、収斂、止血、解毒のほか、根を吐血、痔瘻出血、止痛、利尿、殺虫に、葉を黄水瘡、湿熱瘡毒に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus idaeopsis Focke
学名のラテン語読み ルブス・イダエオプシス
[種小名の意味] [ideaに似た]
一般名 擬覆盆子(ギフクボンシ)
原産・特徴
中国原産。樹高1~3mの低木。葉は小葉5か7枚の奇数羽状複葉。花は紫色。果実は赤熟する。中薬では、チベットにおいて、ゴショイチゴやトックリイチゴと同様に用いられる。
中薬利用種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus idaeus subsp. strigosus (Michx.) Focke (シノニム;Rubus sachalinensis H.Lév.)
学名のラテン語読み ルブス・イダエウス・ストゥリゴスス
[種小名の意味] [イダ山の・かすかに線条のある]
一般名 庫頁懸鉤子(コヨウケンコウシ), American red raspberry
原産・特徴
北米東部~アラスカに自生。エゾイチゴ(蝦夷苺)と呼ばれることもある。樹高1m。ラズベリーよりも開張性が高い。毛が多い。葉は3出複葉もしくは小葉5枚の奇数羽状複葉。花は白色。果実は淡紅色に熟し、まれに黄色や白色品種もある。耐寒性が高く、耐寒性を高めるための交配親としても利用される。中薬では、茎葉をコヨウケンコウシ(庫頁懸鉤子)と呼び痢疾に、根をコヨウケンコウシコン(庫頁懸鉤子根)と呼び出血、帯下に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus innominatus var. kuntzeanus (Hemsl.)L.H.Bailey
学名のラテン語読み ルブス・インノミナトゥス・クントゥゼアヌス
[種小名の意味] [無名の、未知の・独の植物学者G.Kunzeへの献名]
一般名 無腺白葉莓(ムセンハクヨウバイ)
原産・特徴
中国原産。落葉低木。樹高1~4m。葉は3出複葉。花は赤色。果実は橙色に熟す。中薬では、根をソウコクヒョウ(早穀藨)と呼び、小児の風寒による咳逆や気喘に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus irenaeus Focke
学名のラテン語読み ルブス・イレナエウス
[種小名の意味] [ギリシャの女神Ireneの]
一般名 地五泡藤 (ジゴホウトウ), bigleaf raspberry
原産・特徴
中国原産。常緑低木。樹高15~30cm。葉は単葉、円形~広心臓形。花は白色。果実は赤熟し、生食やジャム、キャンディー、ワインなどに加工される。中薬では根と葉をジゴホウトウ(地五泡藤)と呼び、腹痛や口角瘡に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus lambertianus var. glaber Hemsl.
学名のラテン語読み ルブス・ランベルティアヌス・グラベル
[種小名の意味] [マツ分類をしたLambertの・無毛の]
一般名 山泡刺藤(サンホウシトウ)
原産・特徴
中国原産。半常緑つる性低木。葉は単葉で、卵形~長楕円状卵形。花は径8mmで白色。中薬では、葉をオウスイヒョウヨウ(黄水藨葉)と呼び、黄水瘡、小児の口元の腐爛で黄水が出る場合に用いる。
中薬利用種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus lasiotrichos var. blinii (H.Lév.) L.T.Lu(シノニム;Rubus blinii H.Lév.)
学名のラテン語読み ルブス・ラシオトゥリコス・ブリニイ
[種小名の意味] [羊毛状の毛の・Blinへの献名]
一般名 五葉懸鉤子(ゴヨウケンコウシ)
原産・特徴
中国四川~貴州固有種。よじ登り性低木。葉は単葉で、モミジの様に5深裂。花は淡黄色。果実は赤熟。中薬では、全草をゴソウフウ(五爪風)と呼び、打撲傷、腰痛、鶏爪風などに用いる。
中薬利用種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus niveus Thunb.(シノニム;Rubus foliolosus D.Don)
学名のラテン語読み ルブス・ニウェウス
[種小名の意味] [雪白色の、雪の様な]
一般名 マイソールラズベリー, Mysore(Misore) raspberry, Ceylon raspberry, hill raspberry,灰毛果莓(カイモウカバイ)
原産・特徴
アフガニスタン原産。中国、台湾、東南アジア、南アジアに分布。落葉低木。樹高0.5~2.5m。葉は奇数羽状複葉で小葉は5~11枚。花は径1cmで桃紅色。果実は綿毛で覆われ、赤~黒熟し、食用に。中薬では、根あるいは葉をコウシコクサバイ(硬枝黒鎖梅)と呼び、疥癩瘡の洗浄、収斂、止血、鎮咳、消炎、脱肛、紅白痢、百日咳、月経不順、毒蛇による咬傷などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus pacificus Hance
学名のラテン語読み ルブス・パキフィクス
[種小名の意味] [太平洋の]
一般名 太平苺莓(タイヘイバイ)
原産・特徴
中国東部原産。常緑低木。樹高40~60cm。葉は単葉で卵状心臓形。花は径1.5~2cmで白色。6~7月に開花。果実は赤熟する。中薬では、全草をタイヘイバイ(太平莓)と呼び、産後の腹痛や発熱に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus parkeri Hance
学名のラテン語読み ルブス・パルケリ
[種小名の意味] [四川省での最初の発見者E.H.Parkerへの献名]
一般名 烏藨子(ウヒョウシ)
原産・特徴
中国原産。落葉つる性低木。葉は単葉。花弁は白で小さく目立たない。果実は黒熟する。中薬では、根をショウウホウコン(小烏泡根)と呼び、吐血、咳、歯痛、月経不順、子宮出血などに用いる。
中薬利用種
学名 (よく用いられるシノニム) Rubus pluribracteatus L.T.Lu & Boufford(シノニム;Rubus mallodes Focke)
学名のラテン語読み ルブス・プルリブラクテアトゥス
[種小名の意味] [多くの苞葉の]
一般名 紅鉄泡刺(コウテツホウシ)
原産・特徴
中国~インドシナ半島東部原産。よじ登り性低木。葉は単葉、広卵円形で5浅裂。花は白色。中薬では、根をコウテツホウシ(紅鉄泡刺)と呼び、吐血、全身の紫斑、下痢、労傷疼痛に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus rosifolius Sm.
学名のラテン語読み ルブス・ロシフォリウス
[種小名の意味] [バラの様な葉の]
一般名 コジキイチゴ(乞食苺)、薔薇莓(ショウビバイ), roseleaf bramble, Mauritius raspberry, thimbleberry, Vanuatu raspberry, bramble of the Cape
原産・特徴
南アジア~東南アジア、中国、豪州東部に分布。つる性低木。樹高1~3m。棘はほとんどない。葉は奇数羽状複葉で小葉は3~7枚。花は径2~5cmで白色。果実は赤熟し食用としてヒマラヤでは市場に流通。葉の煎剤は伝統療法で下痢、月経痛、つわりなどに、フィリピンでは根の煎剤を去痰に、果実のシロップを粘滑剤に、パプアニューギニアでは葉をかゆみに外用に、ジャワでは葉を生食または調理して食用にする。本学名をトキンイバラとする解釈もあるが、別植物と思われる。ここではトキンイバラはRubus eustephanus var. coronarius Koidz.として記載。中薬では、根をトウショクサン(倒触傘)と呼び、月経中に起こる吐血や鼻出血、脱肛、赤痢、白痢、小児の百日咳、盗汗などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus setchuenensis Bureau & Franch.
学名のラテン語読み ルブス・セトゥクエネンシス
[種小名の意味] [支那四川省の]
一般名 大烏泡(ダイウホウ)、川莓(センバイ)
原産・特徴
中国原産。落葉低木。樹高2~3m。葉は単葉で5か7に浅裂。果実は赤熟する。中薬では、大烏泡の根をダイウホウ(大烏泡)と呼び、痢疾や血を伴う咳、四肢無力、倒経、骨折などに、川莓の根や葉をダイウホウコン(大烏泡根)と呼び、過労による吐血や月経不順、口臭、狂犬病の犬による咬傷、止血、接骨、痢疾、脱肛、倒経、咳血、骨折などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus tephrodes Hance
学名のラテン語読み ルブス・テフロデス
[種小名の意味] [灰色がかった]
一般名 灰白毛苺(カイハクモウバイ)
原産・特徴
中国原産。落葉つる性低木。樹高1~3m。葉は単葉で円形。花は白色。果実は紫褐色に熟す。中薬では、根と葉をウリュウハイビ(烏竜擺尾)と呼び、根を閉経、産後の風邪、腰腹痛、筋骨の痛風などに、葉を打撲傷などに用いる。
中薬利用種
学名 Rubus wallichianus Wight & Arn.
学名のラテン語読み ルブス・ワッリキアヌス
[種小名の意味] [印の植物学者N.Wallichへの献名]
一般名 紅毛懸鉤子(コウモウケンコウシ)
原産・特徴
中国~インド、ベトナム原産。つる性落葉低木。葉は3出複葉。花は白色。果実は赤熟する。根と葉をロウコホウ(老虎泡)と呼び、月経不順、腎虚陽萎、血尿に用いるほか、根をリュウマチ性関節痛、刀傷、吐血などに、葉を黄色い汁の出る瘡、犬による咬傷に用いる。
中薬利用種
学名 Rubus xanthocarpus Bureau & Franch.
学名のラテン語読み ルブス・クサントカルプス
[種小名の意味] [黄色の果実の]
一般名 黄果懸鉤子(オウカケンコウシ)
原産・特徴
中国原産。多年草もしくは小低木。草丈15~50cm。葉は3出複葉。花は径1.5~2cmで白色。果実は黄橙色に熟し、生食やジャム、ゼリー、ワインなどに加工される。中薬では根をジバイシ(地莓子)と呼び、消炎、止痛の効能があり、結膜炎、顔縁炎、無名腫毒に用いる。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第63号 2023年4月