クロモジの植物学と栽培
今回は、クロモジの特徴や栽培方法などを、植物学の視点で解説します。
分類・名称
分類
クロモジは、クスノキ科(Lauraceae)リンデラ属(クロモジ属;Lindera)植物で、狭義にはLindera umbellata Thunb.(リンデラ・ウンベルラータ)を指します。中義にはクロモジ同様に利用されるオオバクロモジやケクロモジ、ヒメクロモジ、ウスゲクロモジなどの近縁種を含み、一般にはいずれもクロモジの名で区別なく利用されています。広義にはリンデラ属植物全体を指します。ここでは、クロモジを狭義の意味で用います。
クスノキ科の特徴
クスノキ科は、最も原始的な被子植物とされるアンボレラ科を筆頭に、モクレン科やコショウ科、ドクダミ科などと共に、基部被子植物あるいは原始的被子植物と呼ばれ、東南アジアや南米を中心に68属2,978種を有します(World Flora Online)。
クスノキ科には葉の向軸面(表面)にクチクラによる光沢のある常緑照葉樹も多く、日本では、タブノキやシロダモ、バリバリノキ、カゴノキなどが照葉樹林の一部を構成しています。また、芳香を有するものが多く、クロモジ以外にも、セイロンニッケイやカッシア、クスノキ、ホウショウ、ラヴィンツァラ、ラヴェンサラ、アオモジ、ゲッケイジュ、ローズウッド、オコテア、サッサフラスなどで精油が生産されています(下記*1)。
このほかにも、日本では、ハマビワ、アオモジ、カゴノキ、バリバリノキ、タブノキ、ホソバタブ、シロダモ、イヌガシや、下記*2に示すリンデラ属植物など、香りを有する植物の生活利用が期待されます。そのほか、アボカドもクスノキ科です。
リンデラ属の特徴
World Flora Onlineには、リンデラ属(クロモジ属)に104種が記載されています。リンデラ属は、果実の形質によって、クロモジ節とシロモジ節に分けることができます。クロモジ節にはクロモジやヤマコウバシ、ダンコウバイなどが含まれ、熟果が裂開せずに種子を内蔵するのに対し、シロモジ節では熟果が不規則に裂開して種子を出す特徴があり、シロモジやアブラチャンなどが含まれます。
また、北米に分布する3種以外は、ほとんどが東アジア~南アジアの温帯から亜熱帯に分布します。日本にはクロモジ、オオバクロモジ、ケクロモジ、ヒメクロモジ、ウスゲクロモジ、ダンコウバイ、ヤマコウバシ、カナクギノキ、シロモジ、アブラチャンなどが自生し、いずれも香りを有しており、活用が期待されます。
名称
クロモジの学名のLindera umbellata Thunb.は、リンネ(Linné)の弟子で、江戸後期に長崎の出島に1年滞在していたスウェーデンの博物学者のツンベルク(トゥーンベリ、Thunberg)によって命名され、1784年に『Flora Japonica』に掲載されました。
属名のLinderaは、スウェーデンの植物学者リンデル(Johan Linder)への献名で、ツンベルクによって付けられました。
種小名のumbellataは「散形花序の」の意で、クロモジの花序に由来します。
和名のクロモジ(黒文字)の由来については、樹皮上に見られる黒斑を文字になぞられたとする説が一般的です。この黒斑は地衣類ともいわれていますが不明です。このほか、黒木(樹皮付きの木)の爪楊枝を、宮中女官の女房言葉の1つで語尾に「文字」を付ける文字詞から、黒文字と呼んだとする説があります。また、地域によって、モンジャやトリシバ、モチノキ、ヨージノキ、アブラギ、フクギ、チシャなど100近い方言も知られており、人との関わりの深さがうかがえます。下記*2-1にはその一部を示しました。
英名はなく、学名で呼ばれるほか、Kuromojiと称されることがあります。
人とのかかわりの歴史
クロモジは地域によって、北海道、東北~北陸ではオオバクロモジ、南関東以西の太平洋側や四国ではクロモジ、東海~山陽、四国、九州ではヒメクロモジ、山陽、四国、九州ではケクロモジが、かつては区別なくクロモジとして利用されてきました。
クロモジ類(以下、中義のクロモジを指す)と人とのかかわりについては、江戸時代に武士の副業として楊枝づくりが始まったのがきっかけともいわれています。各地で「楊枝」系の方言(ヨージ、ヨジキ、ヨージッキ、ヨージノキなど)で呼ばれるように、樹皮付きの楊枝が「黒文字」と称され賞用されてきました。茶道では、茶会の菓子楊枝として10~15cmの黒文字楊枝が用いられ、茶席で出された黒文字は懐紙に包んで持ち帰り、黒文字の裏に日時、場所、菓子銘などを記して記念にする作法もあります。江戸時代から続く君津市久留里の「雨城楊枝」は千葉県指定伝統工芸品に指定されています。
また、北海道、東北、新潟、京都を中心に「鳥柴・鳥木」系の方言(トリシバ、トシバ、トリキ、トリノキ、トリコノキ、トリキシバなど)で呼ばれるように、鷹狩の獲物の鳥を贈る時に結び付ける枝にクロモジ類が用いられてきました。また、狩りのあとの毛祭で獲物をクロモジ類に挟んで山の神に供えたりする風習があります。伊勢神宮の用材伐採に際して供物を奉納する祭壇がクロモジ類で作られる地域もあります。岐阜では、山の神に捧げる食物から始まった御幣餅の串にクロモジ類が用いられます。このほか、山陰や滋賀、山形などでは、「餅木」系の方言(モチノキ、モチギノキ、モチバナノキなど)で呼ばれるように小正月の餅花にクロモジ類が用いられます。このように、クロモジ類は、神事や祭事に用いられてきました。このほか、虫歯を防ぐとされて箸に加工されたり、肉や魚の臭みをとるために料理に用いられたり、香料原料として、クロモジ油が採取されたりしてきました。
近年では、健康志向の高まりや国産精油ブームもあって、クロモジ類のお茶や化粧品、精油などによる地域振興が盛んになっています。このほか、クロモジの抗酸化作用(Devkota etc. 2021;Shimode etc. 2022)や、抗インフルエンザウイルス作用(河原、2023)などの研究が産学連携で進められており、メディカルハーブとしての健康応用がますます期待されます。
中国では、クロモジを大葉釣樟や光狗棍などと呼び、中薬では、根もしくは根皮を釣樟根皮もしくは光狗棍根と呼んで、さしこみなどの発作的にあらわれる神経性心悸亢進や、脚気、水腫、疥癬、創傷出血、金瘡、急性胃腸カタル、嘔吐性下痢、奔豚など治療や止血に用います(『中薬大辞典』)。
そのほかにも、テンダイウヤク(中国名:烏薬、中薬名:烏薬葉、烏薬子)やヤマコウバシ(中国名:牛筋樹、中薬名:山胡椒、山胡椒根、山胡椒葉)など多くのリンデラ属植物が中薬利用されており(『中薬大辞典』)、下記*2に示しました。
形態・成分
クスノキ科植物は基部被子植物と呼ばれる原始的な被子植物であり、新しく進化した真正双子葉類とは違って、次のような特徴があります。虫媒花ですが、真正双子葉類に見られるハチやチョウ、ガによる受粉ではなく、それらよりも古くに進化して誕生したと考えられている甲虫やハエ、アザミウマによる受粉です。また、単子葉類に近い特徴も見られ、ユリ科のように、花弁と萼片の区別が明瞭でなく、花を構成する花被(花冠と萼)や雄しべの数が三数性(3の倍数)を示します。芳香を有するものが多く、精油は精油細胞中に含まれます。
リンデラ属に共通の特徴として、雌雄異株で、葉は互生、単葉です。いずれも木本で、落葉するものと常緑のものがあり、香りを有します。なお、葉は、全縁を基本とし、先端が3裂(場合によっては5裂)するものもあります。葉脈は、中央脈(主脈、中肋)から側脈が数本、互生する羽状脈か、もしくは中央脈の最も基部の側脈2本が発達する3出脈を示します。
クロモジは、樹高2~5mの落葉低木で、冬に落葉します。枝は若いうちは黄緑色で、はじめ絹毛がありますがのちに無毛になってすべすべし、数年で丸い皮目をもった灰褐色の樹皮になります。葉は、枝先に集まって互生し、全縁で鋸歯はなく、葉長4~12cm、葉幅1.5~4cmの狭倒卵形~倒長楕円形、倒卵状長円形を呈します。葉脈は中央脈から側脈が4~6対互生し、背軸面(裏面)の隆起は見られません。向軸面(表面)は深緑色で、はじめ絹毛を有しますがのちに無毛となります。背軸面はやや白味を帯びた緑色で、幼葉は絹毛に覆われるものの、成葉では葉脈を残して、散生もしくは無毛になります。葉柄は7~12mmで軟毛を密生します。花序は頂芽付近に1~3個つき、長さ3~6mmの花柄を有し、春に葉と同時に黄色の小さな花を開きます。果実は直径5~6mmの球形で、中に種子を1個含有し、秋に黒熟します。
クロモジは全植物体に精油を含有します。収油率は葉で0.4%、種子で1.2%、果肉(果皮)で0.09%であり、テンダイウヤクやシロダモなどと同様、種子での収油率が高く、アオモジやハマビワなどで果皮の収油率が高いのとは異なること、精油の主成分は種子ではネロリドールで、果皮では11-ドデセン-1-オールであることなどが報告されています(仁井ら、1983)。葉の精油の主成分はリナロールで、第2成分として1,8-シネオールを多く含有するもの、ゲラニオールを多く含有するものなどの報告があり、ケモタイプがあることも十分に考えられます。枝葉の精油の含量は6~7月に最も高くなり、各成分濃度については、リナロールで秋から冬に高く、1,8-シネオールで夏に高いなどの季節変動のあることが報告されています(高橋ら、2021)。根にラウノビン、ラウロリトシンを含有します(『中薬大辞典』)。
葉の抗酸化活性を示す成分は、夏の紫外線に備えて4月末頃に生成・蓄積し始めることを示唆されています(野村ら、2018)。ケクロモジでは、8種類のフラボノイドが分離され、そのうち、(-)-エピカテキンとタキシフォリン3-O-グルコシド、ケルセチン、ケルシトリン、ケルセチン3-O-ネオヘスペリドシドに強力なフリーラジカル消去作用が、ケルセチンとケルシトリン、タキシフォリン3-O-グルコシドにα-グルコシダーゼ阻害作用が報告されています(Devkota etc. 2021)。
近縁種との比較では、オオバクロモジの葉の精油成分リノール含有率が高く、ゲラニオールとl-α-フェランドレンを含有しないという報告があります(藤田、1956)。
性状と栽培
クロモジやオオバクロモジ、ケクロモジ、ヒメクロモジなどでは自生地が異なりますので、それぞれのご当地クロモジを育てるのがおすすめです。
苗木を購入して育てるのが一般的ですが、種子繁殖や挿し木繁殖も可能です。クロモジ類は株立ちになりやすいですし、株立ちは狭い庭でも美しく管理も楽でおすすめです。
種子繁殖の場合、休眠があるので、秋に播種して春に発芽するのを待つか、種子を湿らせて芽を動かした状態で乾かないようにしながら数か月冷蔵庫で低温処理して播種します。それでも発芽率は1割程度と低いです。
挿し木も可能です。7月、梅雨明け前が適期です。その年に伸びた枝を20cm程度に切り、下半分の葉をハサミで葉柄の付け根から除去し、残った葉も基部2cmを残して切って挿し穂にします。無肥料の赤玉土に下半分を挿し、たっぷり灌水します。日陰に1か月以上置いて、土が乾かないように灌水します。
クロモジ類は直射日光を嫌いますので、木洩れ日の差すような環境にします。
剪定は真冬に行います。株立ちの場合は、全ての内向枝の根元ちょうどで間引き剪定します。また、樹高を下げる場合には下げる位置の側枝の上ちょうどで主枝を切ります。
引用文献
Devkota, H. P., A. Kurizaki, K. Tsushiro, A. A.- Devkota, K. Hori, M. Wada, T. Watanabe. 2021.
Flavonoids from the leaves and twigs of Lindera sericea (Seibold et Zucc.) Blume var. sericea (Lauraceae) from Japan and their bioactivities.
Functional Foods in Health and Disease. 11(1). 34-43.
藤田安二. 1956. 精油成分より見たるオオバクロモジ,クロモジ及びアオモジの系統. 植物研究雑誌. 31(6). 188-190.
河原岳志. 2023. クロモジ熱水抽出物の抗インフルエンザウイルス活性成分の検討. 薬理と治療. 51(2). 193-201.
仁井晧迪, 古川靖, 岩切三雄, 久保田尚志. 1983. クロモジ果実の成分について. 日本農芸化学会誌. 57(2). 151-154.
野村正人, 牛崎絢子, 武智遼. 2018. 季節の移り変わりにおける隠岐島産クロモジ(葉および枝)の香気成分について. 近畿大学工学部研究報告. 52. 1-13.
Shimode, A., B. Ashibe, S. Matsumi, M. Yagi, Y. Yonei. 2022. Antiglycative effect and Antiviral effect of Kuromoji (Lindera umbellate Thunb.) extract. Glycative Stress Research. 9(4). 221-
227.
高橋輝昌, 大後恵里菜, 柴崎則雄, 丸山徹也, 古川康二, 安田慎之介, 人見拓哉. 2021. クロモジの精油抽出量および精油成分組成の季節変化. 第132回日本森林学会大会
中薬大辞典. 1988. 上海科学技術出版社・小学館編. 東京.
World Flora Online. 2022.
http://www.worldfloraonline.org/
*1.クスノキ科のリンデラ属以外の主要なハーブ。 学名はWorld Flora Onlineに従った
属 リトゥセア属(ハマビワ属)Litsea
学名 Litsea cubeba Pers.
学名のラテン語読み リトゥセア・クベバ
一般名 アオモジ(青文字)、馬告(マーガオ)、タイワンクロモジ(台湾黒文字)
特徴
リトセア、リツェアクベバ、メイチャンなどの精油名で流通。東アジア~東南アジア原産
日本では近畿以西に自生
台湾では馬告(マーガオ)と呼び、果実を乾燥させてコショウやサンショウのようにスパイスとして利用
属 ラウルス属(ゲッケイジュ属)Laurus
学名 Laurus nobilis L.
学名のラテン語読み ラウルス・ノビリス
一般名 ゲッケイジュ(月桂樹)、ローレル、ローリエ、ベイ
特徴
西アジア、ヨーロッパ南部原産
常緑樹
雌雄異株
古代ギリシャでは、若い枝葉を編んで作った「月桂冠」を大詩人の頭に被せた
葉を食用、香料原料(ローレル油)、薬用とする
精油成分はシネオール(40~50%)など
属 オコテア属 Ocotea
学名 Ocotea quixos Kosterm. ex O.C.Schmidt
学名のラテン語読み オコテア・クイクソス
一般名 オコテア
特徴
中南米原産
常緑樹
樹皮にシナモンのような香りがあり、シナモンのように利用される
葉や萼から精油を採る
属 クリプトカリア属 Cryptocarya
学名 Cryptocarya agathophylla van der Werff
学名のラテン語読み クリプトカルヤ・アガトフィッラ
一般名 ラヴェンサラ
特徴
マダガスカル原産
シノニムであるRavensara aromaticaの属名が一般名になっている
クスノキのケモタイプのラヴィンツァラと混同されているので学名で確認する必要がある
属 ペルセア属(アボカド属)Persea
学名 Persea americana Mill.
学名のラテン語読み ラペルセア・アメリカーナ
一般名 アボカド、ワニナシ(鰐梨)、alligator pear
特徴
中米原産
樹高30mになる常緑樹
中米では紀元前から栽培されていた
和名のワニナシ(鰐梨)は、英名の別名のalligator pearを和訳したもの
日本では近畿以西の団地で栽培される
属 アニバ属 Aniba
学名 Aniba rosaeodora Ducke
学名のラテン語読み アニバ・ロサエオドーラ
一般名 ローズウッド
特徴
南米原産
ワシントン条約で取引規制対象に
楽器材のローズウッドはマメ科の別植物
属 サッサフラス属 Sassafras
学名 Sassafras albidum (Nutt.) Nees
学名のラテン語読み サッサフラス・アルビドゥムノビリス
一般名 サッサフラス
特徴
北米原産
根から精油を採る
主成分のサフロールには毒性があって食品への使用が禁止されている
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum camphora (L.) J.Presl
一般名 クスノキ(樟、楠)、カンファートゥリー
特徴
クスノキは日本の関西以西~ベトナムに分布
かつて樟脳生産のために日本各地で栽培
クスノキの精油の主成分はカンファー(樟脳)
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum camphora (L.) J.Presl
一般名 ホウショウ(芳樟)
特徴
台湾~中国南部原産
常緑樹
葉から精油を採る
精油の産地は日本、台湾
精油名はホーリーフ
クスノキのケモタイプ扱い
ホウショウの精油の主成分はリナロール
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum camphora (L.) J.Presl
一般名 ラヴィンツァラ
特徴
マダガスカル原産
クスノキのケモタイプ扱い
ラヴィンツァラの精油の主成分は1,8-シネオール
ラヴェンサラと混同されるので学名で確認
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum verum J.Presl(シノニム; C. zeylanicum Blume)
学名のラテン語読み
一般名 セイロンシナモン、セイロンニッケイ、シナモン、
特徴
スリランカ、南インド原産
2年目程度の若く細い枝の樹皮を利用するため、薄く密に重ねて巻かれるのが特徴で、特にクィル(quill)と呼ばれる
セイロンニッケイはオイゲノールを4~18%含有し、カッシアやニッケイのような辛味がなく、爽やかな甘味が特徴
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum cassia (L.) J.Presl(シノニム; C. aromaticum Nees)
学名のラテン語読み キンナモムム・カッシア
一般名 カッシア、シナニッケイ、チャイニーズシナモン、トンキンニッケイ
特徴
中国南部~インドシナ原産
樹齢5年から10年ものの幹や枝の樹皮を利用し、薄いものから厚いもの、巻いたもの、塊片、粉末など様々
シナモン類の中で最も強く香り、シナモンの代用のほか、樹皮を桂皮と呼び薬用に
桂皮にはカッシア以外のいくつかの植物が代用される
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum sieboldii Meisn.
学名のラテン語読み キンナモムム・シエボルディイ
一般名 ニッケイ、ニッキ、オキナワニッケイ
特徴
南西諸島、台湾、中国に分布
樹皮があまり香らず根皮を利用
日本ではお菓子の香りづけなどに盛んに栽培された
現在、輸入のカッシアが主力
属 キンナモムム属(クスノキ属、ニッケイ属、シナモン属)Cinnamomum
学名 Cinnamomum yabunikkei H.Ohba
学名のラテン語読み キンナモムム・ヤブニッケイ
一般名 ヤブニッケイ、クロダモ、ジャパニーズシナモン
特徴
関東以西の日本、済州島、中国に分布
常緑樹
ニッケイほど香らないが、精油生産も行われており、自生するハーブとして、活用が期待される
*2-1.日本で見られるリンデラ属(クロモジ属 Lindera)植物。学名はWorld Flora Online(WFO)に従った。WFOに記載のないものはY’Listに従った。
学名 Lindera umbellata Thunb.
学名のラテン語読み リンデラ・ウンベルラータ
種名の意味 散形花序の
一般名 クロモジ(黒文字)、大葉釣樟(ダイヨウチョウショウ)
特徴
クロモジ節。本州の太平洋側、四国、九州の山地に自生、中国、朝鮮にも分布。方言が極めて多く、アキウリ、アブラギ、ウコンハナノキ、オオバギシャ、オガタマ、カワラノカシラ、クマヤナギ、クロギ、クロジシャ、クロセンブギ、クロトモギ、ショウガノキ、スシギ、チシャ、トリキ、トリキシバ、トリノキ、ナクワ、ネソ、ネロ、ハシギ、ハトリキ、ハホゼリノキ、フクギ、ホーノキ、ホヨージ、マツブサ、マンサク、モチノキ、モンジャなど
樹高2~5mの落葉低木で雌雄異株
枝は若いうちは緑色でのちに木化
樹皮に地衣類が黒く斑になることがクロモジの由来。葉長4~12cm、葉幅1.5~4cm
葉脈は側脈が4~6対互生する羽状脈
向軸面ははじめ絹毛を有するがのちに無毛
背軸面では幼葉で絹毛に覆われ、成葉では葉脈以外、散生か無毛
花序は頂芽付近に数個着き、春に葉と同時に黄色の小さな花を開く
果実は直径5~6mmの球形で秋に黒熟する
精油の主成分はリナロール
根にラウノビン、ラウロリトシンを含有する
中国では、大葉釣樟(ダイヨウチョウショウ)のほかに豫(ヨ)、棆(リン)、釣樟(チョウショウ)、烏樟(ウショウ)、枕木(チンボク)、丁丁黄(チョウチョウオウ)、小葉甘橿(ショウヨウカンキョウ)、野樟樹(ヤショウジュ)、光狗棍(コウクコン)とも呼ばれる
中薬では、根もしくは根皮を釣樟根皮(チョウショウコンピ)もしくは光狗棍根皮(コウクコンコンピ)と呼び、さしこみなどの発作的にあらわれる神経性心悸亢進や、脚気、水腫、疥癬、創傷出血、金瘡、急性胃腸カタル、嘔吐性下痢、奔豚など治療や止血に用いられる
学名 Lindera umbellata Thunb.
学名のラテン語読み リンデラ・ウンベルラータ
種名の意味 散形花序の
学名 L. umbellata var. membranacea (Maxim.) Momiy. ex H.Hara et M.Mizush.
学名のラテン語読み リンデラ・ウンベルラータ・メンブラナケア
種名の意味 散形花序の・膜質の
※WFOに記載なしY’Listに記載
一般名 オオバクロモジ(大葉黒文字)、トリキシバ、トリコシバ
特徴
クロモジ節
クロモジの変種とされるが、World Flora Onlineにはこの学名は記載されていない
北海道渡島半島、東北~北陸の日本海側、関東北部に自生
落葉。葉は長楕円形で、クロモジよりも大きく、葉長8~13cm。葉の背軸面の葉脈に軟毛が生える
葉は枝先に集中する
花序は春に新葉と同時に展開し、黄緑色の小花を10個くらい着生する
クロモジとの中間タイプもあって、区別は難しい
クロモジ同様に利用される
学名 Lindera umbellata Thunb.
学名のラテン語読み リンデラ・ウンベルラータ
種名の意味 散形花序の
学名 L. umbellata var. membranacea f. aurantiaca (Murai) Okuyama
学名のラテン語読み リンデラ・ウンベルラータ・メンブラナケア・アウランティアカ
種名の意味 散形花序の・膜質の・橙黄色の
※WFOに記載なしY’Listに記載
一般名 キミノオオバクロモジ(黄実大葉黒文字)
特徴
クロモジ節
オオバクロモジの品種(型;form)とされるが、World Flora Onlineには記載がない。
学名 Lindera sericea Blume
学名のラテン語読み リンデラ・セリケア
種名の意味 絹毛状の
一般名 ケクロモジ(毛黒文字)
特徴
クロモジ節
本州近畿、中国地方、四国、九州の山間地に分布
樹高3mの落葉低木
葉は葉長8~16cm、葉副2~6cmの倒卵形で、クロモジよりも丸みがあり大きい
葉の向軸面には若葉から成葉まで短毛が密生してビロードのような手触りであり、背軸面では若葉で絹毛が密生するものの成葉になると葉脈のみ有毛で、そのほかはやがて無毛に
背軸面には葉脈が隆起する
春に葉の展開と同時に開花し、花色は黄緑
果実は直径6~8mmの球形でクロモジよりもやや大きく、秋に黒熟する
クロモジと同様に利用する
精油の主成分は酢酸ゲラニオール39%、D-カルボン14%、L-リモネン13%、リナロール8%で、リナロール含量がクロモジやオオバクロモジよりも少ないとする報告もある
学名 Lindera sericea Blume
学名のラテン語読み リンデラ・セリケア
種名の意味 絹毛状の
学名 Lindera sericea var. lancea (Momiy.) H.Ohba
学名のラテン語読み リンデラ・セリケア・ランケア
種名の意味 絹毛状の・槍形の
一般名 (synonym; L. lancea (Momiy.) H.Koyama) ヒメクロモジ(姫黒文字)
特徴
クロモジ節
ケクロモジの変種
東海以西の太平洋側~瀬戸内海側、四国東部、九州の山地に自生する日本固有種
樹高3mの落葉低木
葉は葉長5~10cmの倒卵形~倒楕円形
和名は、クロモジよりも葉が小さいことから
新葉には長い絹毛がある
花序は3~5個の花をつけ、春に小さな黄色い花を開く
果実は秋に黒熟
クロモジ同様に利用される
学名 Lindera sericea Blume
学名のラテン語読み リンデラ・セリケア
種名の意味 絹毛状の
学名 Lindera sericea (Siebold et Zucc.) Blume var. glabrata Blume
学名のラテン語読み リンデラ・セリケア・グラブラータ
種名の意味 絹毛状の・槍形の・脱毛した
※WFOに記載なしY’Listに記載
一般名 ウスゲクロモジ(薄毛黒文字)、ミヤマクロモジ(深山黒文字)
特徴
クロモジ節
ケクロモジの変種とされるが、World Flora Onlineには記載がない
関東以西、四国、九州の山地に自生
樹高1~3mの落葉低木
葉は葉長8~16cm、葉幅2~4cmで、クロモジに似た形
向軸面は無毛、背軸面は長軟毛が散生する
背軸面には葉脈が隆起する
クロモジ同様に利用される
学名 Lindera akoensis Hayata ※WFOに記載なしY’Listに記載
学名のラテン語読み リンデラ・アコエンシス
種名の意味 阿緱庁の
※WFOに記載なしY’Listに記載
一般名 ナンバンクロモジ(南蛮黒文字)、Taiwan spicebush
特徴
台湾固有種
種小名のakoensisは、日本統治時代の「阿緱庁(現、高雄市、屏東県)の」を意味する
樹高2.5~3mの常緑低木
葉は、葉長3~5cm、葉幅2~3cmの卵形~楕円形~倒卵形で、光沢がある
主脈は向軸面でへこみ背軸面に隆起する
花序には5~6個の黄緑色の花を春につける
果実は卵形で、赤熟する
学名 Lindera obtusiloba Blume
学名のラテン語読み リンデラ・オブトゥシロバ
種名の意味 鈍頭浅裂の
一般名 ダンコウバイ(壇香梅)、三椏烏薬(サンアウヤク)
特徴
クロモジ節
関東以西、四国、九州に自生するほか、朝鮮、中国に分布
和名の由来は、ダンコウバイはビャクダン(白檀)の香りのするロウバイ(蝋梅)の品種名の転用とされる
方言も多く、花が黄色いことからウコンバナ(鬱金花)、アブラチャンの別名の萵苣からシロジシャ(白萵苣)、訛ってシロジシャグラなど
樹高3~10mの落葉低木。葉は葉長7~12cm、葉幅6~10cm、チューリップの花の絵のような3浅裂する広卵形で、葉柄の付け根から分かれる3脈が目立ち、向軸面には毛が散生、胚軸面には長毛が密生する
花序は前年に伸びた枝から出る短枝に1~3個着生
春に葉よりも先に展開して開花
果実は秋に赤~黒紫色に熟し、裂開しない
幹にシトステロールやスチグマステロール、カンペステロールを含有
枝葉の精油の主成分はリンデロール(l-ボルネオ―ル)
中薬では、樹皮を三鑽風(サンサンフウ)と呼び、血を活かし筋を舒す、瘀血を散らし腫れを消す効能があり、打撲傷、瘀血腫痛の治療に用いられる
学名 Lindera obtusiloba Blume
学名のラテン語読み リンデラ・オブトゥシロバ
種名の意味 鈍頭浅裂の
学名 Lindera obtusiloba f. ovata (Nakai) T.B.Lee学名のラテン語読み リンデラ・オブトゥシロバ・オワタ
種名の意味 鈍頭浅裂の・卵円形の
※WFOで未チェック学名
一般名 マルバダンコウバイ(丸葉壇香梅)
特徴 ダンコウバイで、葉が3分裂せずに丸葉のもの
学名 Lindera obtusiloba Blume
学名のラテン語読み リンデラ・オブトゥシロバ
種名の意味 鈍頭浅裂の
学名 Lindera obtusiloba f. villosa (Blume) Kitag.
学名のラテン語読み リンデラ・オブトゥシロバ・ウィルローサ
種名の意味 鈍頭浅裂の・軟毛の
※WFOで未チェック学名
一般名 ウラゲダンコウバイ(裏毛壇香梅)、ケダンコウバイ(毛壇香梅)
特徴 ダンコウバイで、葉の背軸面に伏毛の残るもの
学名 Lindera aggregata (Sims) Kosterm.
(synonym; Lindera strychnifolia Fern.-Vill.)
学名のラテン語読み リンデラ・アッグレガータ
種名の意味 群生の、密集の
一般名 テンダイウヤク(天台烏薬)、烏薬(ウヤク)
特徴
クロモジ節
中国中南部原産
日本には江戸時代に薬用として渡来、以後暖地に帰化して野化
和名のテンダイ(天台)は、中国浙江省の天台山から、ウヤク(烏薬)は根がカラス(烏)に似るまたは果実がカラスのように黒いから
葉は硬く、葉長3~7cm、葉幅1.3~4cmで広楕円形
3脈が発達
若葉は軟毛に覆われ、成葉では胚軸面に細毛が残り、向軸面は無毛。花序は春、出葉後に黄色い小花を短い側枝に1~3個程度着生
紡錘形の肥大根を芳香健胃薬など薬用とする
中薬では、根を烏薬(ウヤク)といい、気を順わせる、鬱を開く、寒を散らす、止痛する効果があり、胸腹の脹痛、宿食不消化、嘔吐、寒疝、脚気、頻尿などを治す
また、葉を烏薬葉(ウヤクヨウ)といい、頻尿や失禁、寒による腹痛に炒って擦って煎剤で内服するほか、リウマチ性関節炎や打撲による腫痛の治療に搗いて患部に塗布する
さらに、果実を烏薬子(ウヤクシ)といい、陰毒による傷寒の治療に用いる
学名 Lindera glauca Blume.
学名のラテン語読み リンデラ・グラウカ
種名の意味 帯白色の
一般名 ヤマコウバシ(山香ばし)、カワカミコウバシ(川上香ばし)、ソバノキ、牛筋樹(ギュウキンジュ)
特徴
クロモジ節
関西以西、四国、九州に自生するほか、朝鮮半島、中国に分布
和名は、山にあって枝葉に香ばしい芳香を有することから
樹高5~8mの落葉低木。葉は葉長4~9cm、葉幅2~4cmの広楕円~長楕円形で、胚軸面に幼葉では絹毛を密生、成葉では絹毛を散生する
葉脈は羽状
枯葉は秋に落葉せず、春まで残って春に落葉
花序は黄緑色で小さく、4~5月に葉と共に出る
果実は球形(直径6~7mm)で、10月に黒熟する
果実を噛むと辛いため、ヤマコショウ(山胡椒)とも呼ばれる
山陽地方では、葉を粉末にして炒り粉に混ぜて団子にしてタンバ餅を作る
そのほか、各地で葉の粉末で餅を作る慣習があり、モチギ(餅木)やモチシバ(餅芝)とも呼ばれる
葉には精油を0.2%含有し、精油の主成分は、カリオフィレン(15%)、1,8-シネオール(8.2%)、ボルニルアセタート(5.4%)、β-ピネン(1.1%)、カンフェン(0.9%)、リモネン(0.8%)とする報告がある
中薬では、果実を山胡椒(サンコショウ)と呼び、中風不語や喘息の治療に、根を山胡椒根(サンコショウコン)と呼び、リウマチによる麻痺や筋骨の深部痛、心腹冷痛の治療に、葉を山胡椒葉(サンコショウヨウ)と呼び、外傷出血、感冒頭痛発熱、悪瘡腫毒、打撲傷の治療や暑気あたりの予防などに用いられる
学名 Lindera megaphylla Hemsl.
学名のラテン語読み リンデラ・メガフィッラ
種名の意味 大葉の
一般名 オオバコウバシ(大葉香ばし)、ランダイオオバコウバシ(巒大大葉香ばし)
特徴
台湾、中国に分布
和名につく「巒大」は台湾の巒大山から
樹高3~15mの常緑樹
葉は葉長10~23cmの倒披針形~狭倒卵形で、無毛。葉脈の側脈は15~21対
花序は雄花で16個、雌花で12個と多い
果実は直径13~18mmで、黒熟する
木材は木工品や建材に使用、葉と果皮は蒸留して精油を得、種子油を石鹸に。
学名 Lindera communis Hemsl.
(synonym; Lindera formosana Hayata)
学名のラテン語読み リンデラ・コンムニス
種名の意味 普通の
一般名 タイワンコウバシ(台湾香ばし)、香葉樹(コウヨウジュ)
特徴
台湾、中国に分布
樹高3~10mの常緑樹
葉は、葉長5~8cm、葉幅3~5cmの楕円形~卵形で、向軸面は無毛で光沢があり、背軸面はまばらに毛がある
果実は直径8mmの卵形で秋に赤熟する
枝葉を薬用にするほか、果皮から精油を、種子から食用油を得る
種子油は石鹸やマシン油にも
中薬では、本植物の樹皮と葉を香葉樹(コウヨウジュ)と呼び、風を去る、熱を散らす、殺虫、瘡疥治療、止血、接骨、消炎などに用いる
学名 Lindera communis Hemsl.
(synonym; Lindera formosana Hayata)
学名のラテン語読み リンデラ・コンムニス
種名の意味 普通の
学名 Lindera communis var. okinawensis Hatus.
学名のラテン語読み リンデラ・コンムニス・オキナウェンシス
種名の意味 普通の・沖縄の
※WFOで未チェック学名
一般名 オキナワコウバシ(沖縄香ばし)
特徴 クロモジ節
学名 Lindera erythrocarpa Makino
学名のラテン語読み リンデラ・エリトゥロカルパ
種名の意味 赤い果実の
一般名 カナクギノキ(鉄釘の木)
特徴
クロモジ節
箱根以西、四国、九州の山地に自生
和名の由来は、この木をタンスを作る際の釘として用いたことから、赤く緻密な樹皮を金釘に例えたことから、樹皮が鹿の子模様に見え鹿の子の木など諸説ある
樹高6~15mに達する落葉樹
葉は枝先に集まる
葉長6~15cm
葉幅1.5~2.5cmの倒披針形で、クロモジよりも明らかに細くて長い
葉柄に赤味を帯びる
葉脈は中央脈から出る側脈が4~6対で、向軸面でくぼみ、背軸面で隆起する。向軸面は無毛、背軸面では葉脈上に長毛があるが、成葉ほど無毛に
学名 Lindera triloba Blume
(synonym; Parabenzoin trilobum Nakai)
学名のラテン語読み リンデラ・トゥリロバ
種名の意味 3片の
一般名 シロモジ(白文字)
特徴
シロモジ節
静岡、長野以西、四国、九州に自生するほか、中国中部に分布する
方言が多く、アカジシャ、クロジシャ、ジシャグラ、ムラダチ、ニオトモギ、オニトモギ、オオトモギ、シロトモギ、アツマンダ、ハレハレ、ヤカラメ、シロキ、ツエギ、スデノキ、メクサレギなどと呼ばれる
樹高6mの落葉低木
葉はクワのように3中裂(まれに5裂で枝の基部の葉は分裂しない)し、ダンコウバイと違って葉の基部が細い倒卵形で、葉長6~13cm、葉幅6~10cm
花序は短い側枝に1~4個、淡黄色の花を着生し、春に新葉展開と同時もしくは先立って開花
果実は直径10~12mmの球形で、内部に種子を1個含有し、不規則に裂開して種子が出る
薪や杖、日用工芸品などに利用されるほか、灯用に種子からシロモジ油が採取された
学名 Lindera triloba Blume
(synonym; Parabenzoin trilobum Nakai)
学名のラテン語読み リンデラ・トゥリロバ
種名の意味 3片の
学名 Lindera triloba f. integra (Sakata)
※WFOに記載なしY’Listに記載
学名のラテン語読み リンデラ・トゥリロバ・インテグラ
種名の意味 3片の・全縁の
一般名 マルバシロモジ(丸葉白文字)
特徴 シロモジ節。シロモジの品種で、葉が中裂せずに丸葉のもの
学名 Lindera praecox (Siebold & Zucc.) Blume
学名のラテン語読み リンデラ・プラエコックス
種名の意味 早熟な、早咲きの
一般名 アブラチャン(油瀝青)、February spicebush
特徴
シロモジ節
本州、四国、九州に山地に自生するほか、中国南部にも分布
和名は油と瀝青(れきせい;石油やアスファルトなどの天然の炭化水素類)から成り、果実や木材から油を絞って灯に用いたことに由来
シロモジ同様の方言が多く、イヌムラダチ、ゴロハラ、ジシャ、ズサ、ムラダチなどとも呼ばれる
樹高3~6mの落葉低木
葉は葉長4~9cmの楕円形で両面無毛
葉脈は羽状
葉柄が赤味を帯びる
枯葉は冬に落葉する
花序は前年に伸びた枝から出る短枝に1~3個着生
学名 Lindera praecox (Siebold & Zucc.) Blume
学名のラテン語読み リンデラ・プラエコックス
種名の意味 早熟な、早咲きの
一般名 アブラチャン(油瀝青)、February spicebush
学名 Lindera praecox f. pubescens (Honda) H.Ohba
※WFOで未チェック学名
学名のラテン語読み リンデラ・プラエコックス・プベスケンス
種名の意味 早熟な、早咲きの・細軟毛ある
一般名 ケアブラチャン(毛油瀝青)
特徴
シロモジ節
本州の日本海側~九州に自生
葉の背軸面の中央脈と側脈に毛が垂直に生える
*2-2.北米のリンデラ属植物
学名 Lindera benzoin (L.) Blume
学名のラテン語読み リンデラ・ベンゾイン
種名の意味 ベンゾイン(安息香)の
一般名 アメリカクロモジ、spicebush, wild allspice, Benjamin bush
特徴
北米原産
オンタリオ州、メイン州、ニューヨーク州を中心とする北東部、ミシシッピー川流域の中南部、フロリダ州北部の南部に分布
樹高2~4mの落葉低木
葉は葉長6~15cm、葉幅2~6cmの楕円形
葉は秋に黄色く黄葉して落葉
花序は、クラスターを形成し、春に葉の展開よりも先に開花
果実は秋に赤熟
種子休眠があるため、発芽には、吸水種子を5℃で3~4か月置いて休眠打破する必要がある
枝葉と果実に香りがあり、枝葉をティーに、果実をオールスパイスの代用などのスパイスとする
アメリカンインディアンは薬用とする
学名 Lindera melissifolia Blume
学名のラテン語読み リンデラ・メリッシフォリア
種名の意味 蜂蜜の葉の
一般名 ポンドベリー(pondberry),southern spicebush
特徴
北米原産
アーカンソー州やミシシッピー州を中心としたミシシッピー川流域と、ノースカロライナ州、サウスカロライナ州の東海岸沿岸部、ジョージア州などの沼地を中心に分布
樹高2mの落葉低木
葉は垂れ下がり、基部がふくらみ、葉脈が目立ち、最も基部から出る側脈がほかの側脈と並行でない点が、北米原産の他の2種と異なる
春、葉の展開前に淡黄色の花を開く
果実は直径12mmの楕円形、秋に赤熟する
葉にはサッサフラスに似た香りがある。
学名 Lindera subcoriacea Wofford
学名のラテン語読み リンデラ・スブコリアケア
種名の意味 やや革質の
一般名 bog spicebush
特徴
北米原産
ルイジアナ州~バージニア州の米国南東部の淡水湿地林と沿岸平野に分布
樹高4mの低木
葉は、葉長8cmの広楕円形
花は黄色
果実は直径10mmの楕円形で、濃赤色に熟す
各地で希少種となっている
*2-3.中薬利用されるリンデラ属植物。日本に自生するものは*2-1に記載
学名 Lindera angustifolia Cheng
学名のラテン語読み リンデラ・アングスティフォリア
種名の意味 細葉の
一般名 鶏婆子(ケイバシ)、見風消(ケンフウショウ)
特徴
中国原産
樹高2~8mの落葉低木
葉は葉長8~14cm、葉幅2.5~3.5cmの楕円状披針形~楕円形
向軸面は無毛で背軸面には葉脈に毛がある
葉脈は羽状
花序には2~7個の花がつき、春に開花
果実は直径8mmの球状で秋に黒熟
中薬では、枝、葉あるいは根を狭葉山胡椒(キョウヨウソンコショウ)と呼び、気を行らす、風を去る、腫れを消す効能があり、腹痛、リウマチ骨痛、癰腫、疥癬、咳、痰、かゆみ、蕁麻疹、手足の痛みなどの治療に用いる
学名 Lindera fragrans Oliv.
学名のラテン語読み リンデラ・フラグランス
種名の意味 芳香の
一般名 香葉子(コウヨウシ)、香樹(コウジュ)
特徴
中国原産
樹高1~3mの常緑低木
葉は葉長5~9cm、葉幅2cmの披針形
葉脈は3出脈
花序は2~7個の黄色い花からなり、花は香る
果実は直径1cmの長卵形で秋に黒熟する
中薬では、樹皮あるいは枝、葉を香葉子(コウヨウシ)と呼び、樹皮は経を温め脈を通し、気を行らし結を散らす、枝葉は気を順わせ、胃痛、胃潰瘍、消化不良を治すとされている
学名 Lindera reflexa Hemsl.
学名のラテン語読み リンデラ・レフレクサ
種名の意味 背曲した
一般名 山橿(サンキョウ)
特徴
中国原産
樹高1~6mの落葉低木
葉は、葉長4~12cm、葉幅2~5cmの倒卵状楕円形で、背軸面は柔毛に覆われるが老木になると無毛に
果実は直径7mmで秋に濃紅色に熟す
中薬では、根あるいは根皮を山橿根(サンキョウコン)と呼び、止血、腫れを消す、気を行らし止痛する効果があり、疥癬、風疹、胃痛を治す
学名 Lindera setchuenensis Gamble
学名のラテン語読み リンデラ・セトゥクエネンシス
種名の意味 支那四川省の
一般名 四川釣樟(シセンチョウショウ)、石楨楠(セキテイナン)
特徴
中国四川省原産
樹高17mの高木
葉は葉長14~16cm、葉幅2~3cmの線状長楕円形で、葉脈の脇に短い柔毛があり、葉脈は向軸面でくぼんで背軸面で隆起している
果実は直径1cmの卵形。中薬では、根を石楨楠根(セキテイナンコン)と呼び、塗布により瘡毒の治療に用いる。
学名 Lindera chunii Merr.
学名のラテン語読み リンデラ・クニイ
種名の意味 中国の植物学者陳煥鏞(Chun,Woon-Young)への献名
一般名 白膠木(ハクコウボク)
特徴
中国原産
樹高6m
根は紡錘形に膨れる
葉は葉長5~10cm、葉幅2~4cmの楕円形で、先端が尾のように伸びる鋭先形、3出脈、向軸面では葉脈に柔毛、背軸面では密に柔毛がある
果実は黒熟する
中薬では、本植物の根を千打錘(センダスイ)と呼び、気を行らし止痛する、瘀を散らし腫れを消す効能があり、打撲による腫痛、リウマチによる骨の痛み、胃腸脹痛の治療に用いられる
学名 Lindera pulcherrima var. hemsleyana (Diels) H.P.Tsui
学名のラテン語読み リンデラ・プルケッリマ・ヘムスレヤナ
種名の意味 非常に美しい・独の植物学者W. B. Hemsleyへの献名
一般名 峨眉山胡椒(ガビサンコショウ)
特徴
中国原産
四川、雲南、貴州、広西などに分布
『中薬大辞典』に記載の学名はシノニムのLindera gambleana C.K.Allen
名称は原産地の一つである四川省の峨眉山に由来
葉は葉長9~13cm、葉幅3.5~5.5cmの楕円形で、3出脈、向軸面は光沢があり、背軸面は細毛があって銀白色
中薬では、本植物の根と葉を白背葉(ハクハイヨウ)と呼び、止血し、肌を生じ、石を排しのけ、気を順わせ中を寛やかにし、食滞を消し止痛する効能があり、小児の尿結石、刃物による切り傷の治療に用いられる
学名 Lindera caudata Diels
学名のラテン語読み リンデラ・カウダータ
種名の意味 尾状の
一般名 香面葉(コウメンヨウ)
特徴
中国原産
雲南、広西などに分布
樹高4~12m
葉は葉長6~9cm、葉幅2~3cmの卵円形~長円状楕円形で、先端は細長く尖る尾状鋭先形、葉脈は3出脈、背軸面に黄色の短い柔毛を密生
果実は直径5~6mmの球形
中薬では、根、葉、樹皮を毛葉三条筋(モウヨウサンジョウキン)と呼び、止血し肌を生じる、気を理え止痛する効能があり、打ち身、捻挫、内出血、腫れ、出血、胸痛による咳嗽に、煎剤を内服またはついて塗布もしくは研って粉末にして用いる。
学名 Lindera cercidifolia Hemsl.
学名のラテン語読み リンデラ・ケルキディフォリア
種名の意味 Cercis(ハナズオウ属)の葉に似た
一般名 紅葉甘橿(コウヨウカンキョウ)、桂子樹(ケイシジュ)
特徴
中国原産
樹高10mの落葉高木
葉は、葉長3~11cm、葉幅2.5~8cmの卵円形で、先端が先割れスプーンのように3浅裂するが、全縁のものもある
葉脈は3出脈で、幼葉は両面とも柔毛に覆われ、成葉ではほぼ脱落する
果実は球形で暗紅色に熟す
中薬では、葉を矮脚楓葉(ワイキャクフウヨウ)と呼び、瘡毒の治療につきつぶして塗布する
クロモジの葉。5月6日撮影。枝先に葉が輪生しているように見えるが、冬期に節間が詰まったためで、互生している。暖かくなると次第に節間が伸長して互生が明らかになる。
クロモジの花。はじめ、上を向いていた葉はやがてやがて横に展開する。果実が形成されると果柄が上向きに立ち上がり、果実が葉の上に現れる。
クロモジの花。春に出葉と同時に開花する。はじめは葉が上を向き、花は下に垂れ下がる。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第64号 2023年6月