ストレスからくる不調を知る - アダプトゲン: ストレスへの適応力を高めよう
アダプトゲンには、ストレスに対する適応力を高める働きがありますが、ストレスが加わった時、体の中では何が生じるのでしょうか?
ストレスによって引き起こされる体の反応や現れやすい不調を知り、適切に対処しましょう。
“ホメオスタシス”が崩れた時に心身に様々な不調が起こる
対人関係などによる精神的ストレス、気象変化や生活リズムの変化によるストレス、感染、過労、栄養不足など、私たちは日々ストレスがある状態で生きています。それでも健康を維持できているのは、ストレスから体を守るシステムが働いているお陰です。
そもそも私たちの体には、環境の変化に適応し、体内の環境を一定の状態に維持する仕組みが備わっています。これを「ホメオスタシス」(生体恒常性)といいます。この働きを支えているのが、自律神経系、内分泌系(ホルモン系)、さらに免疫系です。これらは互いに影響し合ってバランスをとりながら働いています。
何らかのストレスが加わると、脳からの指令によって自律神経の働きが活発になったり、副腎ホルモン(抗ストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールなど)の分泌が促進されたりすることで、ストレスに対抗します。
ところが長期に過度なストレスを受けると、生体が疲弊して対抗しきれなくなり、ホメオスタシスが崩れて段階的に適応力が衰えてきます。このアンバランスな状態が続くことで、様々な心身の不調が現れることになります。
長期に過度なストレスを受けると、自律神経系や内分泌系、免疫系に影響を及ぼし、ホメオスタシスが維持できなくなり、心身に様々な不調が現れることになります。
症状がつらい場合や長引く場合は受診を
ストレスで起こりやすい症状の代表は、倦怠感、頭痛、肩こり、冷え、動悸、めまい、不眠、胃腸の不調など自律神経の乱れによる自律神経失調症状です。また、副腎機能の疲弊で各種ホルモンの分泌が低下していきます。細胞のエネルギー代謝も低下し、疲労が改善しにくく疲れやすくなり、酸化ストレスも高まって活性酸素の害に抵抗しきれなくなります。さらに、免疫の働きも乱れることで、感染症にかかりやすくなったり、アレルギー性の疾患を起こしやすくなったりします。
こうした身体症状のほか、気分の落ち込みやイライラ、ネガティブな思考など、感情や考え方の変化として現れたり、依存、引きこもり、過食といった行動の変化として現れたりすることもあります。
ストレスを自覚できていれば、ストレスのもとから距離を置いたり、気分転換を図ったりして対処することもできますが、時には自分でも気づかないうちにストレスをため込み、心や体に症状として現れることがあります。症状がつらい場合や、疲れているのに眠れない、何をしても楽しめないといった症状が長く続く場合は、早めに医療機関を受診することが大切です。
アダプトゲンの定義
次の3つの条件を満たすものがアダプトゲンとして分類されます。
- 無毒であり、必要以上に正常な身体機能に影響を与えないもの
- 体内で様々なストレス要因に対する耐性を増加させるもの
- 生理機能が基準値から外れても、それを生理学的に正常化させるもの
アダプトゲン作用
- ストレス緩和
- 疲労回復
- 体力増強
- 免疫力向上
イラスト = 二階堂 ちはる
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第65号 2023年9月