2023.10.11

第7回学術フォーラム:メディカルハーブによる新型コロナウイルス抑制作用

日本メディカルハーブ協会 理事・学術委員

村上志緒

2023年7月9日(日)、第7回学術フォーラムが掲題のテーマでオンラインにて開催されました。

ここ三年間、私たちは新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、この感染症の罹患やその後の後遺症に悩まされ、健康状態についての不安や生活制限なども含め、大きな影響を受けてきました。このパンデミック下において、毎日の健康管理や予防に努めながら、植物療法についての可能性を再認識し、毎日の健康管理や予防、罹患時のケアなどにメディカルハーブを活用された方も多いと思います。学術研究においても抗新型コロナウイルス作用を明らかにすることを目的とした研究が多く発表されています。

今回のフォーラムは、新型コロナウイルス感染症に関する研究として以下の2題の講演が行われました。

小川基彦先生(国立感染症研究所)「抗新型コロナウイルス作用をもつメディカルハーブの探索」

これまでに他のウイルスに対して、抗ウイルス作用をもつことが報告されているメディカルハーブの新型コロナウイルスへの作用に対する効果を明らかにすることを目的に行われた研究で、効果が期待されるフィトケミカルによる処理による新型コロナウイルスの感染抑制効果について評価し、結果としてオイゲノールに顕著な抗新型コロナウイルス作用が確認されたという報告でした。

オイゲノールはクローブやシナモン、ナツメグといったスパイスなどにも多く含まれており、医薬品だけでなく、食品などへの応用も期待できるとのことでした(本研究は、当協会の研究助成制度により実施されました)。

佐藤拓己先生(東京工科大学応用生物学)「ローズマリー由来のカルノシン酸によるアンチエイジング効果」

古くから親しまれているメディカルハーブであるローズマリーに含まれるジテルペンのカルノシン酸に注目し、特に新型コロナウイルス感染症の後遺症(Long-COVID)についての効果を検証した研究についての報告でした。

カルノシン酸は、感染の際に新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質が結合するACE2の占有によるウイルスの結合抑制と、炎症の誘発に関連するNLRP3のダウンレギュレートによるサイトカインストーム抑制との二つのルートから抗新型コロナウイルス抑制の効果が得られたことが報告されました。

カルノシン酸は脂溶性のローズマリーエキスに含まれ、Long-COVIDだけでなく、加齢に伴い見られがちな、肥満や脳機能の低下などにも効果が認められ、今後の応用が期待されます。

林真一郎理事長も加わったパネルディスカッションでは、これらの効果を持つフィトケミカルの構造的な特徴から、今後どのように活用できるかといったことなど、有意義な議論が交わされました。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第65号 2023年9月