2023.10.21

大酒飲みの若者の大脳皮質は薄く、神経伝達に変化

思春期の間、脳は急激に発達し、特にアルコール摂取の悪影響を受けやすくなる。東フィンランド大学で行われた最近の追跡調査の結果によると、思春期に大量飲酒を始めた若者は皮質灰白質の厚さが薄く、神経伝達が変化していたという。『Alcohol: Clinical and Experimental Research』誌に掲載された。

これまでの研究では、思春期に繰り返される暴飲暴食は、灰白質の体積の減少や抑制性の神経伝達の増加など、成人期の中枢神経系の変化と関連していることが示されている。本研究では、灰白質の厚さと神経伝達との関連が初めて調査されたという。

この研究には、大量飲酒歴のある26人と、アルコールをほとんどまたはまったく摂取しない21人の対照者が含まれていた。研究参加者は13~18歳から、25歳頃までの10年間追跡調査された。灰白質の体積の変化は脳の磁気共鳴画像から測定され、皮質活動は同時の経頭蓋磁気刺激と脳波検査を用いて測定された。

研究チームは、思春期に大量飲酒歴のある若者では、アルコールをほとんどまたはまったく摂取しなかった若者と比較して、脳のいくつかの領域で平均灰白質の厚さが低く、平均N45電位が高いことを観察した。N45電位は、抑制性GABA及び興奮性グルタミン酸神経伝達物質系の活性を反映している。大量飲酒グループでは、灰白質の厚さが薄いほど、特に前頭葉と頭頂葉でN45電位の増加と関連していたという。

この結果は、思春期以来の大量飲酒歴のある若者に観察される大脳皮質の薄化が、特に前頭葉と頭頂葉における神経伝達の変化に関連していることを示しているという。ただし、これらの発見の根底にあるメカニズムを評価するには、さらなる研究が必要である。
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/acer.15119

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第65号 2023年9月