2024.1.30
「医療情報の宅急便」
皆さん、こんにちは。今回は『食事のせいで死なないために』(NHK出版)の著者である医学博士のマイケル・グレガー氏について取り上げます。彼は食生活が健康に与える影響が研究では明らかになりながらも、実際の医療に取り入れられない理由に診療報酬制度にあることに気づきます。薬を使えば使うほど診療報酬が支払われる一方で、食事指導をいくらしても診療報酬は支払われないのです。
さらに数ある医学部のうち栄養学を独立した科目として教えている大学は四分の一程度にすぎないことを知ります。そこで彼は医学生や医療従事者を対象にして熱心に講演活動を行います。しかし、ある時に彼はそうした活動よりもインターネットや書籍で一般の人々に直接働きかけ、正しい知識を習得してもらうほうがはるかに効果的であると思うようになったのです。要するに情報を医療職経由で一般の生活者に届けるのではなくダイレクトに届けるのです。わが国でもこうした「医療情報の宅急便」を配信する医師や科学者が現れ始めています。医療系の大学が国家試験合格至上主義に陥り、今や「最も情報のないエリア」と化してしまったというのは言い過ぎでしょうか。
少なくとも食生活に関しては医師が患者を教育するのではなく、患者が医師を教育する時代を迎えつつあるようです。マイケル・グレガー氏の著書には「あなたの病気を治すのはメスではなく、フォークだ!」というコピーが添えられています。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第66号 2023年12月