ハーブの力を介護に活かす
Using herbs in nursing care
ケアする人とケアされる人のために
ハーブの力を介護に活かす
高齢者の介護に活かせる大きな可能性を秘めているメディカルハーブ。
介護する人自身のストレスケアや健康管理にも強い味方となり
植物の力でケアする人とケアされる人の両方を支えてくれます。
高齢者が自分らしく暮らせる介護を
日本では人口の高齢化に伴い、介護や支援を必要としている人が増えています。厚生労働省の報告によると、2021(令和3)年度の「要介護または要支援の認定を受けている人」は約690万人に上り、20年前のおよそ3倍となっています。介護の主な担い手は、約半数が同居している家族で、そのうち7割が女性という結果でした。
介護とは、高齢や障がいなどで日常生活に不自由がある方に対して、安全かつ快適に日常生活を送れるようにサポートをすることを指します。病気やけがの治療・回復を目的とする医療と違い、身体介助だけでなく精神面の援助も含み、さらに生活者としての側面も尊重しながら行うケアです。
近年、特に高齢者の介護では、QOL(Quality Of Life=「生活の質」)が重要視されるようになってきました。「QOLを保つ」「QOLを高める」と表現されるように、たとえ介護が必要になっても、幸福感や満足感をもって自分らしく暮らせるようサポートしていくことが大切とされます。
要介護・要支援認定者数の推移
メディカルハーブは高齢者ケアに最適
高齢者の健康上の特徴は、細胞の老化によって様々な臓器の機能が低下し、複数の病気や不調を抱えるケースが多いことです。そのため服用する薬も増え、体への負担や副作用の危険性も高まります。メディカルハーブは消化器系や代謝系に負担が少なく、ソフトに働きかけて全体的に生命力(自然治癒力)を高めてくれるので、こうした状態に適応しやすい利点があります。
メディカルハーブには種類によって特徴的な効能がありますが、すべてのハーブは共通して「抗酸化作用」をもっています。抗酸化作用とは、老化や生活習慣病を進める原因となる活性酸素の働きを抑えたり、除去したりする作用です。さらに、香りは脳に働きかけて感情や記憶を呼び起こしたり、リラックス効果をもたらしたりしてくれます。様々な点で高齢者ケアに最適であり、高齢者のQOLの維持・向上が期待できます。
メディカルハーブは軽い不調の改善や健康管理、病気の予防といった範囲で用いるものですが、中には医薬品に準じるものや、医薬品にできないことができるものもあります。それぞれのハーブの働きを理解し、上手に介護に活用していきましょう。
「ケアラー」自身のケアにもメディカルハーブを活かす
「ケアラー」とは、介護や看病、療育が必要な家族や身近な人を無償でケアしている人をいいます。介護は肉体的にも精神的にも重労働であり、「介護疲れ」、「介護うつ」といった言葉があるように、ケアラーが心身に不調をきたすケースは少なくありません。まずはケアラー自身がストレスケアや健康管理を心がけることが大切ですが、ここでもメディカルハーブが役に立ちます。
また、自分のための時間がなかなかとれない場合も、例えば精油を使ったマッサージを施す時は、体に触れることでコミュニケーションが生まれ、ケアされる人だけでなく、ケアする人にも癒しとなります。介護をしている中で一緒に楽しみながらハーブを使っていくとよいでしょう。
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第68号 2024年6月