2024.8.30

高齢者に起こりやすい症状とハーブ

 高齢者ケアにメディカルハーブを活かすためには、漠然とではなく目的をもって使うことが大切です。その時々の体調や気分にも配慮し、何が必要なのかを考え、それに対応するハーブを選びましょう。高齢者に起こりやすい症状に役立つハーブやアロマをご紹介します。

ハーブ

ハーブティーで摂るのが一般的ですが、ハーブの種類によってはサプリメントでの摂取が適しています。飲み慣れないものは受けつけにくいので、あくまで好みを尊重することが大切です。薬を服用している場合は、相互作用に気をつけましょう。

アロマ(精油)

マッサージ(アロマトリートメント)や芳香浴は、リラックス効果や鎮静効果をもたらします。湯に精油をたらしてアロマバスにしたり、手浴や足浴を行ったりするのもよいでしょう。蒸しタオルに使えば、湿布や清拭(体を拭くこと)にも役立ちます。

認知症・記憶力の低下に

ハーブ

◆イチョウ葉のサプリメントが第1選択。その他にローズマリーやサフラン、セージなど血流を促すハーブをティーや料理で。
◆認知症の周辺症状の抑うつには、サフラン、セントジョンズワート、ペパーミントを。不穏・興奮にはオレンジフラワー、ジャーマンカモミール、リンデンを。

アロマ

◆脳の活性化には、ローズマリーやレモンを。鎮静やリラックスには、ラベンダーやオレンジを。
◆ユズやヒノキなどの国産の精油は過去のエピソードを想起させるので、記憶力の低下に有効です。
◆香りの刺激には平衡感覚を維持する効果もあるため、転倒防止にも役立ちます。

消化器系の不調に

ハーブ

◆消化機能を高めるためには、アーティチョークやダンディライオン、ウコンなどの強肝・利胆ハーブを。
◆胃の痛みや膨満感には、ジャーマンカモミールを。
◆便秘には、ペパーミント、ローズヒップ、マルベリーを。
◆ダンディライオンには便を柔らかくする作用もあるので、便秘に対しても有効です。

アロマ

◆便秘には、ラベンダー、ローマンカモミールなどの鎮静・鎮痙系の精油を加えたオイルでお腹周りのマッサージを。
◆高齢者に多い弛緩性の便秘には、ローズマリーなど刺激を与える精油が有効な場合もあります。

泌尿器系の不調に

ハーブ

◆膀胱炎や尿道炎などの尿路感染症には、クミスクチンやスギナなどの利尿ハーブや免疫力を高めるエキナセアをティーで。尿道の細菌の繁殖を防ぐクランベリーを無糖のジュースまたはサプリメントで。
◆男性の前立腺肥大による頻尿や残尿感、排尿痛などには、ソウパルメットをサプリメントで。クミスクチンやスギナ、ネトルのティーも有効です。

アロマ

◆膀胱炎や尿道炎には、ベルガモットなどの柑橘系の精油や、抗菌作用のあるサンダルウッドやティートリーを。バスソルトで半身浴や足浴をすると温まって痛みが和らぎ、不快な気分も解消します。

疲労・倦怠感・無気力に

ハーブ

◆エゾウコギなどのアダプトゲンハーブや滋養強壮効果をもつマカ、ダンディライオン、アンジェリカ、ローズマリーなどを。
◆抑うつや不眠を伴う場合は、パッションフラワー、セントジョンズワート、リンデンなどの向精神ハーブを。

アロマ

◆日中はリフレッシュ系の精油(ローズマリー、レモン、グレープフルーツなど)を用い、夕方から夜にかけてはリラックス系の精油(オレンジ、ローマンカモミールなど)を用いて芳香浴やアロマトリートメントを行うと、1日のリズムが整いやすくなります。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第68号 2024年6月