2024.12.6

ハーブ&アロマで高齢期を健やかに

一緒に楽しむ気持ちで使えば
薬効以上の効果が得られる

 ご高齢の方のケアにメディカルハーブを活かしたい——。そう思ったら、まずは一緒にハーブティーを飲むことから始めてみませんか。快い香りと味を楽しむ中で自然に会話も生まれ、コミュニケーションがスムーズになるなど、ハーブの薬効以上の効果が得られることもあります。そしてケアラーさん自身がリラックスすることは、必ずよりよいケアにつながります。

 ハーブは、種類によっては飲みにくいと感じる方もおられますが、他のハーブとブレンドすると飲みやすくなることがあり、摂取できる成分も増えて効果の幅も広がります。麦茶や紅茶、緑茶とブレンドするのもおすすめです。ハーブは効能も大事ですが、好みに配慮するようにしましょう。

 精油も、心地よく感じる香りでなければ逆にストレスになってしまうため、好みを優先して選ぶことが大切。精油でアロマトリートメント(マッサージ)を施す際は、事前にパッチテストを行うと安心です。また、健康状態によっては不調をもたらすこともあるため、病気の治療や投薬を受けている場合は、医師に確認してください。

01
エゾウコギのティー
疲労や心身の活力低下に
〔用具〕ティーポット、カップ
〔ドライハーブ〕
エゾウコギ••• 2〜3g
熱湯 •••200mL
1.ポットにエゾウコギを入れ、熱湯を注いだらふたをして3分ほど抽出する。
2.カップに注ぎ入れる。このティーを1日3回服用する。
POINT
エゾウコギ(シベリアニンジン)は、ストレスに対する適応力を増強する「アダプトゲン効果」で知られるハーブ。体全体に働きかけて心身の活力を高め、疲労回復、滋養強壮に効果を発揮します。免疫力を高めたい方や更年期の諸症状を緩和したい方、仕事や運動のパフォーマンスを向上させたい方にも適しています。

02
蒸気浴
かぜやインフルエンザの予防に
〔用具〕マグカップ、またはボウル(耐熱性のもの)
熱湯•••適量
〔精油〕青森ヒバ、またはユーカリ•••1滴
1.マグカップやボウルに熱湯を注ぎ、精油をたらす。
2.顔を近づけて、ゆっくりと蒸気を吸入する。
POINT
のどがいがらっぽい時や痰が絡む時、鼻詰まりがある時などにも有効です。熱湯を使うので、やけどには十分注意を。また、蒸気をいきなり吸い込むと咳き込んだりして危険なので、必ずひと呼吸おいてから吸入してください。目は閉じて行うようにしましょう。


03
アロマシール
記憶力の低下や認知症予防に
〔用具〕アロマシール
〔精油〕日中用
ローズマリー•••2滴
レモン•••1滴
〔精油〕夕方〜夜用
ラベンダー•••2滴
オレンジ•••1滴
1.日中用、夕方〜夜用の精油をそれぞれブレンドする。
2.ブレンドした精油をアロマシールに滴下し、服などに貼る。POINT
日中はリフレッシュ系の精油を、夕方から夜にかけてはリラックス系の精油を用いることでリズムをつくり、脳を活性化させます。同様の方法でディフューザーを使った芳香浴やマッサージもおすすめです。

04
サシェ
不安感が強い時や緊張からくる不眠に
〔用具〕不織布のお茶パック
〔ドライハーブ〕
ローズレッド•••5g
レモンバーベナ(ベルベーヌ)3g
1.ローズレッドとレモンバーベナ、またはラベンダーとレモンバームを混ぜて、お茶パックに詰める。
2.手でもんで香りを楽しんだり、枕元に置いたりする。
POINT
ほのかな香りが優しく広がるサシェ(匂い袋)は、強い香りが苦手な方にもおすすめのアイテムです。ローズレッド、レモンバーベナ、ラベンダー、レモンバームは、いずれも鎮静作用をもち、高ぶった気持ちを鎮め、不安や緊張、ストレスを和らげてくれます。 

05
ルームスプレー
室内の臭い対策に
〔用具〕スプレー容器
〔精油〕
ペパーミント•••10滴
ジュニパー•••5滴
消毒用アルコール•••50mL
または
和ハッカ•••10滴
北海道モミ•••5滴
1.スプレー容器に消毒用アルコールを入れる。
2.ペパーミントとジュニパー、または和ハッカと北海道モミの精油をたらしてよく振り混ぜる。
POINT
使用する精油は上記の他、ティートリー、ユーカリ、ヒバ、ヒノキ、サイプレスなど“樹木系”と呼ばれるものがおすすめ。森の中をイメージさせるさわやかな香りで、リラックス効果も得られます。

06
ローズウォーターを使ったスキンケア
乾燥肌やかゆみの予防・改善に
〔用具〕スプレー容器
ローズウォーター•••適量
マカダミアナッツオイル•••適量
1.肌を清拭などで清潔にした後、ローズウォーターをなじませて保湿する。
2.マカダミアナッツオイルを薄く塗る。
POINT
バラ(ローズ)の芳香蒸留水は、細胞の再生促進、保湿、収れん作用、ホルモンバランスを整える作用、抗菌作用などが認められ、上品で華やかな香りにはリラックス効果もあります。購入する際は、不純物の混じっていない高品質なものを選びましょう。最後に塗るオイルは、ホホバオイルや椿油などでもOKです。

夏でも保湿を心がけて
乾燥肌やかゆみの予防を

 高齢者に多いトラブルの1つに、乾燥肌やかゆみがあります。これは、加齢と共に皮膚の水分や皮脂が減少し、皮膚を保護するバリア機能も低下してしまうことが原因です。夏でもお風呂上がりや清拭の後などには保湿剤を使用するようにし、肌を乾燥から守りましょう。

 スキンケアに活用したいのが、芳香蒸留水。高温の水蒸気で植物に含まれる成分を抽出する「水蒸気蒸留法」で作られた水溶液です。アロマウォーター、ハーブウォーター、フローラルウォーターとも呼ばれ、原料植物がローズの場合、「ローズウォーター」という名で販売されていることもあります。芳香蒸留水は精油より低刺激なため、敏感肌の方や高齢者、赤ちゃんにも安心です。そのまま化粧水代わりに使えますが、グリセリンを1〜3%ほど混ぜると、とても保湿力のある香りのよい化粧水になります。また、2〜5倍の水で希釈すれば、口腔ケアにも利用できます。


初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第68号 2024年6月