2024.10.11

第2弾 ハーブで減塩 食環境の改善のすすめ

JAMHA SDGs委員会

佐藤 香

 厚生労働省では2022年3月、産学官の協力を得ながら、国民に向けて食生活の改善を行うために「健康的で持続可能な食環境イニシアチブ」事業を設置しました。この事業では、日本が注力し取り組むべき主な栄養課題として、「食塩の過剰摂取」・「若年女性のやせ」・「経済格差に伴う栄養格差」の3つを挙げ、JAMHAでは、メディカルハーブの機能性や特徴を生かすことのできる「食塩の過剰摂取」の解決を向けての取り組みを行っています。今号はその第2弾としてハーブ・スパイスを活用し、摂取する塩分量を減らすメニューをご紹介します。

塩の構成元素であるナトリウムは、健康的な身体の維持に欠かせないミネラルです。しかし、食塩の過剰摂取は健康を損なうため、適正な1日の摂取量を守ることが推奨されています。

食塩の摂りすぎは様々な病気を引き起こします。ナトリウムが多く存在すると、血液では希釈しようと水分をため込むため、血液量が増え、血管への圧力が高くなり高血圧となり、脳梗塞や心臓病などの動脈硬化を原因とした病気を発症するリスクが高まります。また過剰なナトリウムを排泄するため腎臓に負担がかかり、腎臓機能が低下し腎不全、透析療法や腎移植へと進むことも知られています。ピロリ菌がいる状態での塩分濃度の高い食事をすると胃がんリスクの高くなることが知られています。日本では、死亡全体の2.7%、がんによる死亡の2.2%、循環器疾患による死亡の7.9%の原因が食塩の過剰摂取と推定されています。

2019年の国民健康・栄養調査結果、日本人の毎日の食塩摂取量は男性10.9g、女性9.3gと報告されています。1日当たりの食塩摂取量の推奨値について、厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧学会では男女とも6g未満、WHOでは5g未満としています。これらの目標値に近づき、健康的な毎日のため、1日約3g(小さじ約半分)の減塩をハーブ・スパイスの力を使って実現していきましょう! 

 食事のおいしさを決めるのは食味・風味・味覚などの複合的な要因です。少ない塩分を、ハーブ・スパイスを使うことで、他の要因(色・香り・苦味・広がりなど)を補うことができます。また料理にハーブ・スパイスを加えることで、減塩の味けなさは消え、旨みが増すことになり、料理全体のおいしさの要因が増えることになります。

図 食品の味、おいしさに関する要素(小俣靖.1986.“美味しさ”と味覚の科学.日本工業新聞社.から一部改変)

[参考]

・厚生労働省 健康的で持続可能な食環境イニシアチブ
https://sustainable-nutrition.mhlw.go.jp
・厚生労働省 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
・厚生労働省 健康日本21(第三次)
https://www.mhlw.go.jp/content/001102474.pdf
・国立健康・栄養研究所 https://www.nibiohn.go.jp/ 
eiken/healthydiet/index.html#shokuen
・公益財団法人日本腎臓財団 
http://www.jinzouzaidan.or.jp/jinzou/index.html
・糖尿病サイト https://www.club-dm.jp/

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第68号 2024年6月