2025.1.23

キッチンガーデンにおすすめのハーブ

博士(農学)

木村正典

初心者にも育てやすく、料理やお茶などに使い勝手のよいハーブ10種類をご紹介します。ミントやバジル、ローズマリー、タイムなど人気のハーブの多くはシソ科に属し、主に葉の部分を使います。それぞれ多数の品種が出回っているので、自分の目的に合ったものを選びましょう。ミントやローズマリーなどは、挿し木で殖やすこともできます。

ミント

【  学 名   】Mentha piperita(ペパーミント)
      Mentha spicata(スペアミント)
【  科 名   】シソ科
【使用部位】茎葉
【主要成分】精油(ℓ-メントール、メントン、メントフラン)、フラボノイド(アビゲニン、ルテオリン)、ロスマリン酸、カフェ酸、クロロゲン酸
【  作 用   】賦活(のち鎮静)、鎮痙、駆風、利胆
【  適 応   】眠気・集中力欠如などの精神症状、腹部膨満感、鼓腸、食欲不振、過敏性腸症候群
 種 別  多年草  種まき・植えつけ  春〜秋、最適は春  収穫  通年、最適は春
栽培のポイント/繁殖力が強いので、鉢植えの場合は底から根が出てきたらひと回り大きい鉢に植え替えましょう。夏の花後に株元まで切り詰めると、秋にまた新しい芽が出てきます。
利用法/代表的なミントに香りの強いペパーミントと、マイルドなスペアミントがあり、どちらもフレッシュまたはドライで料理やデザート、ティー、ドリンクの風味づけや彩りなどに使えます。たくさん収穫できたらアルコールに浸けてチンキを作ると、芳香スプレーや虫よけ、家の掃除などに利用できます。

イタリアンパセリ

【  学 名   】Petroselinum crispum
【  科 名   】セリ科
【使用部位】葉、花、果実
【主要成分】精油(アピオール、ミリスチシン)、ミネラル(カリウム、カルシウム、鉄)、ビタミンC
【  作 用   】抗菌、消化促進、利尿
【  適 応   】食欲不振、口臭、貧血
種 別  二年草  種まき・植えつけ  通年、基本は秋  収 穫   通年
栽培のポイント/寒さに比較的強く、収穫は通年可能です。夏の暑さには弱いため、遮光するか半日陰の涼しい場所で管理しましょう。
利用法/葉の縮れた「モスカールドパセリ」より香りや味にクセがなく、魚料理や肉料理、卵料理、サラダ、スープ、パスタ、ピラフ、ドレッシングなど幅広い料理に利用できます。バターに練り込んでハーブバターにするのもおすすめです。加熱で香りが飛びやすいので、料理の最後に加えるようにしましょう。

ローズマリー

【  学 名   】Rosmarinus officinalis
【  科 名   】シソ科
【使用部位】茎葉
【主要成分】精油(ピネン、シネオール、カンファー)、ロスマリン酸、フラボノイド
【  作 用   】中枢神経系(脳)の機能亢進、血行促進、血管壁強化、消化促進、抗酸化
【  適 応   】記憶力や集中力の低下、頭痛、抑うつ、関節炎、更年期の諸症状
 種 別  常緑木本  種まき・植えつけ  春〜秋、最適は春  収穫  通年
栽培のポイント/放っておくと大きくなって形が悪くなります。こまめに収穫するか、梅雨明け直後に刈り込んでドライで保存しましょう。
利用法/料理に幅広く使え、重宝するハーブです。香りが強いので肉や青魚の臭み消しに、逆に淡白な素材の風味づけに。豚肉や鶏肉、ラム、ジャガイモとの相性は抜群。ほかにもパンやクッキーに加えたり、ハーブオイルやハーブソルトにして料理の仕上げにひと振りしたり。意外なところでは味噌とも好相性です。

タイム

【  学 名   】Thymus vulgaris(コモンタイム)
      Thymus citriodorus(レモンタイム)
【  科 名   】シソ科
【使用部位】茎葉
【主要成分】精油(ピネン、シネオール、カンファー)、ロスマリン酸、フラボノイド
【  作 用   】抗菌、鎮痙、去痰、利尿、疲労回復
【  適 応   】かぜやインフルエンザによる呼吸器系の不調、食あたり、吐き気、口臭
種 別  常緑木本  種まき・植えつけ  春〜秋、最適は春  収 穫   通年、最適は春〜秋
栽培のポイント/葉が茂り過ぎると蒸れて枯れやすくなるので、梅雨前に枝先の葉のある部分を半分刈り込むとよいでしょう。
利用法/多くの種類がありますが、料理やティーに向くのは、コモンタイムやレモンタイムです。魚、肉、トマトとの相性がよく、加熱しても風味が変わらないため、煮込み料理や香草焼き、ムニエルなどに適しています。ハーブオイルやハーブバター、ハーブソルトなどにしてもさわやかな香りが長く楽しめます。

オレガノ

【  学 名   】Origanum vulgare
【  科 名   】シソ科
【使用部位】茎葉
【主要成分】精油(チモール、カルバクロール、γ-テルピネン)、カロテノイド
【  作 用   】抗菌、防腐、消化促進、抗酸化
【  適 応   】消化器系や呼吸器系の不調、月経痛、頭痛、リウマチ
種 別  常緑木本  種まき・植えつけ  春〜秋、最適は春  収 穫   通年、最適は春〜秋
栽培のポイント/高温多湿に弱いので、やや乾燥気味に管理します。生育旺盛で根が広がるため、鉢植えの場合は数年経って根づまりしたら植え替えましょう。
利用法/だれにでも好まれる味と香りで肉料理やチーズ、トマトと相性がよく、イタリアやギリシャなどの地中海料理やメキシコ料理に欠かせません。ハーブオイルやハーブソルトにもおすすめです。ドライにするとフレッシュよりも香りが強くなるので、花が咲く直前に収穫して乾燥・保存するとよいでしょう。

ルッコラ

【  学 名   】Eruca vesicaria
【  科 名   】アブラナ科
【使用部位】葉、花、未熟果(若莢)
【主要成分】イソチオシアネート類、ビタミンC、β-カロテン、カルシウム、カリウム
【  作 用   】消化促進、抗菌、抗酸化、解毒
【  適 応   】肉体疲労、肌あれ、胃腸の不調
種 別  一年草  種まき・植えつけ  秋が基本。ベビーリーフで利用する場合は通年可  収 穫   秋〜春が基本、花は春〜初夏、ベビーリーフは通年
栽培のポイント/種をまいてベビーリーフから収穫できます。直射日光に当たると葉が硬く、苦く、辛くなるので、日陰で育てましょう。
利用法/ゴマに似た香りとピリッとした辛味をもち、そのままサラダの素材や料理のつけ合わせ、ピッツァやパスタのトッピングなどで楽しめます。少し硬くなった葉は、ベーコンと炒めたりミネストローネなどのスープに加えたりすると美味。初夏に咲くクリーム色の花や若莢もおいしく食べることができます。

セージ

【  学 名   】Salvia officinalis
【  科 名   】シソ科
【使用部位】茎葉
【主要成分】フラボノイド(ルテオリン)、精油(ツヨン)、ロスマリン酸
【  作 用   】抗菌、肌の引き締め、抗酸化
【  適 応   】口内炎、歯肉炎、更年期の発汗異常
種 別  常緑木本  種まき・植えつけ  春〜秋、最適は春  収 穫   通年、最適は春〜秋
栽培のポイント/湿気が苦手なため、地植えより鉢植えに向きます。葉が混みあうと蒸れて枯れやすいので、適宜カットして風通しをよくしましょう。
利用法/ヨモギに似た強い香りとほろ苦さが特徴で、豚肉のローストやソテー、手作りソーセージなど脂っこい肉料理に使うと、すっきりとした仕上がりになり、ティーにしても楽しめます。殺菌作用や収れん作用があるので、濃いめに入れたティーはうがい剤としてかぜの予防やオーラルケアに役立ちます。

チャイブ

【  学 名   】Allium schoenoprasum
【  科 名   】ヒガンバナ科(ネギ科)
【使用部位】葉、花
【主要成分】β-カロテン、ビタミンC、含硫化合物
【  作 用   】消化促進、疲労回復
【  適 応   】肉体疲労
種 別  多年草  種まき・植えつけ 春〜秋  収 穫   通年
栽培のポイント/生育旺盛であまり手間がかからず、地植えでも鉢植えでもよく育ちます。2年目からはピンク色のかわいい花も楽しめます。
利用法/アサツキに似た上品で繊細な風味をもち、刻んでオムレツやソースに加えたり、スープやお吸い物に浮かべたり、長いまま料理やサラダにトッピングしたりと、アサツキに似た使い方ができます。バターやカッテージチーズに練り込んでもおいしく、カナッペやサンドイッチなどに活用できます。花にもネギの風味があり、料理に添えるとおしゃれです。

コリアンダー

【  学 名   】Coriandrum sativum
【  科 名   】セリ科
【使用部位】全草(葉、根、花茎、花、未熟果、完熟果)
【主要成分】精油(葉:完熟果:リナロール、カンファ—)、フラボノイド、アルカロイド
【  作 用   】消化促進、駆風、鎮静、抗菌
【  適 応   】消化不良、食欲不振、便秘、口臭
種 別  一年草  種まき・植えつけ  秋が基本、ベビーリーフを利用する場合は通年可  収 穫   秋〜春(葉、根)、春〜夏(葉、花茎、花、未熟果)、夏(完熟果)
栽培のポイント/春に種まきすると、すぐに花が咲いて葉の収穫ができず、花数も少なくなってしまいます。秋にまいて翌夏の果実収穫まで長く楽しみましょう。
利用法/タイではパクチー、中国では香菜(シャンツァイ)と呼ばれ、エスニック料理に少量加えるだけで本格的な味わいになります。葉は肉や魚料理、スープ、炒め物、ソースなどのほか、サラダの素材や麺料理のトッピングに。花後に実る種を乾燥させたものはスパイスとしてカレーや煮込み料理、ピクルス液、薬酒などに使え、ティーでも楽しめます。

ディル

【  学 名   】Anethum graveolens
【  科 名   】セリ科
【使用部位】地上部(葉、花茎、花、未熟果、完熟果)
【主要成分】精油(カルボン、リモネン、フェランドリン)
【  作 用   】鎮静、消化促進、抗菌、催乳
【  適 応   】腹部膨満感、消化不良、不眠、イライラ、月経のトラブル、口臭
種 別  一年草  種まき・植えつけ  秋が基本、ベビーリーフを利用する場合は通年可  収 穫   秋〜春(葉)、春〜夏(葉、花茎、花、未熟果)、夏(完熟果)
栽培のポイント/うどん粉病にかかりやすく、生育は緩慢で強靭ではありません。花茎も1本だけで葉もまばらなので、何本か育てるとよいでしょう。
利用法/さわやかな香りが魚料理によく合い、スモークサーモンや魚のマリネなどに使われます。葉はサラダの素材にするほか、刻んでドレッシングに加えたり、スープやシチューにトッピングしたり、ピクルスの香りづけに使うのもおすすめです。種はパン、焼き菓子、ピクルス液、ティーなどに利用できます。

博士(農学)
木村正典 きむらまさのり
当協会理事。(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第67号 2024年3月