日本のハーブ:イカリソウとインヨウカク
イカリソウの薬効、強精作用に関しては、既に(会報誌No.30/2014)に記したが、生薬としてのインヨウカク(淫羊藿)及び薬草園に生育しているイカリソウ類を記す。薬草園で栽培されているイカリソウ類は、イカリソウ、ウラジロイカリソウ、キバナイカリソウ、ホザキノイカリソウである。ホザキノイカリソウは、常緑で、園内の標本区だけでなく林縁に旺盛に生育している。薬用の種を以下に記す。
(1)ホザキノイカリソウ 常緑の多年草草本、高さ30〜60cm。葉は質硬。根出葉と茎上葉がある。茎上葉は2〜3回3出の複葉である。小葉は卵状披針形、基部は心脚又は剪形を成し、時にやや歪形し、葉縁は刺毛がある。長さ6〜10cm、幅3〜4cm。花序は円錐花序で花弁は白花、短い距がある。天保年間、中国から導入されたと言われている。



(2)イカリソウ Epimedium grandiflorum var. thunbergianumは落葉多年草。茎の高さは20〜40cm、茎の葉は2〜3回3出の複葉で、小葉は卵形、広又は狭卵形、先端は急鋭頭又は急鋭尖頭、基部は心脚し、薄洋紙質で、下面は少し粉白色である。長さ3〜8cm、幅2〜5cmである。花は10個ぐらいで、花弁に距がある。果実は袋果となる。葉は形から三枝九葉草の別名がある。


(3)トキワイカリソウ E. sempervirens 茎の高さは40〜60cm、根出葉と茎上葉の2形がある。小葉は革質、卵形又は卵球楕円形で、基部は深心脚、下面は粉白色、長さ6〜10cm、幅3〜5cmである。花は多数で、白色。花弁に距がある。

(4)キバナイカリソウ Epimedium koreanumは、高さは30~60cm。茎の葉は2~3回3出の複葉で、小葉は卵形、斜広卵形、葉縁には刺歯があり、上面は緑色である。小葉は5~12cm、幅3~9cm、先端は急に短い鋭尖頭である。花は淡黄色、花弁の距は開出して、長さ15mmである。


(5)中国の市場品のインヨウカク 淫羊藿Epimedium brevicornum Maxim.、柔毛淫羊藿Epimedium pubescens Maxim.である。
1. Epimedium brevicornum 中国の野生地は淫羊藿Epimedium brevicornum 草本、高さ20〜60cm。葉は根出葉と茎上葉がある。通常は2回3出複葉で、9葉状、まれに5葉状。小葉は卵形または広卵形、1.5〜7.5×1〜6cm、紙状または厚い。基部は心脚または深心脚。花茎は対生する葉を付ける。花穂は10〜35cm、20〜50開花。花は白または淡黄色、距は、円錐形、2〜3mm。
2. Epimedium pubescens Maxim. 葉は根生と茎上があり、三葉性である。小葉は革状、卵形、狭卵形または披針形、3〜15×2〜8cm、頂点は尖頭状または短い尖頭状、基部は深い心脚。花は淡黄色。
3. Epimedium wushanense 葉は根生と茎上があり、三葉性である。小葉は狭披針形に披針形、9〜23×1.8〜4.5cm、革状、葉縁は粗くトゲ状の鋸歯、頂点は尖頭または長い尖頭状。花弁に距がある。花は淡黄色。
(6)中国から導入されたインヨウカク 四川省からのインヨウカクは、小葉は狭披針形に披針形、9〜23×1.8〜4.5cmであるので、Epimedium wushanenseの葉と同定できる。

遼寧省からのインヨウカクは、小葉は卵形、斜広卵形、葉縁には刺歯があり。小葉は5〜12cm、幅3〜9cm、先端は急に短い鋭尖頭であることから、キバナイカリソウEpimedium koreanumbbと同定した。

[写真提供]
①②③④⑤⑥⑦⑧:昭和薬科大学 薬用植物園 中野 美央氏
⑨⑩:株式会社栃本天海堂 松島 成介氏
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第67号 2024年3月