セントジョンズワート油、ザクロ種子油とクルクミンとの併用による創傷治癒効果への影響
セントジョンズワート(オトギリソウ科(Hypericum perforatum)とザクロ(ミソハギ科(Punica granatum)はどちらも傷を癒すとして活用され、伝承されてきた。そしてウコン(ショウガ科 Curcuma longa)の成分クルクミンは抗炎症作用を持ち、大いに活用されているハーブである。
今回紹介する研究は、これらの伝承的活用の有効性と、より効果的な活用について検討することを目的とし、セントジョンズワートの浸出油とザクロ種子の圧搾油(ポメグラネイトシードオイル)を抗炎症作用のあるクルクミンと組み合わせた場合の創傷治癒の効果について、培養細胞であるHaCaT細胞(ヒト表皮角化細胞)を用いて検討したものである。
HaCaT細胞培養時の抽出物もしくはフィトケミカル、薬品添加の処理は以下のようにグループ分けして行った。
・HaCaT細胞のみで添加なし
・セントジョンズワート油添加
・ザクロ種子油添加
・抗炎症作用のあるクルクミンの添加
・感冒薬によく含有されている抗炎症剤イブプロフェン添加
・セントジョンズワート油またはザクロ種子油と、クルクミンまたはイブプロフェンの併用
各群での処理による、細胞の増殖に対する影響について検討し、さらに毒性を検討後、創傷治癒特性を調べるために細胞遊走アッセイを行った。
その結果、セントジョンズワート油とクルクミンの併用による細胞増殖、創傷治癒の効果は大きく、また、ザクロの種子油とクルクミンとの併用による効果もみられ、それらはイブプロフェンとの併用よりも優れていた。
これらの結果より、セントジョンズワート油、ザクロ種子油は、クルクミンやイブプロフェンの抗炎症作用を増強して、創傷治癒特性をさらに改善したことが示唆された。
セントジョンズワート、ザクロ、ウコン・・。これら及びこれらのブレンドによる創傷治癒の有効性は、炎症を抑えることにより、敏感で傷んだ肌のケアにと、美容の領域を含めて活かすことが期待されるだろう。
〔文献〕Ebru Uzunhisarcıklı, Mükerrem Betül Yere. Role of Hypericum perforatumoil and pomegranate seed oil in wound healing: an in vitro study. Z Naturforsch C J Biosci. 2021 Sep 1;77(5-6):189-195. Sep 1. doi: 10.1515/znc-2020-0301.
参考)
HaCaT細胞:
ヒト表皮角化細胞(ケラチノサイト)。成人男性の皮膚から樹立された培養細胞。これらの細胞は、皮膚の最外層を構成する主要な細胞であり、皮膚の保護機能やバリア機能に重要な役割を果たしていることから、皮膚の正常な機能や病態、細胞の分化過程などを研究するためのモデル細胞として、また、皮膚がん、乾癬、アトピー性皮膚炎など、様々な皮膚疾患の病態メカニズムの解明や治療法の開発研究に利用されている。
細胞遊走アッセイ:
研究対象とする細胞の遊走能(移動・走性)といった性質や、浸潤のメカニズムを検討したり、細胞の輸送や浸潤の促進因子、条件に付いて検討するための研究方法、医薬品や化粧品による細胞遊走の促進作用の検証の他、腫瘍転移・がん転移の研究や遊走性の制御についてのメカニズムの解明研究にも活用されている。