免疫力をサポートしながらかぜの段階に応じたケアを

かぜをひいた時に市販のかぜ薬を利用する人も多いことでしょう。しかし、かぜ薬はのどの痛みや咳などの症状を和らげて回復を助けるもので、かぜを根本的に治療するものではありません。これは、病院で処方される薬も同様です。このように症状を緩和する治療を「対症療法」といいます。
現在、インフルエンザに対しては有効な薬がありますが、かぜは基本的に自らに備わった自然治癒力、つまり免疫力で治すもの。何もせずに放置するという意味ではなく、免疫力をサポートしながら、かぜの段階に応じたケアをすることが大切です。
ホームケア | 温かくして十分な睡眠をとり水分補給も欠かさずに
かぜの初期症状を感じたら、無理せず早めに家に帰り、温かくして休む(十分な睡眠をとる)のが、回復の一番の近道です。併せて水分を十分に摂って脱水を防ぎ、食べられるようになったら栄養を補給して体力の回復を図りましょう。こうしたケアにより、たいていは数日〜1週間程度で回復します。
ただし、「38℃以上の高熱」、「様子が明らかに普段と違う」、「食事や水が摂れない」、「呼吸が苦しい」といった症状がある場合は、早めの受診がすすめられます。対処に迷った時は、かかりつけ医や近隣の医療機関に電話で相談するとよいでしょう。
POINT
かぜのひき始め
⃝ウイルスや細菌と戦う免疫力をサポートするために、温かくして十分な睡眠をとる。
⇨必要以上に厚着をして寝ると、寝汗で体が冷えて
しまうので注意する。
⃝体力があれば入浴もOK。ただし湯冷めしないように手早く済ませる。
⃝食事は軽めにし、水分はこまめに補給して脱水を防ぐ。
⇨飲み物は常温のものか温かいものを。体に必要な電解質も不足しやすいので、経口補水液やス
ポーツドリンクを飲むのもよい。
治りかけたら
⃝発熱や発汗で体の水分が不足しがちになるため、継続的に水分補給する。
⃝体力回復のために、胃腸に負担のかからない食べ物を選んで栄養補給する。
⇨果物でカリウムを、梅干しなどでナトリウム(塩分)を補給するとよい。
予防 | 免疫力を落とさないためには日頃のストレスケアも大切
かぜは感染者の咳などで飛散するを介してウイルスが気道内に侵入することから始まりますが、発症するかどうかは、ウイルスの感染力と体の抵抗力(免疫力)のバランスで決まります。普段からウイルスを遠ざける「外側からのケア」と、ウイルスに対抗する免疫力を落とさない「内側からのケア」の両面でかぜを予防していきましょう。

POINT1
外出時のマスクの着用や外出後の手洗い、うがいを実践しましょう。マスクはウイルスの侵入を完全にブロックすることはできませんが、鼻やのどの粘膜を潤して防御機能を高める効果があり、他の人にうつしてしまうリスクを減らすこともできます。かぜやインフルエンザが流行している時期は、人混みを避けたり、外出を控えたりすることも必要です。
POINT2
のどや気管支の粘膜の防御機能を低下させないために、こまめな水分補給と室内の湿度の管理(湿度50〜60%が目安)を心がけ、部屋は定期的に換気を行いましょう。
POINT3
過労や睡眠不足を避け、バランスのよい食事を摂って、免疫力を高めるライフスタイルを心がけましょう。適度な運動習慣も免疫力アップに役立ちます。また、免疫力を低下させる大きな原因となるストレスを上手にコントロールすることも大切です。
予防&ホームケア | メディカルハーブをかぜ対策のサポーターに
特にかぜのひき始めや、病院へ行くほどではない軽い症状の時に使うとハーブのよさを実感できるでしょう。かぜをひきたくない時に予防的に使えるのもハーブの強みです。
ハーブの中には免疫力を高める作用や抗菌・抗ウイルス作用、かぜの症状を緩和する作用などをもつものがありますが、多くのハーブはピンポイントで特定の症状に効くというより、心身のリラクセーションをもたらしたり、睡眠の質を高めたりして総合的に体調をよくしてくれます。ノンカフェインのハーブティーは、かぜをひいた時に欠かせない水分補給にも最適です。
かぜのひき始めに葛根湯(かっこんとう)
漢方薬の「葛根湯」には、かぜに役立つ成分が多数含まれます。例えば、解熱作用や血行促進作用をもつ「葛根(クズ)」、抗菌作用や発汗作用に優れた「生姜」、炎症を鎮める作用をもつ「(リコリス)」、強壮、発汗、精神安定などの作用をもつ「(シナモン)」など。この葛根湯のエッセンスをとり入れて身近な材料で作る「葛根茶」は、かぜのひき始めや予防におすすめです。

材料:葛根、生姜、甘草、棗(ナツメ)、桂皮
作り方:材料を適量ティーポットに入れ、熱湯を注いで数分蒸らせばでき上がり。
参考:入谷栄一著『キレイをつくるハーブ習慣』(経済界)
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第70号 2024年12月