2025.2.18

リンデン:かぜに活用したいハーブを学ぶ

当協会理事(株)グリーン・ワイズ 博士(農学)

木村 正典

【学名】 Tilia cordata Mill. (フユボダイジュ)
     Tilia platyphyllos Scop. (ナツボダイジュ)
     Tilia europaea  L.(セイヨウシナノキ)

【科名】 アオイ科(シナノキ科)

【使用部位】 花序(花、苞葉)、葉

【主要成分】 フラボノイド配糖体約1%(ルチン、ヒぺロシド、ティリロシド)、粘液質3〜10%(アラビノガラクタンなど、タンニン2%、フェノール酸(カフェ酸、クロロゲン酸)、精油0.02%(ファルネソールなど)

【作用】 発汗、利尿、鎮静、鎮痙、保湿(外用)

【適応】 かぜおよびかぜによる咳、上気道カタル、高血圧、不安、不眠

リラックス作用や発汗作用をもつかぜのひき始めに活用したいハーブ

  ヨーロッパ原産のリンデンには3種類あり、いずれも高さ10〜40mにも生長する落葉高木。春になると特有のハート型の葉が芽吹き、6〜7月には甘い芳香のある小さなクリーム色の花を咲かせます。この香りは蜂を引き寄せるため、リンデンは養蜂にも欠かせない存在です。また、木材は楽器や工芸品などに、樹皮はロープや洋服の繊維などに利用されます。

 メディカルハーブとしてのリンデンは、神経の緊張を和らげるリラックス作用でよく知られています。ストレスの軽減や不眠の改善に役立ち、ヨーロッパでは、子どもが興奮状態で大人の言うことを聞かない時などに飲ませる習慣もあるそうです。

 さらに、優れた発汗作用をもち、かぜやインフルエンザの初期症状を楽にしてくれる働きもあります。ドイツなどでは、かぜのひき始めにまずハーブティーで対処する習慣がありますが、その際にジャーマンカモミールやエルダーフラワーと並んで、リンデンのティーがよく用いられています。

 上品な甘い香りのティーは癖がなく飲みやすく、他のハーブとブレンドしやすいのもリンデンの特徴です。かぜ対策や日々の健康のサポートに、上手に活用しましょう。

当協会理事(株)グリーン・ワイズ 博士(農学)
木村 正典 きむらまさのり
当協会理事。(株)グリーン・ワイズ。博士(農学)。ハーブの栽培や精油分泌組織の観察に長く携わると共に、都市での園芸の役割について研究。著書に『有機栽培もOK!プランター菜園のすべて』(NHK出版)など多数。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第70号 2024年12月