St. Jone's wort

セントジョンズワート

セントジョンズワート

St. Jone’s wort

Hypericum perforatum

和名:西洋オトギリソウ / 科名:オトギリソウ科 / 使用部位:開花時の地上部

ギリシャの医学者ヒポクラテスは、セントジョンズワートを治療に用いたことを、紀元前5世紀の頃に記録している。セントジョンズワートが軽度から中等度の抑うつの治療に有効であり安全であるという報告をメディアが2000年に公開したことから、最も売れるサプリメントの5位に躍り出た。米国の国立衛生研究所(NIH)の機関である相補・代替医療センター(NCCAM)は、セントジョンズワート標準エキスと選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の一つであるセルトラリン(ジェイゾロフト)の効果を比較するために、3年間の多施設共同試験を行った。1979年以降、軽度から中等度の抑うつの治療に用いたセントジョンズワートエキスの対照臨床試験は35以上ある。いくつかのメタ分析により、セントジョンズワートの有効性と安全性が示されている。ドイツでもヘルスケアプロバイダーによってしばしば処方されており、1999年のセントジョンズワートを含む処方はおよそ1億3千万に及んだ。

【適応】

内服

  • 軽度~中等度の抑うつ

外用

  • 傷(急性、打撲傷)/一度の火傷/筋肉痛

その他

  • 季節性感情障害(SAD)/強迫性障害(OCD)/月経前症候群(PMS)/更年期障害/疲労/小児の夜尿

【作用】

  • 抗うつ、リラックス、気分改善
  • 注意力を保持しながら鎮静効果を得る。
  • リラックス効果と共に、集中、記憶、感受性を高める。

【主な使用法】

内服

  • 〔エキス〕1:1(g/ml) 、2mlを一日2回服用する。

※標準化製剤

  • 〔乾燥エキス〕5‐7:1、300mgを一日3回服用する。
  • 〔エキス〕0.3%ヒペリシン含有、900mgを一日3回に分けて服用。
  • 2‐4.5%ハイパーフォリン含有、900mgを一日3回に分けて服用。

外用

  • 〔浸出油〕新鮮な開花期の頭部をオリーブ油または小麦胚芽油に数週間浸す。頻繁にかき混ぜ、布または紙で漉す。この浸出油を直接患部に塗布する。

【禁忌】

知られていない。(独コミッションE 1994年及び1990年改定版による)

妊娠と授乳:使用制限は知られていない。

【副作用】

日光や紫外線照射による紅斑などの光過敏症が考えられるが、比較的まれであり、過剰な量(1,800mg/日)を摂取した色白の肌の人に起こる可能性がある。

【薬物相互作用】

専門家のガイダンスなしでセントジョンズワートと他の抗うつ薬を併用してはならない。

セントジョンズワートは、経口避妊薬、血液凝固防止薬(ワルファリン)、気管支拡張薬(テオフィリン)、抗HIV薬(インジナビル)、免疫抑制薬(シクロスポリン)、強心薬(ジゴキシン)との相互作用を起こす可能性がある。セントジョンズワートを長期連用後に急に服用を止めることは、抗てんかん薬であるカルママゼピン(テグレトール)の濃度を上昇させる可能性がある。セントジョンズワートは薬との相互作用があり得るため、消費者や患者は他の薬と併用する際には、ヘルスケアの専門家からアドバイスを受けるのが良い。

【臨床的展望】

総数2,745名の被験者を含む23の臨床試験が報告されている。3試験を除いたすべての試験で、抑うつに対するセントジョンズワートの有効性が認められた。626名を対象とした、無作為、二重盲検、プラセボ対照試験の5試験では重大な副作用も無く、抑うつ患者に有意な効果を示した。

1,191名を対象とした、無作為、二重盲検、多施設共同試験では、セントジョンズワートは耐容性が大きく、三環系抗うつ剤(アミトリプチリン、イミプラミン、マルプロチリン)と同等の効果を持つことが示され、さらに三環系抗うつ剤よりも心臓に対する安全性が高かった。

60名を対象にした小規模なパイロット試験では、疲労とSADに画期的な結果が示された。対象者12名のオープンラベル試験ではOCDに対する有効性が認められた。PMSに対する有効性を調べた小規模なパイロット試験では、セントジョンズワートがPMSの期間と症状の重さを軽減したが、これについては大規模な無作為、二重盲検試験でも確かめられている。また、セントジョンズワートは更年期症状の治療に有効であり、中年女性の性的感覚を高めることが示唆された。

セントジョンズワートの17試験とフルオキセチン(プロザック)の9試験の再評価で、セントジョンズワートは境界線上から軽度の抑うつに対してフルオキセチンと同様に有効であることが示された。セントジョンズワートは、軽度の抑うつに効果的で有害作用もほとんどなく、手に入れやすいものであり、軽度から症状が進行することを防ぐことが可能であることが示唆された。

セントジョンズワートに関する23の臨床試験のメタ分析と再評価によると、軽度から中等度の抑うつにプラセボよりも有効であったことが示された。その際のエビデンスに基づいて行われた同様の再評価により、セントジョンズワートと従来の抗うつ薬の効果が同じであるかどうかは更に研究が必要であるとの結論が出され、コクランセンターによって引き続き行われた2,291名を対象にした27の臨床試験のメタ分析で、プラセボより有意に有効であることが示された。

軽度の抑うつに対する短期間のセントジョンズワートの服用は有効性があり、3環系抗うつ薬よりも有害作用が少ないことから、これまでの観察のみの期間や低用量の抗うつ薬を処方していた期間に、セントジョンズワートを用いることは効果的であると評価されている。

セントジョンズワートと従来処方されているイミプラミン(通常量150mg)との効果の比較によると、セントジョンズワートエキスがイミプラミンと同程度の効力を持ち、より耐容性もあることがわかった。フルオキセチンと比較した大規模試験では、フルオキセチンと同等の効力を持ち、特に不安を感じる抑うつ患者に効果的で、SSRIよりも安全で耐容性のあることが示された。これらのように、セントジョンズワートと従来の抗うつ薬を比較した総数11の試験により、セントジョンズワートは有害作用が少なく、軽度から中等度の抑うつに効果的であることが認められた。

これまでに行われている有効性を示す多くの試験が短期間であることから、セントジョンズワートの服用期間を6週間以内としている報告がある。

重度の抑うつには効果がないという、Sheltonらによる研究がメディアの注目を集めたが、その研究には比較対照がないことが指摘されている。340名を対象としたこの臨床試験では、非常に重度な抑うつにはプラセボと比較して、抗うつ薬セルトラリン(ジェイゾロフト)もセントジョンズワートも有効でなかったことが示された。この試験では、初期は対象者のほとんどが軽度か中等度の抑うつ患者であったが、その後中等度から重度の患者を対象に含ませ、その結果であることから信頼性について議論されている。

2009年5月発行

編集:特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会・学術調査研究委員会

提供:アメリカン・ボタニカル・カウンシル

このモノグラフはAmerican Botanical Councilにより2003年に発行されたThe ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © を翻訳したものです.

 Translated from The ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © 2003 by the American Botanical Council (www.herbalgram.org). Courtesy of American Botanical Council.