アーティチョーク（キク科　Cynara scolymus）は、古くから消化促進や肝機能向上に役立つとされ、近年ではその健康効果が科学的に研究されている。肝機能を改善するシナリン、血管拡張や抗酸化作用を持つクロロゲン酸、血流改善と抗炎症作用をもたらすフラボノイド等を含み、肝機能の向上や血圧調整への有用性が注目されている。本記事では、2022年に発表された2つの系統的レビューとメタアナリシスを基に、アーティチョークの効果を紹介する。

アーティチョークと肝機能の改善

アーティチョークが肝酵素（ALT・AST）に与える影響を評価した研究 1) では、2022年1月までに発表された7つのランダム化比較試験（RCT）、合計575名を対象としたメタアナリシスが行われた。対象者は、高コレステロール血症、非アルコール性脂肪肝疾患（NAFLD）、2型糖尿病、非アルコール性脂肪肝炎（NASH）、肥満または過体重の人々である。この研究では、アーティチョーク葉エキスを50 mg～2700 mg/日、6～16週間摂取することによる効果を調べた。

その結果、ALT（アラニンアミノトランスフェラーゼ）は有意に低下し（Hedges’ g = -1.08, p = 0.002）、AST（アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ）も有意に低下（Hedges’ g = -1.02, p = 0.007）することが示された。

特に、ALTは8週間以内の摂取でより顕著に低下し（p < 0.001）、ASTは500 mg以上の高用量でより効果的に低下することが確認された（p < 0.001）。

アーティチョークと血圧の調整

アーティチョークの血圧低下効果に関する研究 2) でも、同様に2022年1月までに発表された論文の中から、合計472名を対象とした7つのRCTが選ばれ、メタアナリシスが行われた。対象者には、非または軽度の高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、NAFLD、メタボリックシンドローム、過体重または肥満で空腹時血糖異常がある者、そして高血圧患者が含まれていた。アーティチョーク葉エキスを50 mg～2700 mg/日、4～12週間摂取することによる影響を評価した。

その結果、収縮期血圧（SBP）は-2.01 mmHg（ p = 0.026）、拡張期血圧（DBP）は-1.45 mmHg（ p = 0.038）と有意に低下した。サブグループ解析によると、アーティチョークの摂取による血圧の有意な低下は、特に、SBP、DBPともに、1日500 mg以下の低用量（SBP -3.00 mmHg, p < 0.001、DBP  -2.37 mmHg, p < 0.001）、8週間以上の継続摂取（SBP -3.11 mmHg, p < 0.001）、50歳未満の被験者（SBP、DBPともにp < 0.001）、サンプルサイズ70人以下（SBP -2.97 mmHg, p < 0.001、DBP -2.20 mmHg, p < 0.001）において顕著であった。

また、アーティチョークの摂取量と試験期間の両方において、SBPおよびDBPに有意な非線形関係が認められ、摂取量の増加や摂取期間の延長によって血圧が一定の割合で低下し続けるわけではなく、ある程度を超えると効果が頭打ちになり、鈍化する可能性が示された。

この2つの研究から、アーティチョークには肝機能の改善や血圧低下の効果が示された。しかし、ALTの低下は短期間の摂取（8週間以内）でより顕著であり、ASTの低下は高用量（500 mg以上）でより大きかった。一方、血圧低下については500 mg以下の低用量を8週間以上継続することで最大の効果が得られることが示唆されており、目的に応じた適切な用量設定が必要である。

血圧の低下数値については限定的ではあるが、軽度の高血圧者や予防目的での補助療法としては一定の価値がある可能性がある。

今後、より大規模なRCTや長期間の研究が行われることで、アーティチョークの最適な用量や摂取期間がさらに明確になることが期待される。

〔文献〕

1) Amini MR, et al. (2022). Effects of Artichoke Supplementation on Liver Enzymes: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Clinical Nutrition Research, Volume 11(3):228-239. doi: 10.7762/cnr.2022.11.3.228.

2) Amini MR, et al. (2022). Anti-hypertensive Effects of Artichoke Supplementation in Adults: A Systematic Review and Dose-response Meta-analysis of Randomized Controlled Trials. Clinical Nutrition Research, Volume 11(3):214-227. doi: 10.7762/cnr.2022.11.3.214.