Flax

フラックス

フラックス  Flax

Linum usitatissimum

和名:亜麻 / 科名:アマ科 /使用部位:種子

フラックスは青色の花を付けるアマ科植物で,フラックスシード(Flaxseed)またはリンシード(Linseed)と呼ばれる完熟した乾燥種子を用いる。パン,マフィン,シリアル(オートミール,コーンフレークなど)やブレックファーストバー用の素材として,全粒,半流動食,圧搾油などの形態で一般的に流通している.全粒は生のまま,もしくは焼いて食べる。圧搾油は亜麻仁油(亜麻仁油)と呼ばれ,瓶やソフトカプセルに充填される形で市販されている。亜麻仁油は不足しやすい必須n-3脂肪酸であるα-リノレン酸の供給源であり,50~60%のα-リノレン酸を含有する。リグナン(多くの植物にみられるフェノール性樹脂)の最も豊かな宝庫でもあり,他の食品の100~800倍もの量を含有する.最大生産供給国はカナダである。

【適応】

内用:高脂血症/アテローム性動脈硬化症/乳がん(リスク軽減)/骨粗鬆症/ループス腎炎/慢性関節リウマチ/過敏性腸症候群

外用:炎症(局所)

【作用】

  • 水との親和性による粘液膨脹とこれに伴う排便量増加
  • 油の潤滑作用による腸流動促進
  • 皮質や髄鞘(ミエリン鞘)の細胞膜主要構成成分のドコサヘキサエン酸(DHA)レベル増加に伴う脳機能の維持・亢進
  • コレステロール合成抑制と細胞膜間移動を誘起するプロスタグランジンE1やE3(PGE1やPGE3)の増加に伴うコレステロールレベルの減少
  • PGE1及びPGE3レベルの増加による血小板凝集の抑制
  • アラキドン酸レベルの低下とプロスタグランジン生合成による抗炎症
  • リグナンによる性ホルモン結合グロブリン(SHBG)の増加
  • 循環器系のエストロゲン濃度の低下と不溶性繊維とステロイドホルモンの結合
  • n-3脂肪酸の供給のよる生活習慣病に対する予防

【主な用法】

内服

  • 細粒/全粒種子:全粒,細粒,粉状種子テーブルスプーン1杯(5g)を水と一緒に一日3回摂取する。通常はフィトケミカルの吸収とそれにより誘起する治療効果を改善するために粗挽き種子を利用することが望ましい。

※通常は18-24時間後に効果が発現する。

  • 粘液(流動食):粗挽きしたフラックスシードをテーブルスプーン2~3杯200~300mLの水に浸漬し,30分後に裏漉しする。
  • 油:毎日スプーン1~2杯
  • カプセル:健康維持のために亜麻仁油1,000mgを含有するものを一日3~6カプセル。

外用

  • パップ剤(湿布):30~50gのフラックスシード粉末を含有する半固体状ペーストを乾燥させないようにしながら温め直接皮膚に塗布する。深在性の炎症を除くため皮膚表面に血液を吸い出すような効果がある.

※粗挽きしたフラックスシード粉は,マスタード種子粉と混合することが慣習として行われる。

  • シップ或いは温湿布剤:30~50gのフラックスシード粉を含有するように温半固体状に調製し,布に染み込ませる。痛みや炎症を軽減するために乾燥させないようにしながら温め直接皮膚に薄く塗布して保持する。

※亜麻仁油とフラックスシードは,直射日光を避け,密閉容器に入れ冷蔵保管する。亜麻仁油のソフトカプセルは密閉容器に入れ,室温保存可能である。

【禁忌】

腸閉塞には用いない。妊娠と授乳期の制限は特にない。妊娠と育児中の必須脂肪酸(EFA)の摂取は,胎児・幼児の脳発達及び視覚機能に有益である。

【副作用】

推奨用量での副作用は知られていない。

【薬物相互作用】

他の植物の粘液と同様に,全粒,粉砕した種子は,併行して経口摂取した薬の吸収に悪影響を及ぼす可能性は否定できない。しかしこれは推測にすぎない。また食事の栄養素の吸収を阻害するかもしれない。

【臨床的展望】

18の症例が報告されており,2例を除く全ての報告に,心血管系の健康,乳ガン,前立腺ガン,ループス,関節炎に有効であるとした。1例は,ランダム化・二重盲検・プラセボ試験で,亜麻仁油を用いて被験者22名に対して実施したが,試験期間がリウマチ様関節炎に対する効果を発揮するには短すぎること。また,本研究の臨床結果を正当化するには種々の要因が不足しているとした。2例は,ランダム化二重盲検交差試験では,焼いたフラックスシードの摂取によりLDLコレステロールの大幅な減少と骨吸収の速度の遅延が認められた。他の研究では,亜麻仁油は血糖コントロールやインスリン分泌に何ら効果を認めないとした。あるランダム化プラセボ単盲検交差試験では,食品に入っている一部脱脂した。焼いたフラックスシードは,脱脂していないフラックスシードの摂取と相関した濃度でLDLコレステロールレベルを減少することを示している。他の試験では,心臓発作の二次的予防を認めた。2例の疫学調査では,亜麻仁油を利用する女性に乳ガンの転移が減少していることを認めた。また,低脂肪食の摂取の有無に関わらずフラックスシードを摂取した前立腺ガンの高年齢男性に,テストステロンと前立腺ガン細胞増殖率の減少,及び高比率のアポトーシスを認めた。米国食品医薬品局(FDA)は,フラックス又は冷温圧搾の亜麻仁油にGRAS(安全食品認定)を与えていない。しかし,12%(重量%)までのフラックス含有を認めている。米国ハーブ協会(AHPA)は,少なくとも150mLまでは安全に使用できるとしている。

2009年2月発行

編集:特定非営利活動法人 日本メディカルハーブ協会・学術調査研究委員会

提供:アメリカン・ボタニカル・カウンシル

このモノグラフはAmerican Botanical Councilにより2003年に発行されたThe ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © を翻訳したものです。

 Translated from The ABC Clinical Guide to Herbs, Mark Blumenthal (senior editor), © 2003 by the American Botanical Council (www.herbalgram.org). Courtesy of American Botanical Council.