Nettle
ネトル
ネトルは欧米の植物療法には欠かすことができない重要なハーブとして知られ、はるか昔から現在に至るまで、さまざま症状に用いられています。その作用の本質は体の中の老廃物(酸化物や尿酸などの代謝産物)の排泄を促すことによって血液を浄化し、アトピー性皮膚炎や花粉症、リウマチといったアレルギー性疾患や痛風や前立腺肥大といった代謝性疾患を予防することにあります(ちなみに蕁麻疹は英語でurticariaといいますが、これはネトルの学名と共通していますし、蕁麻疹はイラクサの漢名です)。
ネトルの効用を生かして、ヨーロッパでは春先にエルダーフラワーやダンディライオンとともにネトルを摂取し、体質改善をはかる春季療法と呼ばれる方法があります。わが国でも、血行を促進し体を温めるユズを冬至の時期に入浴に用いるユズ湯の習慣がありますが、こうした植物の力を生かしたライフスタイルはどこの国にも存在するようです。
ネトルの含有成分はクエルセチンなどのフラボノイドやルチンなどのフラボノイド配糖体、それにクロロフィル(葉緑素)やβ-シトステロールなどのフィトステロール、さらにはβ-カロチンやビタミンCにケイ酸、カルシウム、カリウム、鉄などのミネラル、さらには葉酸などと多岐にわたります。
葉緑素の分子構造は人間の赤血球の血色素(ヘモグロビン)の分子構造と類似しており、葉緑素の分子構造の中心がマグネシウムであるのに対し、血色素の分子構造の中心には鉄が配置されています。この類似性から、伝統的な植物療法では、体内で葉緑素が血液に変わるといった考え方がありあますが、西洋医学や生化学では認められていません。
ネトルには鉄が含まれているため、貧血の人や妊婦さんが服用するケースがあります。鉄は体内での吸収率が低く、また、動物性食品に含まれている鉄よりも植物性食品に含まれている鉄のほうが吸収しにくいことが知られています。一方、ネトルの場合はビタミンCが含まれているため鉄の吸収が高まりますし、また、フラボノイド類が鉄イオンをキレート化して可溶化するため、吸収が高まると考えられています。ケイ素は骨や歯、爪や髪などにカルシウムとともに存在し、また、コラーゲンやエラスチンといった結合組織に働いて構造を強化することでも知られています。ネトルが血液浄化とは別に爪や髪の弱質化や瘢痕の修復など、植物美容学や植物皮膚学の領域でも用いられているのはこのためです。
なお、ネトルはドイツの植物療法の公的機関であるコミッションEのモノグラムにも収載されていますが、そこでの適応はリウマチや膀胱炎、尿道炎、それに尿砂(結石の原因となる砂)を洗い流す目的で用いるとされています。
ネトルの根にはβ-シトステロールなどのフィトステロールが含まれ、良性の前立腺肥大の際の排尿障害などに用いられます。ネトルの茶剤(ハーブティー)の服用法は、ティースプーン山盛り3~4杯(約4g)の乾燥したネトルの葉に熱湯を150mℓを注ぎ、フタをして10分間抽出したものを1日3回服用するのが基本です。
葉緑素が多いため、お抹茶のような風味で和菓子に良く合います。
安全性:「メディカルハーブ安全性ハンドブック」ではクラス1(適切な使用において安全)