Ginkgo
イチョウ
わが国でもポピュラーなイチョウは、裸子植物で高さ30m、周囲10mにも達することがある高木です。
東京都のマークでおなじみの扇方の独特の形の葉は、秋に黄色に染まり落葉します。地球上に2憶5千万年前から存在していたことが知られ、「生きた化石」の異名を持ちます。また、イチョウは植物であるのに精子で繁殖することを、1896年東京大学(当時は帝国大学)の平瀬作五郎氏が発見し、世界中の植物学者を驚かせました。
わが国ではイチョウというとギンナンが有名ですが、イチョウの葉は現在欧米で最も注目を集めるメディカルハーブのひとつとなっています。植物療法の研究が最も進んでいるドイツの公的機関のコミッションEが、1999年にイチョウ葉を認知症とアルツハイマーの治療薬として認可したことからも、イチョウの葉への期待の大きさがわかります。イチョウはわが国でも長寿の象徴として知られ、また生命力が強いことでも知られていました。広島に原爆が投下されたときに、焼け野原の中から初めに芽生えたのがイチョウであったとされています。
ここ50年間のイチョウ葉の研究は、こうした逸話を裏づける結果となっています。
1950年代から今日まで、ドイツの研究者を中心に行われた研究は400を超え、臨床実験も50にのぼっています。イギリスの権威ある医学誌である『ランセット』も、1992年11月号でイチョウ葉の記憶力の低下、抑うつ、不安、めまい、耳鳴りなどの軽減効果を報告し、同様の症状に医薬品と比べてあらゆる点で効果は劣らない上、副作用がない点を強調しています。
こうしたイチョウ葉の効能を発揮させる有効成分は、現在のところビロバリド(bilobalide)などのテルペンラクトンとフラボノイド配糖体とされています。その作用機序は、テルペンラクトンによって血液の粘土が低下して血行が促進され、フラボノイド配糖体の抗酸化作用によって毛細血管が保護されるためと考えられています。わが国では本格的な高齢化社会を迎え、イチョウ葉の持つ機能性への期待がますます高まっています。
最後にイチョウの効能をまとめると、まず記憶力の低下や耳鳴り、めまいなどの脳循環不全、およびそれに伴う機能障害の改善があげられます。次に、全身の血液循環の改善や脳代謝の改善による脳梗塞や認知症、手足のしびれの改善です。さらに、強力な抗酸化作用と末梢循環の促進による糖尿病や動脈硬化の予防と多岐にわたります。
安全性:「メディカルハーブ安全性ハンドブック」ではクラス2d~特定の使用制限(MAO阻害薬に影響を与える可能性)
なお、現在ではMAO阻害薬が使用されることはほとんどありません。ドイツのコミッショEモノグラフでも相互作用についての記述はありませんが、PAF(血小板活性化因子)を強力に阻害するため、抗擬固薬との併用や出血傾向がある者の服用には注意すべきとの意見もあります。