2012.11.20

大麻(ヘンプ)について

報告:清水暢子 コメント:林真一郎

イントロダクション

太古の時代から大麻(Cannabis sativa L.)の種子は、旧文化での貴重な栄養源として世界中で重宝されており(文献1)、中国、オーストラリア、ヨーロッパなどでは第二次世界大戦まで飢餓時の食物として用いられてきまし た。(文献2)向精神作用を有さないCannabisの種類は通称ヘンプと呼ばれ(1)、現代では栄養価値の高い食糧とし て、医療、環境のほか経済産業工程においても偉大な発展性があるため広範に研究されています。1990年代 に100万ドルであったのが、2005年の北アメリカでヘンプを使った商品の市場は1000万ドル(約11億円)、化粧 品においては3000万ドル(約33億円)にまで及びました。(文献3)この5年間で、北アメリカの市場で年に約30-50% の成長率があるヘンプ(文献3)がなぜ今注目・見直されているのか、食糧の観点から検証してみました。

麻実油(おのみゆ)は、主に20-25%のタンパク質、20‐30%の炭水化物、10‐15%の食物繊維の他、 カンナビノイドという大麻特有成分やビタミンやミネラルでできています。(文献1−4)また、種子の総重量の 30-35%は脂肪油(文献1、2、4)で構成されており、うち80-85%(1,2,)はリノール酸(LA; オメガ6; 18:2n6)とαリノレン 酸(LNA; オメガ3; 18:3n3)と呼ばれる、常温で液体の不飽和必須脂肪酸(PUFAs)で出来ています。(文献1−7)麻実油には、生体内で必須の生理作用があり、人体で合成することができず食品から摂取する必要のある必須脂肪 酸と必須アミノ酸のすべてが含まれています。(文献1−7)このことから大麻種子は植物界で最もバランスのとれた タンパク源である(文献2)と高い評価を受けています。また、必須脂肪酸のリノール酸とαリノレン酸の比率も3対1(文献1,4,7−9)と最もバランスのとれた比率(文献4)であることが分かっています。

必須脂肪酸リノール酸・αリノレン酸

大麻種子に含まれる不飽和必須脂肪酸は80-85%(1,2)で、一般に食べられている植物の中では最も高い値です。(文献2) 2番目に高い値をもつ亜麻油(flaxseed)は72%のPUFAsを含んでいます。( 2) 西洋ではこの100-150年の間 に、リノール酸 (肉類や卵や乳製品に多く含まれる)をαリノレン酸 (魚や海藻類に豊富)に対して、20-30対1(9) の比率で摂取するようになりました。このようなω6:ω3のバランスの乱れは、心臓病(文献5), ガン(文献5,9), 炎症性疾患(文献5,9) 自己免疫疾患(文献5,9), 冠状動脈疾患(文献9)、高血圧(文献9), 糖尿病(9), リウマチ(9), 骨粗しょう病(9)などの慢 性病を引き起こす原因となりますが, 4対1の比率では心臓病による死亡率を70%減少することが明らかになっています。(文献5)

また、リノール酸とαリノレン酸が2.5対1の比率の場合は直腸癌細胞の減少(文献5)を, 2-3対1で はリウマチの炎症を抑制(文献5)、5対1では喘息の症状を緩和しますが(文献5)、10対1だと逆の作用をもたらすこと が分かっています。麻実油に含まれるリノール酸とαリノレン酸は3対1の完璧なバランスを有するため、亜麻 をはじめとする他の油と異なり、麻実油を継続的に使用してもPUFAsが部分的に欠乏したりバランスが乱れ ることはありません。(文献2)また、麻実油の過酸化値は0.1-0.5PVと非常に低く、これに対してバージンオリー ブ油は約20PV、コーン油は40-60PVです。(文献2)

妊娠中は、胎児が必要なだけの脂肪酸を母親が全て提供する為、出産後はこれらの栄養素が大幅に欠乏し分娩 合併症や産後のうつ病のリスクが高くなります。(文献7)また出産後も母親は乳児に母乳でαリノレン酸, γリノレ ン酸,DHAなどの多様な脂肪酸を与えるため、母乳保育期間中も十分な補充が必要となります。(文献7)このリノ レン酸には白内障および網膜症や心臓血管症からの損傷を抑える効果があり(文献6), αリノレン酸はガンや腫瘍 細胞の成長及び炎症の抑制や、血液凝固を抑制して血液をサラサラにする働きがあり, また新陳代謝率も向上 させ脂肪を燃焼する働きがあります。(文献4)またαリノレン酸は、血圧及び血中コレストロール値(4)とトリグリ セリド値(文献6)の低下、糖尿病患者のインシュリン依存の軽減及び脂肪代謝の平常化、新陳代謝率や膜流動性の 改善やリウマチの炎症を抑制する働きがあります。αリノレン酸は多量摂取しても一切の副作用は見られず通 常推奨レベル(一日のカロリー消費量の2-2.5%)でも十分に上記の改善効果が得られます。

必須脂肪酸の代謝経路

リノール酸は体内でγリノレン酸(GLA)へ、更にはアラキドン酸(AA)へと変換され、αリノレン酸はエイコサ ペンタエン酸(EPA) とドコサヘキサエン酸(DHA)という、心臓や脳や網膜の正常な発達に欠かせない物質(文献6,7)に変換されます。懐胎中の胎児の脳はおよそ25万個の神経細胞を毎分作りだし、のちに千億以上のニュ ーロンを製造するため、一生分の脳細胞の70%は生前に決定されると言われています。(文献7)

次に、アラキドン酸とEP Aは体内で、ホルモンのような働きを持つ(文献8)エイコサノイドに変換され、最終的に はプロスタグランジン(PG)へと代謝されます。アラキドン酸はPGE1を形成するのに対して、エイコサペンタ エン酸は反対に必要以上のPGE2が形成されるのを妨げる傾向があります。 このアラキドン酸から変換され るエイコサノイドは炎症を促し、血管を縮め、血液を凝固させますが、EP Aから変換されるエイコサノイド は炎症を抑え、血管を広げ、血小板が凝固する傾向を抑えます。(文献8)リノール酸を過剰摂取すると体内のPGE2 のレベルが上昇し、炎症の悪化や血小板の凝固を引き起こしますが、麻実油に含まれるバランスのよいリノール酸とαリノレン酸を摂取すると、血管を収縮させたり血栓性を抑えたり炎症を抑える働きのあるプロスタノ イド(PG+トロンボキサン)とロイコトリエンが十分に作られます。

多価値不飽和脂肪酸γリノレン酸・ステアリドン酸

麻実油にはγリノレン酸(GLA)という、高コレストロール値及び高血圧1やPMSの症状を軽減し炎症性疾患や 自己免疫疾患、エイズなどのウィルス感染やガンやアルコール中毒症や生殖器障害や糖尿病の予防治療に有効 (文献6)な(不飽和必須脂肪酸?) が含まれるため、他の種子油と比べて栄養価値が高く評価(4)されています。通 常は一日のリノール酸の摂取量の5-10%がガンマリノレン酸に変換されるため、体重60kgの成人が一日5-20g のリノール酸を摂取すると250-1000mgがガンマリノレン酸に変換される計算になります。(文献6) 1日50-100gの リノレン酸は表皮を保護し(文献3)、アトピー性皮膚炎やかんせん及びじんましんなどの皮膚疾患や免疫性疾患の 治療に有効なことが明らかになりました。(文献6) 母乳にも1L当たり100-400mgほどのγリノレン酸が含まれて おり乳児がアトピー性皮膚炎になるリスクを軽減します。

ステアリドン酸はαリノレン酸と同様のω3脂肪酸の一種(文献3)のため、その働きもω3と同じですが(上記参考)、 麻の実にステアリドン酸が含まれているということは栄養学上実に珍しく、特に3%以上含むということ自体 まれである。ステアリドン酸はγリノレン酸同様、EP Aやプロスタグランジンの組成を促す新陳代謝の過程に おいて、仲介物質(文献3)としての役割を持ちます。

1日の脂肪摂取量は全カロリーの15-20%で(4)、うち3分の1は必須脂肪酸が理想なので、1日に2500カロリ ーを摂取する場合の理想的な摂取量はリノール酸が9-18gでαリノレン酸が6-7gとなります。よってこの摂取 量は1日に麻実油をテーブルスプーン3-5杯飲むことで軽々達成することが出来ますが、食事から摂取する必須 脂肪酸の欠乏(4)やストレス(2、4)、高度のコレストロールレベル(文献6) や糖尿病などの疾患(文献2、4)、更には高 度のアルコール摂取(文献6)や高齢(文献6)やAIDSなどのウィルス感染などはリノール酸からγリノレン酸への変換率 を低下させてしまいます。また酸素の過剰摂取、ビタミンEやセレニアムのような抗酸化物質の欠乏、怪我や 炎症やガン及びアルコールや神経遮断薬などの毒物による細胞破壊もγリノレン酸への変換率に大きく影響し ます。(文献6) よってこれらの項目に該当する場合は麻実油の摂取量を増やす必要があります。

タンパク質と必須アミノ酸

麻の実の胚芽部分(文献3)は必須アミノ酸を全て含む良質のタンパク源です。(文献1-4)大麻のタンパク質に含まれるグ ロブリン・イデスチンは、血中に見られるグロブリンと酷似しているため消化や吸収がはやく、侵襲性の病原 体に対する抗体を生産するので人体にとって大変有益な化合物です。(文献2)大麻のイデスチンは完全なタンパク 質で、人体の消化器官との融和性が高い(文献2)ことで知られており、1955年に行われたチェコスロバキアの結核 栄養学調査では、栄養分の吸収を妨げて身体を衰弱させる消耗性疾患の結核治療に唯一有効な食物が大麻種子 であることを発見しています。(文献2)また、麻実油には高レベルのアルギニンが含まれます。(文献1,9) この化合物 質は、止血や繊維素溶解の管理を初め、血小板や白血球の動脈壁との相互作用、血管緊張の調整、血管平滑筋 細胞の増殖や、血圧のホメオスタシスに携わる、心血管系のなかで枢軸の信号メッセンジャーとして知られる、一酸化窒素(NO)を精製する為に必要な先駆物質です。(文献9)

ヘンプ特有成分カンナビノイド

カンナビノイドとは大麻に含まれる科学物質の総合名称で、60種類以上の成分がヘンプ特有の成分として分離されており、その中でもテトラヒドロカンナビノール(THC)、カンナビジオール(CBD)、カンナビノール (CBN)が三大主成分として知られています。カンナビノイドは、多くの幻覚性植物の主成分であるアルカロイ ド(窒素)を含まず、酸素、水素、炭素で出来ています。過去の研究から、圧搾過程において約10mg/kgのCBD が麻実油に混じることや、麻実油に含まれるTHCは最高で50ppm(文献4)程だということが分かっています。

カナダ保険省は産業用、食用ヘンプを生産する際、THC成分を10ppmまでと制限していますが、スイスでは、 ヘンプオイル製品においては50ppm、その他の製品においては5ppmまでとしています。(文献3)大麻種子を水 で洗浄するという簡単な方法でTHCを5ppm以下にまで削減することができ、実の外皮を取り除けば、更に 2ppm以下にまで下げることも可能です。(文献3) アメリカを始め多くの市場で、麻実油を規制するか否かはTHC の有含量が問題となっていますが、産業用ヘンプはTHCの血液残存量が規定量の15ng/ml(文献3)以下に品種改良 されています。

CBDとTHCは大麻草の腺組織で作られ貯蓄されますが、通常CBDは繊維と種子油にTHCよりもはるかに多く 含まれています。CBDには痙攣や癲癇や炎症を抑え、痛みを鎮める(4)働きがあるため、麻実油に含まれる量 はわずかにせよ健康への向上効果があります。CBDは1日100-600mgで腫瘍を20-25%減少することが立証さ れており(文献4)、THCのように中枢神経系へ精神的作用を齎すことなく、癲癇や痛みを抑えることも分かってい ます。またCBDはその他のカンナビノイドよりもストレプトマイセス・グリセウスや黄色ブドウ球菌といっ たグラム陽性細菌に敏感に反応し、弱酸性の培地に5ppm程度の希釈液を加えるだけでこれらの細菌の繁殖を 抑えることが分かっています。(文献4)また、ヘンプオイルにはイースト菌の繁殖も抑える抗菌効果があります が、この効果はカンナビジオール酸 (CBDA)と密接に関係しており、CBDAをより多く含んだヘンプはより強 力な抗菌性を有することが分かっています。大麻の樹脂に含まれるCBDにも抗グラム陽性細菌作用がありま すが、CBDは種子の中で生成されず圧搾過程で多少混ざるだけなので有含量は極めて微量です。

実験と観察の結果、紫外線が大麻の“熟成”を促進させることが分かっています。熱帯地帯でCBDはほぼ全て THCに変換された形で熟成期間を完了する傾向がありますが、やや温帯地帯で栽培された大麻にはTHCより もCBDの割合が多くなります。THCの蓄積は紫外線からの保護という進化過程からなる現象のため、赤道に 近づいて紫外線の量が増えるほどCBDからTHCへの変換が加速的に行われます。より北緯で栽培される現代 の商業ヘンプの収穫物は“未完熟”のためCBDが高くTHCが低いので、この特性を利用して、THCの持つ向精 神作用の危険を負わずにCBDの効能を利用することができます。この実験ではカナダで栽培された麻実油が 使われていますが、高濃度のCBDがでたもののTHCは不検出でした。(文献4)成熟度のバロメーターとして、完 熟した麻実油は茶色がかった緑色で香りの良いナッツ臭を持ち、未完熟な種子油は葉緑素が多いため、濃緑色 で苦味があり香りも少なくなります。(文献3)

ヘンプにはこれら沢山の健康改善効果がありますが、局所施用も体内施用も今日まで一切の毒性の報告はなく、 カナビノイドを含む全ての構成要素に毒性は確認されていません。LA/LNAの比率が完璧なため、多量摂取しても副作用はありませんが(2,4)、他の油の多くはLA/LNAの比率が適切ではないため、代謝中間体が蓄積され 脂肪酸の代謝を妨げてしまいます。

植物ステロール

麻実油は、γリノレン酸を含む他の植物と比べて高数値の植物ステロールを含みます。含有量の多いβシトス テロール、キャンペステロール、スチグマステロールなどの植物ステロールは、コレストロールを結晶化と共 沈化することで血中への吸収を妨げ低下する働きや、前立腺と大腸癌のリスクを低減させることが立証されています。(文献8)そのなかでも最も豊富なβシトステロールにはウィルス及び抗菌や炎症を抑える働きがあります。(文献4)1日の食事に含まれる500mgのコレストロールに対して1gのβシトステロールを摂取することでコレストロールの吸収が平均42%低下することが分かっており(文献4)、長期間の投与でも効果は減少せず有毒性も副作用も見られないため(文献4)、血漿コレストロール削減の長期治療に最適です。

トコフェロール

ヘンプオイルには大豆油の含有量とほぼ同様のトコフェロールという抗酸化剤(3,4)が含まれ、その中にはαと γ異性体の2種類があります。トコフェノールのサプリメントにはいっているのは大抵αですが、ヘンプを含 む沢山の植物に含まれるのはγで、γは腸に、αはプラズマに分泌されることが分かっています。αは膜流動性 を増やし、肺からVLDLへと分泌される為、生物活動はγより高いですが、抗酸化物質としてはγもひけをとら ず、むしろαより低い50ppm以下の過酸化亜硝酸で、ホスファチジルコリンヒドロペルオキシド・ヒドロペル オキシドが作られるのを阻止します。さらにγトコフェノールはαトコフェノールよりも、冠状動脈性心疾患 の予防治療としてより効果的であることが分かっています。麻実油にはαに比べ高い量のγが含まれており、γ は特に結腸癌の治療に効果があります。

その他

1Lにつき740mgのβカリオフィレンと 160mgのミルセンの精油(テルペン)が麻実油に含まれており、この成 分は植物の葉で作られるため通常は種子油ではなく精油に含まれている。より麻実油に含まれる量は微量では あるものの、βカリオフィレンは炎症を抑え細胞を保護し、ミルセンは抗酸化の働きがあるため、ヘンプの価値をより高いものにしています。テルペンもCBDとほぼ同様の割合でやはり圧搾の過程で腺毛から麻実油に 入りますが、抗炎症、抗アレルギー、細胞保護の効能があることが分かっています。サルチル酸メチル(4)も 微量ですがヘンプオイルに含まれ、解熱、抗炎症、鎮痛性の働きがあり、定期的に少量摂取すればアスピリン と同様に心臓発作、脳卒中、ガンのリスクを低減します。また、ポリフェノールの一種で、リグナンアミド類 に属するカンナビシンという麻の実独自の抗酸化物質が麻種子に含まれており、中でもカンナビシン A(0.324%)はビタミンEと比較しても5倍の抗酸化の活性があることが分かっています。(10)

まとめ

麻実油(おのみゆ)はリノール酸、αリノレン酸、γリノレン酸、ステアリドン酸などの不飽和必須脂肪酸を豊富 に有し、特にリノール酸とαリノレン酸は3対1と、栄養上最もバランスの良い比率で含まれています。また 麻種子は全必須アミノ酸を含む良質なタンパク源で、グロブリン・イデスチンとアルギニンなども豊富に含む ほか、植物ステロール、トコフェロール、テルペン、サルチル酸メチルなど豊富な有効成分を含んでいます。

また、カンナビシンやカンナビノイドなど大麻独自の有効成分を豊富に含むため、白内障、網膜症、心臓血管 症、前立腺と結腸ガン、腫瘍、糖尿病、リウマチ、炎症性疾患、自己免疫疾患、ウィルス、イースト菌、グラ ム陽性細菌感染、アルコール中毒症、生殖器障害、心臓発作、脳卒中など様々な病状に適応可能です。また、 一日1-5杯の麻実油を飲むと、新陳代謝率の向上、血圧や血中コレストロール値とトリグリセリド値(の減少や 抗酸化、解熱、鎮痛性も健康改善効果も見られます。ただし基本的に、不飽和必須脂肪酸は熱、光、酸素に対 して非常に敏感なため、効能を損ねないためにも、麻実油の加工と保存には十分の注意が必要です。(文献2)また、 海外から輸入される大麻種子は発芽不能処理や臭化メチルで燻製消毒が施されているため、種子の鮮度を落と し栄養分含有量を減らしていることにも注意をはらう必要があります。(文献2)

参照文献資料

  1. Callaway JC. Hempseed as a Nutritional Resource: An Overview. Euphytica; Vol. 140; 65-72; 2004
  2. Robinson R. The Great Book of Hemp – The Complete Guide to the Environmental, Commercial, and Medicinal Uses of the World’s Most Extraordinary Plant. Park Street Press; 1996
  3. Przybylski R. Hemp – Revival of a Forgotten Oilseed Crop. PJ Barnes & Associates; Vol. 18; pp 58-62; 2006
  4. Leizer C, Ribnicky D, Poulev A, Dushenkov S, and Raskin I. The Composition of Hemp Seed Oil and Its Potential as an Important Source of Nutrition. Journal of Nutraceuticals, Functional and Medical Foods Vol. 2; The Haworth Press, Inc. 2000
  5. Simopoulos AP. The importance of the ratio of omega-6/omega-3 essential fatty acids. Biomedicine Pharmacotherapy: Vol 56; 365-379; Elsevier; 2002
  6. Horrobin DF. Nutritional and Medical Importance of Gamma-Linolenic Acid. Prog. Lipid Res; Vol.31; 163-194; Pergamon Press Ltd; 1992
  7. Smith K. Hempseed Oil: A Smart Start. The Hemp Report; Vol. 2; 2000. Available from the website: http://www.hempreport.com/issues/14/hempfoods14.html
  8. Fitzpatrick K. The Nutritional Properties of Hempseed Oil. The Hemp Report; Vol. 2; 2000. Available from the website: http://www.hempreport.com/issues/14/hempfoods14.html
  9. Rodriguez-Leyva D, Pierce GN. The Cardiac and Haemostatic Effects of Dietary Hempseed. Nutrition and Metabolism; 2010

コメント: 

現在では大麻(ヘンプ)=マリファナ=危険な麻薬といった認識が一般的ですが、1948年にGHQの占領下で大麻取締法が制定されるまでは、わが国では各地でヘンプの栽培が行われていました。その理由はヘンプが食品として、また衣類や紙の原料としてなど生活全般に利用できる極めて有用な植物だからです。本論文では、食品としてのヘンプに含まれる多様な成分とその機能性について報告しています。

ヘンプの種子に含まれる油脂はリノール酸(オメガ6系脂肪酸)とα-リノレン酸(オメガ3系脂肪酸)が3対1という理想の比率で構成されており、オメガ3系脂肪酸の供給源として有用です。また、ヘンプの種子の胚芽部分には必須アミノ酸がすべて含まれているため、良質のタンパク源にもなっています。さらに、植物ステロールやトコフェロール(ビタミンE)といった脂溶性成分も豊富に含まれています。そして、ヘンプの特有成分としてのカンナビノイドは鎮痛作用や消炎作用があり、本論文には詳しい記述はありませんが、がんや多発性硬化症などへの臨床応用が試みられています。

ヘンプはヘルスケアの領域のみならず、エコロジーの領域でも大きな注目を集めています。片寄った情報だけで判断せず、この可能性に満ちたハーブに対して、今後の展開を注目していきたいと思います。

(林真一郎)