クルクミンの結腸および直腸腫瘍予防効果についての論文紹介
今回紹介する論文の当該臨床試験で、クルクミンの抗腫瘍に対する効果の有効性が示唆されました。ですが、まだ臨床でのデータは乏しく、作用機序は明確にはされていません。有効性が示唆されたクルクミンの投与量は、4g/日と非常に多く(販売されているウコン飲料に含まれるクルクミンは30~40mg/本)、一ヶ月に渡る連続投与は、被検者も困難があったと考えられます。また、下痢などの副作用も観察されています。
この臨床試験は非盲検で実施されていて、更に裏打ちされた追加の試験を実施しなければなりませんが、クルクミンの結腸・直腸腫瘍をターゲットにしたバイオアベイラビリティ*データを取り、有効性がある可能性を検証して次のステップへ繋げたことは意義がありそうです。
前臨床試験デ-タの解析を元に、作用機序の解明、段階的な臨床試験の実施、そして製剤方法の研究開発をさらに進めて、クルクミンが抗腫瘍に対する有効性が証明され、健康維持に活用されていくことを期待しています。
(コメント:玉村聡子)
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第Ⅱa 相臨床試験:クルクミンの結腸および直腸腫瘍予防効果
要約
クルクミンはスパイスであるウコンの主成分である。
in vitro 及び動物研究では抗炎症性効果や抗腫瘍性効果を示す。結腸および直腸腫瘍を有するげっ歯類での研究では、異常腺窩巣(以下、ACF)や腺腫の予防効果も明らかになっている。クルクミンは、発がん前駆物質のエイコサノイドの一種であるプロスタグランジンE2(以下、PGE2)や、5-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(以下、5-HETE)の生成を阻害することによって、発がんを抑制する。クルクミンは、シクロオキシゲナーゼ1 及び2 の活性阻害によってラットの粘膜中PGE2 濃度を減少させ、5-リポキシゲナーゼ活性阻害によって5-HETE 濃度を減少させる。
多くの施設で前臨床試験が実施され、クルクミンの効果等に関するデータはあるが、結腸や直腸腫瘍への効果を期待したクルクミン投与のバイオアベイラビリティを評価したデータは少ない。クルクミンを経口投与(2g又は4g/日を30 日間)し、ACF 中のPGE2 濃度(主要評価項目)と5-HETE 濃度、ACF 数、ACF の増殖に及ぼす効果について、非ランダム化、非盲検の臨床試験で検証した。スクリーニング時の大腸内視鏡検査で、8 個以上のACF を有する喫煙者44 名がこの臨床試験に参加した。30 日間のクルクミン投与前後に、以下の4 点を測定・評価した。1)ACF と正常組織のPGE2 濃度と5-HETE 濃度を液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析計で測定した。また、2)直腸内視鏡検査でACF 数を調べた。3)ACF の増殖程度については、Ki -67 の免疫組織化学的染色によって評価した。4)血清中と直腸粘膜中のクルクミン濃度は、高性能液体クロマトグラフィーで測定した。
41 名の被験者が30 日間の投与を完了した。被験者の中に、ACF あるいは正常粘膜中のPGF2 濃度と5-HETE濃度が減少したものはいなかった。また、正常粘膜中のKi-67 が減少したものもいなかった。 ACF 数では、クルクミン2g 投与群で減少はみられなかったが、クルクミン4g 投与群で、投与前と比較して40%の有意な減少がみられた(P<0.005)。このACF 数の減少は、同じクルクミン4g 投与群における、血漿中クルクミン複合体濃度値の有意な上昇(臨床試験実施前の5 倍、P=0.009)に関連していると考えられた。クルクミンは、2g 投与及び4g 投与のいずれも良好な忍容性を示した。本臨床試験に結果から、クルクミンのACF 数を減少させる効果と、これは、局所的ではなく全身に運ばれたクルクミン複合体による効果の可能性が示唆された。
(翻訳:佐藤史歩)
<用語解説>
*バイオアベイラビリティ
生物学的利用率:摂取した化合物が生体内で利用される効率のこと。化合物の血中濃度や尿中排泄を時間経過とともに測定して評価する。静脈内注射投与以外の投与経路の場合、吸収・代謝の影響を受け、投与された化合物すべてが血液循環に取り込まれない。当該化合物がどのくらい吸収され、作用部位でどのくらい利用されるかを確認することで、必要な化合物の投与量を決定するための指標の一つとなる。