2017.12.1

石垣島で植物とともに生きる

女優

吉本多香美

──ハーブに興味をもつようになったきっかけをお聞かせください。

吉本(敬称略、以下同):NHKの仕事でカナダのクリーインディアンを取材したことがあります。そこではメディスンマンが人を癒すために祈り、ブッシュに分け入り、患者に必要なハーブを摘んで処方する癒し方を教えてくれました。心と身体はつながっていて草に癒す力があると確信したのは、その出会いからです。私もこんな力をもちたいと思い、勉強を始めました。

──協会のイメージキャラクターを6年間お引き受けいただきましたが、ご自身や周りの方との関係に変化はありましたか?

吉本:イメージキャラクターを務めるうち、自分自身がハーブや食べる野菜を育てたいという思いがより強くなり、石垣島に移住しました。そこでメディスンマンのように自然とともに生きる中、おのずとハーブに関わる人たちに出会うことが多くなりました。そして、自分のハーブを栽培し、必要な人たちと分かち合いたいという思いから、3年前に農地と農業従事者の資格を取ってハーブガーデンを作り始めました。今は、月桃、ハイビスカス、グアバ、島桑、ビワ、クミスクチンほか多くの植物たちが育ち、収穫し、ハーブティーほかの商品にもなり始めています。


海を望む石垣島のハーブ畑にて

──実際にどのようにハーブを活用されていますか?

吉本:毎日のように、畑のハーブを摘んでお茶を作り、子どもも私も飲んでいます。体調によって選んだり、ハーブを食べて身体を整えたりもします。ときには、浜や山に行き、摘んでチンクチャーを作って、メディカルハーブとして保存し活用するのは、喜びでもあり、暮らしに欠かせない手仕事です。

──島のユニークなハーブをご紹介ください。

八重山で最近注目されているハーブのひとつは、月桃です。ショウガ科の植物で、力強い葉とは対照的に、花は蘭のように官能的な形をしていて、匂いもまた独特で誘われるような香りがします。島の人たちは、その植物がもつ防腐、抗菌作用から、内地ではオニギリを笹の葉に包むように、月桃の葉に包みます。虫除けにもなり、抗酸化作用もあり、お茶にして飲んだり、美肌によいと蒸留水を化粧水にもします。

そして、ハマゴウ、生薬名はマンケイヨウ。島の綺麗な浜辺によく生え、バジルとオレガノを混ぜたような、爽やかな強い香りがします。島では神聖な植物として扱われ、神事の際、祈りを捧げる前にこれを焚きつけたりします。食用にはペーストにしてパスタや料理に活用できます。ホルモン様作用があり、妊娠中や授乳中の方には注意が必要なハーブです。食用のほか、私はこのハーブでフラワーエッセンスを作りました。

島のユニークなハーブは尽きることなく、八重山はハーブの宝庫だと日々思っています。

──今後、やってみたいことは?

吉本:もっといろいろなハーブをブレンドして、ハーブティーを作りたいです。今、長命草を育て始め、私の畑の土に合う、育て方を模索して実験しています。身近にあるハーブから、身体を整えるいろいろな種類のおいしい命ぬち草ぐさ茶を生み出して商品にし、将来的にはハーブを使ったワークショップや教室が開けたらというビジョンを描いています。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第42号 2017年12月