【ペットのケア】犬と猫のためのハーブ&アロマケア─冬" /> 【ペットのケア】犬と猫のためのハーブ&アロマケア─冬 – 日本メディカルハーブ協会
2017.12.1

【ペットのケア】犬と猫のためのハーブ&アロマケア─冬

飼い主さまとペットのためのフィトセラピーWof!主宰

加藤志乃

寒さがより一層本格的になる頃となりました。この時期、伝統医学的な考えでは人の場合は冷えと乾燥対策をしますが、ペットの世界でも冷えや乾燥が原因の不調が多くなります。そこで、多くの方が一緒に暮らしている犬と猫の両方に、気軽に取り入れられるハーブとアロマの冬場のケアについてお伝えいたします。

冬場に増える犬猫の主なトラブルとは?

冬場に多くなる犬猫の不調には主に冷えが原因の消化器系や泌尿器系の不調、関節炎・ヘルニアなどの神経骨格筋系の痛み、そして主に乾燥が原因の呼吸器系の不調や皮膚・被毛の乾燥などがあげられます。
ペットたちは言葉で教えてくれませんから飼い主が早めにサインをキャッチしてあげられるとトラブルを未然に防いだり、ダメージを軽くすることができます。

内服剤としてのハーブの利用

ペットへのハーブやアロマの利用は、浸剤・チンキ剤・パウダー剤などの内服剤、ローションやバスといった外用など多岐にわたりますが、次の不調のような場合、まずドライハーブパウダーやハーブティーを食事に混ぜたり、水分として与える方法が利用しやすいでしょう。場合によってはシリンジを使って直接飲ませます。シリンジからおいしいものが出てくることを教えておくと介護が必要になったときにも便利です。

与える量は以下の表を参考に、また初めて与える際は少量として異変が生じないかチェックしてください。

内服として与える量の目安
– ドライハーブパウダー
– 小型犬 小さじ1/4~1/2
– 中型犬 小さじ1/2
– 大型犬 小さじ1
– 猫 小さじ1/4

ハーブティー
– 小型犬 小さじ2
– 中型犬 大さじ1
– 大型犬 大さじ2
– 猫 小さじ1~2

──消化器系の不調に

12月、1月は特にイベントが続いて人の出入りが多く、食べすぎ、食べ慣れないものの摂取、来客によるストレスなどで消化器系の不調がよく見られます。いつもよりお腹がギュルギュル鳴る、便に粘液がつく、臭いおならが出るなどは不調のサインかもしれません。

──呼吸器系の不調に

空気の乾燥によって粘膜が刺激されて咳や逆くしゃみが増えてしまうことがあります。免疫力が低下していることも多いので同時にケアしてあげてください。

──泌尿器系の不調に

寒くなると冷えや免疫力の低下から膀胱炎や尿路感染症が増えます。食事の内容や水分摂取量が関係していることも多いのでまずはそちらをチェックしてください。その上で季節的に発症しやすいなどの場合、予防的なハーブの利用が結果を出すケースが多々あります。尿路感染症や膀胱炎は再発しやすく、まず尿の色や臭いに微妙な変化が出てきます。あれっ?と思った時点でハーブを利用するとリカバリできることがありますので、日頃から排泄物を意識することも大切です。

Recipe 1

内服剤としてのハーブレシピ

  • 消化器系の不調に
    食べすぎ : フェンネル+ペパーミント+ダンディライオン
    下痢 : ジャーマン・カモミール+ラズベリーリーフ+マーシュマロウ
    ストレスによる消化不良 : ジャーマン・カモミール+フェンネル+キャットニップまたはスカルキャップ
  • 呼吸器系の不調に
    乾いた咳・ケンネルコフ : マレイン+エキナセア+ローズヒップ+マーシュマロウ
    湿った咳 : タイム+フェンネル+マーシュマロウ+バレリアン
  • 泌尿器系の不調に
    膀胱炎の予防 : クランベリー+エキナセア
    尿路感染症 : エキナセア+コーンシルク+ドクダミ
シリンジを使って与える
ハーブボールで全身トリートメント

ハーブボールトリートメント

現在、鍼灸や温熱療法を導入する動物病院が増えつつあります。ハーブボールはハーブを布で丸く包み、ボール状にしたものを温かく蒸して全身に押し当てるハーブのお灸のようなものです。身体を温めることは免疫力アップにつながりますし、特に骨格筋系のトラブルや冷えによって免疫力や活動量が落ちている場合などに効果的です。じんわり身体が温まり、ほんのり香るハーブの香りが二重にリラックスを誘い、うっとりする犬や猫も多いです。トリートメントの後は湿った被毛を乾かしてください。

ハイドロゾル(芳香蒸留水)を使った静電気予防のためのブラッシングスプレー

湿度20%、気温25°C以下になると静電気が発生しやすくなります。全身を被毛に覆われている犬や猫は触れたときにバチっとなる不快感だけでなく、アレルギーの原因にもなる埃を吸い寄せたり、長毛種であればもつれ毛や切れ毛の原因となることもあります。
犬と猫は身体の仕組みが異なり、猫は犬よりも植物の代謝に負担がかかるので特に精油の使用に注意が必要ですが、ハイドロゾルに含まれる精油は水溶性成分であり、濃度も低いため猫に対しても比較的安全に使用できるものが多いです。また精油を使うよりも香りがマイルドなので、繊細な動物たちにも受け入れられやすいです。
使うときは身体に直接吹きつけられることを嫌がるペットが多いので、ブラシや手に吹きつけてから使います。また、ペットに触る前に自分の手に吹きかけてから触ってあげるとバチっとなる不快感の予防に役立ちます。防腐剤など使用していませんので冷暗所に保管して1週間程度を目安にお使いください。

Recipe 2

ブラッシングスプレー

※準備として、使用する道具類を殺菌消毒してください。
※下記の材料をすべて混ぜてスプレー容器に保管します。
– 犬用ブラッシングスプレー
・ハイドロゾル(芳香蒸留水)45mL
・リンゴ酢(必須ではない)3mL
・植物性グリセリン2mL
– 猫用ブラッシングスプレー(約3倍に希釈して使用)
・ハイドロゾル(芳香蒸留水)15mL
・精製水30mL
・リンゴ酢(必須ではない)3mL
・植物性グリセリン2mL
※ハイドロゾルの種類と使い分け
以下にあげる3種類のハイドロゾルは乾燥対策に向き、犬・猫にも安心して使えますので、性格などに応じて使い分けてもよいでしょう。
ラベンダー:テンションが高く、興奮しやすい。精神的に安定している。
カモミール・ローマン : 不安・臆病・緊張が強い。消化器系の不調を生じやすい。
ローズ : 神経質・気持ちが上下しやすい。何らかのトラウマを抱えている。

終わりに

近年、ペットは大切な家族という考え方が主流となっています。身体の仕組みはそれぞれ少しずつ異なりますが、正しい知識をもって使えばハーブやアロマは私たち人間以上に動物たちの心と身体を癒してくれるすばらしいポテンシャルをもっています。
飼い主も一緒に楽しみながら使うと更なる相乗効果が生まれるように感じます。どうぞ皆様も愛犬・愛猫の反応を見ながら少しずつ取り入れてみてください。

飼い主さまとペットのためのフィトセラピーWof!主宰
加藤志乃 かとう・しの
飼い主さまとペットのためのフィトセラピーWof!主宰。日本アニマルセラピー学術協会理事長、愛犬救命協会理事長。著書『愛犬救命マニュアル』(エーディーサマーズ出版)。臨床検査技師。製薬会社勤務中に愛犬の病気がきっかけで自然療法の世界に出会い、保護活動を通して動物への実績を積む。「動物の幸せ=飼い主の幸せ」として講師・セラピスト活動を通してアドバイスを行っている。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第42号 2017年12月