2020.7.1

ペットを癒すフラワーレメディー

獣医師

越久田活子

はじめに

人の世界ではホリスティック療法が取り沙汰されている現在、伴侶動物も現代医療にとらわれずに、その動物が自らもっている自然治癒力に重きを置いたホリスティック的な健康維持、病気の治療がみられるようになってきました。

そのひとつにフラワーレメディがあります。これは植物固有がもつ独自のエネルギーが心や体を癒すことに注目した、イギリスのエドワード・バッチ博士の功績に端を発して、現在では世界中の各所から多数の作り手によって植物以外の鉱物や動物も含め、何千種類ものレメディが使われています。

パシフィックエッセンスはカナダの西海岸の海と自生する花、鉱物から作られたレメディで、伝統中医学の経絡系に関連づけられています。創始者のサビーナ・ペティット女史は鍼灸師でもあります。12種の動物のためのコンビネーションエッセンスがあって、動物が生きていく上で遭遇する、飼い主、ほかの動物、ライフサイクルなどさまざまな問題に感情、精神、肉体のバランスを取り戻すためのものです。

ストレスが多い現代社会において、動物も人と同じく、病気や環境の変化、飼い主や同居動物などによるストレスが原因で行動の変化が起きたり、病気に至る場合もあります。

筆者は日常の診療や家庭において、さまざまなストレス下にある動物たちに使用しているバッチフラワーレメディとパシフィックエッセンスについてその概要と使い方について述べます。

(1)バッチフラワーレメディ

バッチフラワーレメディは38種類の中からその動物の個性や内的、外的環境の変化に合わせてレメディを選んで調合して与えることができます。その際は最大7種類まで、レスキューレメディは1つと数えます。

──レスキューレメディ

バッチフラワーレメディでは一番使われているレメディで5種類のレメディを混合して1つになったものです。

  •  チェリープラム : コントロールを失ってしまいそうなとき、自制心を呼び戻す
  • クレマチス : 気を失ったり、意識が遠のいたりするときに
  • インパチェンス : イライラしたり焦ったりするときに興奮を和らげて落ち着く
  • ロックローズ : 極度の恐怖や恐れに陥ったときに
  •  スターオブベツレヘム : ショックやトラウマからの解放に

使い方:

  • パニックに陥ったとき、事故などで意識を失ったとき、てんかん発作、心臓発作のときなど、緊急時には原液を口に垂らしたり、手に取って耳の内側、肉球に塗りつけてもよいでしょう。
  • 興奮しやすい動物や、音や雷に対して過剰に反応する動物にはトリートメントボトルに4滴滴下して、ボトルの肩までミネラルウォーターを入れて希釈した物を1回4滴、1日4回、飲み水や食餌に混ぜて与えます。
  • また、スプレーボトルに希釈して空間にスプレーしてもよいでしょう。

雷恐怖症の場合は、レスキューレメディに加えて、ミムラス(原因がわかっている恐れ)、アスペン(原因がはっきりしない恐れ、予期不安)、ウォルナット(環境の変化に)の調合がよいでしょう。分離不安症にはレッドチェストナット(愛する者への過度の心配)、またはチコリー(愛を求める)を加えるとよいでしょう。

(2)パシフィックエッセンス

バランサーフォーアニマル

12経絡のすべてと7チャクラすべてを整えることで、ストレスやショックが解消されます。急性のストレスに役立ちます。スプレータイプですので、手に取って耳や肉球、皮膚のTタッチやマッサージをしたり、空間にスプレーします。

また、飲み水や食餌にスプレーしてもよいでしょう。このエッセンスは心と体のバランスをもたらし、平静さを取り戻させ、細胞に残った過去のトラウマを消し去ります。

パシフィックフォーアニマル

このエッセンスは、その状況に合ったエッセンスが1つのスプレーボトルに入っていて、動物の状態によって使い分けることができます。例えば──。

  •  カーミング〜落ち着き〜 : 興奮しやすい、緊張している、音など外部刺激に過剰に反応する、落ち着きがないなどのときに、身体的、感情的、精神的な平安や平静さを得られるように。
  • コンフィデンス〜自信〜 : 自信を喪失している動物へ。内気、臆病、過度に服従的などの動物に、生きることを楽しみながら体験し、表現できるように。
  • ハンドルウィズケア〜人からの扱いに安心を感じる〜 : 人の手で扱われると恐怖や抵抗感を抱いたりする動物へ。特に獣医師やトリマーに会うときなどに心から安全と安心を感じられるようになります。
バッチフラワーレメディ
中央:トリートメントボトル
右:スプレーボトル
パシフィックエッセンスのボトル

おわりに

バッチフラワーレメディ、パシフィックエッセンスは芳香療法、ハーブ療法とは違って自然界にある植物に加えて、鉱物のもつエネルギーによって、心と体を癒す療法で、医薬にとって代わるものではありません。自分に必要のないレメディは、何ら影響することなく体を通り過ぎていきます。

プラセボのない動物はレメディを、いわば素直に受け入れるために、人に比べて効果の発現も早く認められます。伴侶動物の心の変化、問題は飼い主のそれを反映している場合がしばしば見られます。そこで飼い主さんも一緒に摂ることをお勧めします。
レメディは最近ではいろいろな店で販売していますし、インターネットで購入することもできます。でも、飼い主さんが自分や動物のレメディ選びに迷ったら、必ず対面でプラクティショナーのカウンセリングを受けてレメディを選んでもらってください。

獣医師
越久田活子 おくだ・ ひろこ
日本ホメオパシー医学会認定獣医師。JAHA認定家庭犬しつけインストラクター、テリントンTタッチ認定プラクティショナー、パシフィックエッセンス・プラクティショナー。動物の一般診療のほかにホリスティック医療を実践。著書が『うさぎと暮らすホリスティックケア─指圧&マッサージ─』(マガジンランド)、『ネコとしあわせに暮らすための魔法のなで方』(主婦と生活社)など。

初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第42号 2017年12月