植物美容に使いたいハーブ
多くの化粧品ブランドで“植物”というキーワードが使われることが加速的に多くなり、また、自然派のスキンケアブランドも続々と登場…。
そういう背景も含め、既製の化粧品に限らず植物(自然)の恵みに関心を寄せ、美容にハーブを取り入れることに興味をもたれる方がとても増えてきたと改めて強く感じます。
といっても、植物美容を実践されている方はまだそう多くないようです。
その理由のひとつは、植物美容を実践するにはハーブをどのように使うと効果的なのか、いまひとつよくわからないということのような気がします。
そこで、入手しやすくて扱いやすい、植物美容にぜひ活用したいハーブをご紹介したいと思います。
1.抗酸化作用の強いハーブ
ローズマリー(Rosmarinus officinalis)葉
精油、ロズマリン酸、タンニンなどを含みます。水溶性成分、脂溶性成分ともに利用価値が高いため、濃いめのティー、浸出油、チンキなどで用います。活力のない肌や加齢肌のケアに特におすすめです。
リンデン(Tilia europaea)花、葉
タンニン、フラボノイド、精油、多糖類を含みます。特に濃いめのティー、パウダー状にしたハーブをパック剤として使用するのがおすすめです。
パウダー状にしたものは水分を含むととろみが出るため、ほかのハーブ(パウダー)と一緒に使うことで素材がまとまりやすくなり、使用感もとてもよくなります。
柔らかい香りはリラックス効果も期待できます。保湿作用もあり、乾燥肌や荒れた肌のケアにもピッタリです。
2.保湿作用のあるハーブ
マーシュマロウ(Althaea officinalis)根、葉
多糖類を多く含みます。根はパウダー状のものが扱いやすくおすすめです。
水分を含むと強い粘りが出るので、乾燥が強く荒れた肌のケアにパック剤として使ってみてください。
葉は根ほど多糖類が多くなく、パウダーにして使うほか、濃いめのティーを収斂作用のあるローズをベースとした化粧水に合わせるなど、かゆみが出やすい肌を鎮めるローションなどに向いています(傷みやすいため、作り置きはできません)。
エルダー(Sambucus nigra)花
フラボノイド、糖類、精油を含みます。濃いめのティーを使うほか、チンキを作って手作りの化粧水などに加えるのもおすすめです。
ほんわりとした香りに気持ちもほぐされると思います。
入浴のためのバスハーブとしてもおすすめします。抗酸化作用もあります。
3.収斂作用のあるハーブ
ローズ(Rosa sp.)花
精油、タンニン、フラボノイドを含む、とても香りのよい素材です。
お肌にとても優しく、かゆみのある肌や荒れた肌をはじめ皮脂分泌が多いオイリースキンまで幅広く気軽に使えます。
ローズをベースに、より強い収斂を目的とするのであればウィッチヘーゼル(Hamamelis virginiana)をプラスしたり、肌荒れを落ち着かせたいときにはリンデンやエルダーをプラスするなど目的の幅を広くカバーできます。
また、精油成分を含むので、浸出油を作ってリップバームやトリートメントオイルのベースとして、エッセンシャルオイルとはまた違った柔らかで温かみのあるほのかな香りを楽しむのもおすすめです。
これはエッセンシャルオイルの使えないあかちゃんや皮膚が弱くて敏感なお年寄りのケアにも活用できます。消炎・抗アレルギー作用もあります。
ホーステール(Equisetum arvense)全草
ケイ素を多く含むという、植物としてはちょっと珍しい特徴があります。
お肌を引き締めて丈夫にしてくれるので、濃いめに出したティーを化粧水として使うほか、カップ1杯程度を洗面器に張ったぬるま湯に加えて、洗顔水として何度もお顔をすすぐのにもおすすめです。
香りがあまり強くないので、香りのよいハーブとブレンドしたものを使って香りの効果をプラスするのもよいでしょう。消炎・抗アレルギー作用もあります。
4.消炎・抗アレルギー作用のあるハーブ
カレンデュラ(Calendula officinalis)花
カロテノイド、トリテルペノイドを含みます。脂溶性成分をぜひとも生かしたいハーブなので、浸出油やチンキにして活用するとよいでしょう。
抗菌作用もあり、かゆみや荒れ、キズのあるお肌の治癒を促し、皮膚の細胞の修復にとてもよいハーブです。
あかちゃんからお年寄りまで幅広い対象に使えます。パック剤にしてそのまま荒れた部分のお肌に乗せてしばらくお肌を休ませたり、チンキや浸出油を作っていつでも使えるように常備しておくのも便利です。
ドライハーブを購入する際には、花びらの色が褪あせていないもの(濃い黄色のもの)にしましょう。
ジャーマンカモミール(Matricaria chamomilla)
フラボノイド、精油を含みます。かゆみのひどい肌や荒れた肌を優しく鎮めてくれます。濃い目のティーを化粧水に使うほか、入浴剤としてもとてもおすすめです。
ティーを出した後の出がらしを市販のお茶パックに入れて入浴時にお顔にゆっくり優しくパッティングすると、お風呂の蒸気も手伝ってお肌がふっくらときめが整い落ち着きます。美白作用もあります。
5.抗菌作用のあるハーブ
精油を多く含むハーブは程度の差はあるものの、全般的にこの作用が期待できます。
また、エッセンシャルオイルでは刺激が強すぎるペパーミント(Mentha piperita)や作用が強すぎるうえ入手しにくいコモンセージ(Salvia officinalis)、スパイス類などは、ハーブとして使うことで使用量を加減できるので、とても扱いやすく効果的だと思います。
不衛生になりがちなフットケアやニキビケアのための素材として使用することもできるので、植物美容のハーブリストにぜひ一緒に入れておいてください!
精油は、揮発性があるので高温の湯を用いたり、脂溶性なので油脂やアルコールに溶出させたりします。スパイスのように硬いものはある程度小さく砕いて使うと、よりその成分を引き出しやすくなります。
これまでハーブのご紹介をしてまいりましたが、植物美容はハーブに詳しいだけでは効果的な活用につながらず、
1.自分の状態に対する必要なケア(目的)
2.使用するハーブの適切な調製
3.調製に必要なハーブ以外の素材の選択など、このような要素を複合的に考えて実践することでその力を発揮するのだと思います。
植物美容に関する情報量が少ない現状ですが、広い視点とアイデアとともに植物美容の世界をぜひ深めてみてください!
初出:特定非営利活動法人日本メディカルハーブ協会会報誌『 MEDICAL HERB』第34号:2015年12月