2016.5.24

高コレステロール血症ラットにおける体重増加および酸化還元状態に対するアガベ・テキラーナの食物繊維およびジャマイカの萼を含む食物消費の効果

翻訳・コメント:加藤絹子

Effects of consuming diets containing Agave tequilana dietary fibre and jamaica calyces on body weight gain and redox status in hypercholesterolemic rats.) 2014 Apr Sáyago-Ayerdi SG1 PMID:24262526

    要旨

    フルクタンと不溶性の食物繊維(Dietary fibre、DF)を豊富に含むアガベ・テキラーナおよび食物繊維とフェノール化合物を豊富に含むジャマイカの萼(ハイビスカス サブダリファ)から得られる食物繊維が、高コレステロール血症の動物モデルを用いて新しい潜在的 な機能性原料として評価された。ウィスターラット(200-250 g)を3群(n=8)に分け、コレステロール豊富な食餌にセルロースを補充した食餌(CC、対照群)、アガベの食物繊維を補充した食餌(ADF)、アガベの食物繊維とジャマイカの萼を補充した食餌(ADF-JC) を与えた。5週間の試験食の消費後、ADF-JC 群の体重増加は、他のグループに比べて有意に低かった。

    ADFとADF-JC 群は、血漿脂質プロファイルにはまったく変化がみられなかったが、盲腸組織におけるコレステロール輸送体の濃度が減少した。いずれの治療もCC群と比較して、マロンジアルデヒドの血清レベルとタンパク質の酸化的損傷を低減することにより、酸化還元状態を改善した。

    アガベ・テキラーナからの食物繊維単体、あるいはジャマイカの萼との組み合わせは、生理活性成分としての有望な可能性を示している。

    *訳者注

    「jamaica calyces」は、「ハイビスカス サブダリファ」「ローゼル」などと一般的に呼ばれ るハイビスカスの一種のガク(単数形 calyx、複数形 calyces)を指す。調べた限りでは英語でもこの原文に出てくるような「jamaica calyces」という呼称はあまり一般的でない。ハイビスカスの花で「Jamaica」と呼ばれているものがあり、
    (参照:http://bit.ly/1SGj83q) それにもとづいて「ジャマイカ(という植物)の萼」と直訳をした。

    *コメント

    ハイビスカスといえば南国(ビーチリゾート)の花、というイメージが非常に強いですね。赤い花が印象的なハイビスカス。一般的に私たちが日本でハーブティーとして使用しているのは「ローゼル」と呼ばれているハイビスカスティー。原料になる種類のハイビスカス(学名:Hibiscus sabdariffa)は普通のハイビスカスとはちょっと違って、花びらの外側にある萼と苞が肥大化する種類です。 私たちは、ハイビスカスティーは花びらではなくこの肥大化した萼・苞を乾燥させたものを飲んでいます。色の濃い中国産、酸味の強いスーダン産、鑑賞用と合わせるとハイビスカスの同属は数えきれないほど以上あり、今回ご紹介したハイビスカスサブダリファもハイビスカスの中の一つです。美味しいハイビスカスティーはビタミンCのほか、粘液、ペクチン、アントシアニジン、抗酸化作用が豊富と知られていますが、水溶性食 物繊維が豊富なことはあまり知られていません。水溶性植物繊維は大腸内で発酵や分解され、ビフィズス菌などの善玉菌を増やす働きや、有害物質を吸着して体外へ運び働きがあります。また摂取されたビタミンCの多くは吸収されますが、吸収されなかったビタミンCは大腸まで届き、乳酸菌などの善玉菌を増やしたり、便をやわらかくする作用があります。近年の研究では高血圧とコレステロールに効果を発揮するハイビスカスの成分に注目が集まっています。

    そして、リュウゼツラン科の一種、サボテンの様な植物、アガベテキラーナ学名: Agave tequilana。ご存知、テキーラという強いお酒の原料です。またアガベシロップは天然の甘味料として近年スーパーフード愛用者に知られています。GI 値Glycemic Index 食後血糖値の上昇度を表す数値。数値が55以下のものは一般的にが低食品GI食品と定義していますが低い甘味料として過体重、2型糖尿病、肥満などの健康問題に効果的と注目されています。花茎を伸ばし始める状態の時に、その茎を切ると、樹液があふれ出てきます。樹液はなんとも甘い香りがするとのこと。また、古来よりメキシコ先住民によって食用・医療用・醸造用としても使われてきました。

    メキシコの太陽を浴び、アガベテキラーナは乾燥した大地で蜜の元になるイヌリンを蓄えます。イヌリンとは果糖がつながりあった多糖類。栄養学的には水に良く溶ける食物繊維と表現され、わたしたちが普段よく食べているタマネギ、ゴボウ、ニンニクなどの植物に含まれています。アガベテキラーナに含まれるイヌリンの量は緩やかな形で人間の体にも水溶性食物繊維を与えてくれます。ハイビスカスと同じように水溶性植物繊維が腸内細菌善玉菌のえさになって腸内環境を整え、血糖値の上昇、コレステロールの増加を抑えます。

    今回ご紹介したリポートには、あまり知られていないハイビスカスの食物繊維(水溶 性食物繊維)とアガベテキラーナの食物繊維(水溶性食物繊維)が強い抗酸化作用とコレステロールに効果を発揮したという内容でした。太陽の恵みいっぱいの二つの植物が生活習慣予防に、肥満や血糖値で悩んでいる人にも効果があるとは嬉しいことですね。

    私たちの現代の食生活には食物繊維が大きく足りないといわれています。今回のレポートからも植物繊維の力によって、動きのいい健康な腸になることが大切であると判りました。水溶性食物繊維だけでなく、不溶性食物繊維(水分や老廃物などを吸収して便のかさを増やします。腸を刺激してぜん動運動を活発化し排便を促します)も積極的に食生活へ取り入れ、健康の維持や向上に関与する生体調節機能を高めていきましょう。

    注:フルクタンには3つのタイプがあり、イヌリンは(2→1)βグリコシド結合の直鎖状フルクタンです。