アロエベラが糖尿病の血糖値を下げる
アロエベラはさまざまな気候環境の中で生育する作物です。熱帯雨林でも乾燥地帯でも栽培できるため、食材や医薬品としてよく用いられています。食品としてはさまざまな商品に使われていますので日常的に目にする機会も多いと思います。
医薬品としては、おもに傷や火傷を治療する伝統薬として世界の多くの国々で使われています。傷や火傷以外にもヘルペスや乾癬などの皮膚科系薬、歯肉炎や歯垢などの歯科、潰瘍性大腸炎や消化器疾患など多くの領域で利用されることがあるようです。ただしいずれも科学的な証拠が十分ではないようです。
これまでにアロエベラが糖尿病の血糖値を下げるという臨床試験結果がいくつかでているものの、研究結果にバラツキがあり一貫性のある結果が得られていませんでした。そのため、タイの研究グループが、これまでに公表されている論文を網羅的に検討し、アロエベラが糖尿病の血糖値を下げる効果があるのかどうかを検討したレポートを紹介いたします。
(コメント:桂川直樹)
前糖尿病と2型糖尿病における血糖コントロールにアロエベラの効果:系統的レビューとメタ分析
既に知られていること、研究の目的
アロエベラ(Aloe vera(L.)Burm.f.,ススキノキ科)は伝統民間療法として長く使われてきた。アロエベラの血糖コントロールについては、いくつかの研究がされているが、一貫性のある結果が得られていない。そこで私たちはアロエベラの前糖尿病および2型糖尿病の血糖コントロールについて、系統的レビューとメタ分析を行った。
方法
2016年1月までに発表されている論文について、言語の制限をせず、MEDLINE、CENTRAL、CINAHL、Scopus、http://clinicaltrials.gov、Web of Science、Proquest、LILACS、HerbMed、NAPRALERTとCNKIから総合的な文献検索を行った。関連する論文の検索や、専門家からの意見聴取も行った。以下の条件を満たす論文を加えた。(1)前糖尿病または2型糖尿病における血糖コントロールを評価することを目的としアロエベラのランダム化比較試験であること、(2)空腹時血漿グルコース(FPG)またはヘモグロビンA1c(HbA1c値)を報告した研究であること。治療効果は、治療群と対照群との間のFPGおよびHbA1c値の最終値の平均差で推定した。
結果と考察
470例(前糖尿病と2型糖尿病はそれぞれ235例)を含む8件の試験を含めた。前糖尿病では、アロエベラはFPGを大幅に改善(-0.22mmol/L、95%信頼区間-0.32mmol/L〜-0.12mmol/L、P<0.0001)し、HbA1c値には影響を与えなかった(-2mmol/mol、95%信頼区間-5mmol/mol〜1mmol/mol)。2型糖尿病では、アロエベラはFPGをわずかに改善(-1.17mmol/L、95%信頼区間-2.35mmol/L〜-0mmol/L、P=0.05)し、HbA1c値を有意に改善(-11mmol/mol、95%信頼区間-19mmol/mol〜2mmol/mol、P=0.01)したため、血糖コントロールを改善する可能性がある。
結論
前糖尿病と2型糖尿病における血糖コントロールの改善にアロエベラのいくつかの潜在的利益が示唆された。しかしながら各研究が不均質で入手可能なエビデンスに限界があり、標準化された調製物を使用して高品質なランダム化比較試験がアロエベラの血糖コントロール効果を定量化するために必要。
(翻訳:桂川直樹)