レスベラトロールによるアルツハイマー病予防の可能性
レスベラトロールは赤ワインやチョコレートなどに含まれている抗酸化物質です。アメリカでアルツハイマー病患者を対象とした臨床試験が実施され、レスベラトロールを経口投与した群が病状の進行を遅らせる可能性があることを発表した論文です。アルツハイマー病では脳内にAβ(アミロイドベータ)タンパク質が蓄積します。この研究ではレスベラトロールの摂取によってアミロイドベータタンパク質が血液脳関門を通過して、体内の別の場所(髄液)に逃して減少したとの仮説を示したものです。
(コメント:桂川直樹)
アルツハイマー病におけるレスベラトロールの無作為プラセボ比較二重盲検臨床試験
目的
軽度から中等度のアルツハイマー病の患者を対象とした52週間のレスベラトロール第2相試験(無作為化、プラセボ対照、二重盲検)で、バイオマーカー(血漿Aβ40とAβ42、CSFAβ40、Aβ42、タウ、およびリン酸化タウ181)に対しての安全性と忍容性、およびMRIによる容積測定の結果(主要転帰)と臨床転帰(二次転帰)の測定。
方法
参加者(N=119)をプラセボ群またはレスベラトロール群に無作為にわけ、1日1回500mgの経口投与を実施しました。13週ごとに段階的に摂取量を増やし、最終的には1日2回1,000mgを投与しました。脳MRIおよび(脳脊)髄液を、ベースライン時および治療の終了後に採取しました。詳細な薬物動態試験をベースライン時、13、26、39、および52週後に一部の参加者(N=15)に実施しました。
結果と考察
レスベラトロールとその主要代謝物は、血漿およびCSF中で測定可能でした。最も一般的な有害事象は、吐き気、下痢、および体重減少でした。CSFAβ40および血漿Aβ40は、プラセボ群と比較して、レスベラトロール処理によって、とくに52週後に有意に減少しました。脳容量の減少はプラセボ群よりもレスベラトロール群で増加しました。
結論
レスベラトロールは、安全で忍容性が良好でした。レスベラトロールおよびその主要な代謝物はCNS効果を有するため、血液脳関門を通過しました。レスベラトロール処理に関連するバイオマーカーの変化を解釈するために、さらなる研究が必要です。
<エビデンスレベルの評価>この研究は、アルツハイマー病の患者が、レスベラトロールを安全で忍容性があり、バイオマーカーの軌道を変化させることを示すクラスIIの証拠を提供しました。この研究は、2つ以上の主要転帰が指定されたため、クラスIIの評価となっています。
(翻訳:桂川直樹)